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連載百合小説《とうこねくと!》冬の気配、東子さまの気配(1)

 《前回のあらすじ》
 自分自身のことをけなし合い、結果としてお互いを傷つけ合ってしまった東子さまと恵理子ちゃん。
 しかし、そのことに気づいた恵理子ちゃんが泣きながら「もうやめましょう」と東子さまに抱きつき、思いの内を吐き出します。
 東子さまもまた泣きながら思いを語り、ふたりは和解するのでした。



 みなさん、こんにちは。北郷恵理子です。

「すぅ……すぅ……」

 肌寒い朝、私の腕の中ですやすや眠っている奥さま──神波東子さまの付き人をしています。

 海辺での一件ですれ違った私たちでしたが、気持ちを伝え合って、わかり合うことが出来ました。
 そして私は、東子さまへの愛をもう一度しっかりと噛み締めたのでした。
 
 今、こうして東子さまの寝顔を見ながら、私は昨夜のことを思い出していました。

 *

「恵理子ちゃん、一緒に寝させて」

 その日の夜。東子さまは自分の枕を持って、私の寝室を訪ねてきました。
 ベッドの上で寝る前のストレッチをしていた私は、びっくりして東子さまを見つめます。
「今夜は、あなたと一緒にいたいの」
 腕に抱えた枕をギュッと抱き締め、ちょっぴり上目遣いで私を見つめてくる東子さま。
 ……その視線、可愛すぎてズルいです。

「あの……お部屋、片付いてなくて恥ずかしいんですけど……」
 私はドギマギしながらそう言います。
 床にはたたんでいない洗濯物。机の上には積みっぱなしの本やCD……。到底、東子さまに見せられるようなお部屋ではありません。穴があったら今すぐ入りたいほどです。
 
「そんなこと、気にしなくていいのよ」
 東子さまはフッと微笑むと、私の部屋に入り、ベッドの上の私に向かって歩いてきました。私の目の前まで来ると、東子さまはしゃがみ込み、私と平行に視線を合わせました。

「恵理子ちゃんのそういうところも、私には可愛く見えるんだから」

 そう言って、私に軽くキスをする東子さま。
 私は、真っ赤になった顔のまま口を開きます。

「こんなことをサラッと出来てしまう東子さまの方が……可愛いですっ」

 そう言って、東子さまに抱き着く私。
 東子さまは、ふふっと笑って口を開きます。

「悲しい自虐合戦なんかよりも、こうやって褒め合いっこしてる方が楽しいわねぇ」

 心から楽しむように、東子さまの声は弾んでいました。持っていた枕を置いて私の背中にギュッと腕を回し、東子さまはうふふとずっと笑っていました。
 
 そんな東子さまを抱き締めながら、私も今この瞬間を心から楽しんでいました。そして、えへへと笑みがこぼれて止まりませんでした。

 そうです。
 自らをけなし合っていても、いいことなんてひとつもないんです。
 ましてや、それが愛する者同士であれば、なおさら。

 いいところは、「いい」と言い合う。
 可愛いなら、「可愛い」と言い合う。
 
 プラスを増やしていこう。
 いいところは声に出して伝えていこう。
 思ってるだけじゃもったいない。
 声にすることで、プラスは形になる。

 愛する者同士なら、そのプラスはさらにかけ算になる。
 もっと、もっと、もっと──

「東子さま……」

 もっと、あなたのことが好きになっていく。
 あなたの愛の海に抱かれ、私は眠りにつきました。




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