見出し画像

連載小説《魔法少女えりっこ×りょっこ》第3話:少女達の決意と恐怖心(5)

 《前回のあらすじ》
 夜の見回りを始めた恵璃子達。
 目の前を歩く塔子に、ノワールと戦う事への恐怖心を打ち明けた恵璃子。それに続き、稜子と臨美も自らの不安を口にする。
 3人の本心を聞いた塔子は──



「あなた達が覚えた恐怖心は、自分の中で大切にしなさい。この恐怖心を越えて、あなた達は確実に強くなる。恐怖心のその先に、強大な力があるのよ。たったひとつしかないその命を大切にしながら、心も体も、少しずつ強くなりなさい。乗り越えるのよ、恐怖心を」
「……はい!」
 返事をした恵璃子達を微笑んで見つめていた塔子だったが、すぐにノワールの気配を感じ取り、険しい表情になる。
「この先の路地裏にノワールの気配がするわ。いくわよ」
「はい!」
 声を合わせて返事をする3人。恵璃子と稜子は右手をかざして剣とボウガンを出現させ、それを握り締める。臨美は両手をかざして出現させた杖を握る。
 路地裏にいたのは、今まで現れたもの──人間と同じ大きさのノワールより一回り大きなノワール3体だった。サーベルを持って路地裏をうろついている。
「さあ、気を引き締めていくわよ!」
 塔子は右手を横にかざし大鎌を出現させ、3人に気合を入れる。
「はい!」
 恵璃子は剣を握る手に力を込め、力強く返事をする。
「怖い……けどそれを乗り越える!」
 稜子は手にしたボウガンを両手で構える。
「私なら出来るっ!」
 臨美は杖をギュッと握り締める。
 剣をふるう恵璃子、引き金を引く稜子、杖から衝撃波を発して戦う臨美。それぞれまだ恐怖心はあるが、その戦い方には迷いがなかった。それを見た塔子は、大鎌を振りながら微笑むのであった。

 巡回を終え、校門の前で合流する7人。恵璃子達は変身を解いている。
「そっちはどうだった?」
 靖広に尋ねる塔子。
「はい。一回り大きなノワール2体を駆除しました」
「そう……」
 そう答えた塔子の表情はどこか曇っている。
「由希と茉弥は大丈夫だった?」
 恵璃子は、別行動だったふたりに尋ねた。
「この通り大丈夫や! すり傷くらいはあるかもしれんけどな!」
「なんとなく、戦い方がわかってきた気がするんだよねー」
 由希と茉弥は楽しそうにそう話した。
「こっちも、塔子さんがいろいろ教えてくれたわ。ね? 稜子ちゃん」
「はい! 私も今回、学ぶことがありました!」
「そうね。……って靖広くん!」
 突然恵璃子に名前を呼ばれた靖広は、ビクッと身体を震わせた。
「ど、どうしたの?」
「血が……! ケガしてるよ!」
 そう言うと恵璃子はハンカチを取り出し、出血している靖広のこめかみあたりをそれで押さえた。
「あ……ありがと……」
 靖広が自分で傷口を押さえると、恵璃子はそっと手を放した。
「あーっ、靖広くん……もしかして今、顔真っ赤っかなんじゃない?」
 由希はニヤニヤしながらそう言った。
「えっ!?」
「せやな! 耳まで赤くなってたりしてな!」
 驚いた靖広に、茉弥もニヤニヤしながら付け加える。
「そっ、そんなこと……っ!」
 無理に強がろうとする靖広。その顔を覗き込み、稜子も口を開く。
「もしかして、恵璃子さんのことが……?」
「もうっ! やめてくれよ!」
 女の子のように顔を隠す靖広。街灯の下、恵璃子達は笑い合った。

 そんな中、塔子だけが険しい表情をしていた。
(一回り大きいノワールが人間界に……。しかも、ノワールの魔力もいつもより少し強かった……。『ノワールの元』の力が、少しずつ強くなってきているのかもしれない……)



所属するムトウファームのお仕事にもっと専念するため、男鹿市へ移住したい! いただいたサポートは、移住のための費用、また、ファームの運用資金にも大切にあてさせていただきます🌱💓 サポートよろしくお願いします☆