連載百合小説《とうこねくと!》踊る!うさちゃん東子さま(2)
みなさん、こんにちは。北郷恵理子です。
前回のお話はこちらからどうぞ。
ショーの時間になりました。たくさんの家族連れがステージの前に集まっています。
ステージには東子さまの他にポニーテールの若い女の子がいて、子どもたちに元気よくあいさつをします。そして音楽が流れてきて、女の子とウサちゃん東子さまは元気に踊り出しました。東子さま、なかなかの躍動感です。さっきまで私にくすぐられて、笑い疲れてぐったりしていた方には見えません。
ショーが終わり、家族連れがバラバラとステージを離れていきます。私は人がはけてからステージ横の小さな控室に向かいます。
「お疲れさまです、東子さま」
控室には東子さまだけでした。ウサちゃん東子さまはパイプ椅子に腰かけてうなだれています。
「……大丈夫ですか?」
私はウサちゃん東子さまのお顔を覗きこみます。するとウサちゃん東子さまの両腕が動き、ゆっくりと頭を取ります。
「ぷはぁっ! 暑い……!」
東子さまは汗びっしょりでお顔も真っ赤っかです。髪の毛も汗で濡れています。
「お疲れさまです。お水、どうぞ」
私はさっき買ってきたミネラルウォーターのキャップを開けて、ペットボトルを持てない東子さまの口元に持っていきます。飲み口が東子さまの唇に触れ、東子さまはゴクゴクとお水を飲んでいきます。やはり喉が渇いていたようで、500mlのミネラルウォーターをもう3分の2ほど飲み干していました。
「くーっ……しみ渡るわぁ……!」
お風呂上がりにビールを飲んだ時のように、お水を飲んだ東子さまはとても気持ちよさそうです。
「さあ、風船配りに行かなきゃね」
汗だくで真っ赤なお顔の東子さまが私を見上げます。かっ、可愛い……
「もう少しお休みしなくても大丈夫ですか?」
「だーいじょうぶよ! 行きましょ!」
東子さまはニッコリと微笑んで立ち上がり、ウサちゃんの頭をかぶりました。着ぐるみの暑さと外の暑さにも負けじと頑張る東子さまはお強いです。
「じゃあ、配る風船もらってくるわね」
外に出たウサちゃん東子さまはそうおっしゃって、事務所に向かって歩いて行きます。どこかほんのり哀愁も漂う後ろ姿も可愛らしいです。屋上遊園地には星野源さんの『恋』が流れてきました。
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