連載百合小説《とうこねくと!》東子さまの知らない恋物語(4)
みなさん、こんにちは。北郷恵理子です。
高校時代の回想が終わり、お話は現在に戻ります。
あっ。それと、見出しの画像が変わったんですよ!
作者さんが描いてくださった私と東子さま、いかがでしょうか?
「いただきます」
夕ご飯の支度を終え、私と東子さまは手を合わせます。今日のご飯はハヤシライスです。
「そういえば恵理子ちゃん、料理してる時うわの空だったわよ」
「えっ?」
東子さまの言葉にハッとします。
東子さまと料理をしている間、高校時代の恋のお話を思い出していたなんて……昔の彼女のことを思い出していたなんて、とても言えません。
「なんか、ちょっとボーっとしてるというか。大丈夫? まだ本調子じゃない?」
どうやら東子さま、倒れた私の体調を気づかってくださっているようです。東子さまがこんなに心配してくださっているのに、私は、どこか心ここにあらずで……
「だっ、大丈夫ですよ! 元気ですから!」
私は笑顔でハヤシライスを一口パクッと食べました。
*
翌朝。東子さまは私を散歩へ誘ってくださりました。人気のない海辺。朝日が昇り、青空が見え始めています。今日もきっといいお天気になるでしょう。
「恵理子ちゃん」
隣にたたずむ東子さまは、私の名を呼びます。
「心につっかえてること、海と空に向かって叫んでしまいなさい。まだあなたは何かを抱えているでしょう?」
……やはり、東子さまはなんでもお見通しです。私は昨日の夜、ずっと南武ちゃんのことを思い出していました。
高校卒業と同時に離れ離れになり、連絡を取ることもなくなり、今はどこにいるのか、何をしているかもわからない南武ちゃん。
叶うのなら、もう一度会いたい。
あの頃のように恋人関係には戻れないけど、また一緒に語り合いたい。誰もいない教室で、たわいのないことを語り合ったように。
「また……会いたいよー!」
隣に東子さまがいるのに……
今は愛しい人がいるというのに……
りんご飴のような甘い追憶と、カラメリゼのように今を焦がす甘い記憶の狭間で、私は、昔の恋人に向かって叫んでいました。
無限の青空に響いた声は、南武ちゃんに届いたでしょうか。
あの時、屋上で見た青空のように、今見上げている青空もまた大きく広がっているのでした。
「北郷ちゃん……?」
その時です。聞きおぼえのある『彼女』の声が聞こえてきたのは。
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