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連載小説《魔法少女えりっこ×りょっこ》第3話:少女達の決意と恐怖心(4)

 《前回のあらすじ》
 恵璃子達4人と、魔法界から降りてきた塔子達3人とで、バランス良く二手に分かれて夜の見回りが始まる。
 魔法少女になった理由を靖広に尋ねられた由希は、幼馴染である勇司を助けるためだったと答える。
 誰かを助けるための勇気を称えた靖広と茉弥だったが、ノワールの気配で3人は戦闘モードになるのだった。

 一方、恵璃子達は──




 塔子が先頭を歩き、恵璃子達3人が後ろをついていく。
「夜の学校は苦手だけど、夜の街はなんかドキドキする~!」
「あっ、それわかります! ちょっといけないことしてる感じがして!」
 稜子と臨美はふたりでキャッキャと話しながら歩く。
「ちょっとふたりとも! これは遊びじゃないんだよ!」
「恵璃子の言う通りよ。この先に、ノワールの気配を微かに感じるわ。気を引き締めなさい」
「はぁい……」
 恵璃子と塔子に注意され、しょんぼりするふたり。
「気を引き締めなさい、かぁ……」
「どうしたの? 恵璃子」
「私、魔法少女になるって決めた時、ほんとは恐かったんですよね……。気を引き締めてないと、恐怖で全神経が持って行かれそうになるくらいに。だって相手は、得体の知れない化け物ですよ? いつ殺されてもおかしくないじゃないですか……」
 歩きながら俯く恵璃子。そこへ稜子が口を開く。
「それ、私も思いました……。この攻撃を受けたら痛いんだろうなーとか、この攻撃で死んじゃったらどうしようとか……。まだケガはしてないけど、これからどうなるか……」
 同じく俯く稜子の後から、臨美も話に加わる。
「私も、魔法少女になったばっかりで、まだ何もわからなくて……。ノワールっていうこの大きな影に、怯えながら戦ってる状態です……」
「……」
 塔子は黙って3人の話を聞いていた。恵璃子はふたたび口を開く。
「たしかに憧れもあったけど、この戦いで死ぬかもしれないっていう恐怖もありました。私が魔法を使って戦う夢では、私、殺されちゃったんです。魔法少女になるっていうのは正夢になったけど、それと同時に殺されるのも正夢になるんじゃないかって……ビクビクしてるんです。こう見えても……」
「そう……それがあなた達の本音ね」
 先頭を行く塔子はフッと微笑んだ。
「そうよ。あなた達の感覚が正解。恐怖心を感じて当たり前なのよ、この戦いは」
 そう言いながら歩みを止めない塔子。
「塔子さん……塔子さんは恐くないんですか? いつか自分がこの戦いで死んじゃうんじゃないかって思ったりはしないんですか?」
 恵璃子は先を歩く塔子に尋ねた。
「そうね……魔法少女になりたての頃は恐かったわ。命がけで戦うのが恐かった。生きていたかった」
 塔子は少し上を向いて歩く。
「でもね。当たり前になっちゃったの、戦うことが。毎日毎日ノワール駆除。そんな日常に『慣れ』を感じて、何にも恐くなくなっちゃったわ」
「戦うことが、当たり前に……」
 呟くように恵璃子が言った。塔子は続ける。
「たしかに『死』は恐いものよ。恐怖心がなくなった今でも、私は必ず『死』を意識している。『死』はいつでも、私たちと隣り合わせにあるわ。いつ死んでもおかしくない。でもね、生きていたいのなら、自分がもっと強くなって、簡単にノワールを倒せるくらいになれればいいの……そんなことに気づいたわ」
 そこまで言うと塔子は立ち止まり、後ろを振り返って3人を見つめる。

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