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#日本酒

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日本酒はそのままの姿で日本文化を表している。日本酒のこと、日本酒と自分のこと、テイスティング関連記事をまとめてます。
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#エッセイ

丁寧な梱包を解いて、日本酒の繊細な時間と繋がり直す。

新型コロナが世界を席巻して以降、ぼくの自粛は日本酒のオンライン購入から始まりました。 それまでは、日本酒愛に溢れる居酒屋さんや酒屋さんの話を聞きながら楽しむのがぼくにとっての日本酒だったんですね。 人生で初めて日本酒をオンライン購入した際には、ちゃんとした状態で届くかなーって不安もゼロでは無かったんですが、その不安を大きく裏切るような丁寧な梱包で大事にやって来て、 その姿を見たときに、お気に入りの日本酒が届いてそれを口にできる喜びを上回るぐらい、その丁寧な心が無性に嬉し

日本酒のラベルにしてやられた!と思ったら、大切なことを教えられた。

眩しい。。こんな眩しいラベル見たことない。 スマートでオシャレな日本酒ラベルが増えてきた近年、このデザインから放たれる独特のオーラには只者ならぬ存在感がある。 冒頭写真の日本酒『此れはしたり』。日本酒の頒布会8月分の一本だ。 頒布会とは、定額の支払いに対して酒屋さんが見繕ってくれた日本酒を定期的に送ってくれるサービスのこと。現代風に言えば、日本酒のサブスクみたいなもの。 どこの蔵元さんのどんな銘柄が届くのか事前に知ることは出来ず、家に届いた梱包を開封する作業は日本酒好

多様性への接続回路~日本酒 燗酒の世界

日本酒の味わいは繊細なもので、同じ日本酒でも酒器の素材や形状、酒器に注いだ後の空気に触れる時間、合わせる食事の内容などで変化する。特に燗付け(日本酒を温めること)による味わいの変化は顕著で、お酒の味が物理的に変化するというよりは、むしろ飲む人の感じ方が大きく変わる。 鍋にお湯を沸かし、ちろりに注いだ日本酒を湯煎で温める。日本酒から立ち上る香りの変化に神経を集中させる。温度を上げながら段階的に行う利き酒での味わいの変化に感覚を研ぎ澄ます。 温めることで前面に出てくる酸味は強

日本酒の燗酒を好んで飲む理由。

日本酒の味わいは繊細なもので、酒器や温度を変えたり、酒器に注いだ後の空気に触れる時間や、保管中の瓶の中での時間経過、合わせる食事の内容によって大きく変化します。 お酒の味が物理的に変化するというよりは(そういう側面もありますが)、むしろ飲む人の感じ方が大きく変わります。 最近は、燗付け(日本酒を温めること)にハマッていて、最初に冷やした状態でワイングラスで飲んだ後、次は燗付けにしてその味わいの変化を楽しんでいます。 近年定番となった生酒や、カジュアルで飲みやすい低アルコ

日本酒コミュニティの距離感と多様性。

「さけのわ」という日本酒レビューのSNSがあり、ぼくも昨年12月頃からやっています。 飲んだ日本酒の味わいを記録して文章(メモ)と写真を投稿する、というのが基本的な使い方なんですが、 純粋に個人的な記録用として詳細数値(日本酒度や酸度等)だけをメモする人、解説文無しで写真だけをひらすら投稿する人、その日本酒の味わいから想起される過去の記憶を辿って散文調にまとめる人、など実に多様な人がいます。 「さけのわ」の中の様子は以下で詳述しますが、日本酒を飲み始めたばかりの人から長

日本酒好きにとっての記念日。

先日、日本酒好きのぼくにとって、記念すべき出来事がありました。 タイトル写真にある日本酒本を先月かな、購入したんですね。 千葉麻里絵さんという、日本酒業界の方はもちろん、日本酒愛好家ならおそらく皆んなが知っているであろう、日本酒界のカリスマのような方が書かれた本。(東京・恵比寿で「GEM by moto」という飲食店をされてます)。 結論から言ってしまうと、この本で千葉さんが紹介されていた燗付け(日本酒を温めること)の方法で燗をした結果、千葉さんご本人から燗付けのセンス

お酒の嗜好にも「家庭の味」がある。

ぼくはお酒が好きで、ぼくの中では、「豊かな人生を送ること」と「お酒を楽しむこと」の間には大きな相関関係があります。 利き酒師という日本酒関係の資格を持っていますが、何も日本酒だけが好きなわけではなく、ビールもワインもウイスキーも好きだし、焼酎も好き。 仕事でヨーロッパに駐在していた頃は、仕事終わりに近所のスーパーに寄って品揃え多彩なワインやビールを選ぶ行為そのものが楽しかったし、こだわりの酒屋さんでマスターのウンチクを聞きながら試飲させてもらったウイスキーの味わいは今でも

「日本酒選び」と書いて、キセキと読む。

いえ、これはどう読んでも「にほんしゅえらび」ですね。少し無理がありました。 でもね、日本酒ってやっぱり奇跡(キセキ)だと思うんです。 新型コロナが世界を席巻して以降、日本酒愛に溢れる居酒屋さんや酒屋さんへの外出を自粛していた関係で、 最近はもっぱらオンライン販売で日本酒を購入してます。最初は、ちゃんとした状態で届くかなーって不安もゼロでは無かったんですが、 初めてオンラインで買った日本酒が丁寧な梱包で大事にやって来たんですね。 初回は3本だけ購入したところ、酒瓶

日本酒の利き酒で味わっているもの。

ぼくは日本酒が好きで、その味わいに興味があり、最近は味覚について勉強しています。 栄養化学者である伏木亨さんの著書『人間は脳で食べている』(ちくま新書/2005年)という本を読んでいて考えさせられるところがあり、 「普段の日本酒の利き酒において、自分は具体的に何を味わっているのか?」という点について、思うところを書いていきます。 1. 日本酒の味わいとは普段日本酒を飲んでいて感じる味わいの要素というのは「旨み」「甘み」「酸味」「苦味」に大別されます。 ここに「

日本酒の注文の仕方。

日本酒の注文って、ちょっと悩ましい。 何かというと、酒屋さんや日本酒居酒屋さんで好みの日本酒の味わいを伝えるのは、結構ハードルが高いんじゃないかということ。 特にお酒の回転の良い人気の日本酒居酒屋さんとかだと、メニューがない店も数多く存在します。メニューを作成してる間に酒瓶が空になってる、なんてことが発生するからです。 そんなお店で、「一杯目、どんな感じの日本酒で行きましょ!?」っていう店長さんの質問に的確に答えるのはかなりハードルが高いと思ってます。 そんな店長さん

日本酒を好きな理由。

どうしてこんなに日本酒が好きなんだろう?って、ここ数ヶ月は特に日本酒にハマッていることから時折考えてしまいます。 こういうのって「好きなものは理由なく好き」というシンプルな世界なのでそれで十分かも知れないんですが、ここまで惹かれるのには何か背景があるんだろうという感覚もあって。 今日は、そんな日本酒を愛する理由を思いつくままに書いてみます。 1.原風景との合致ぼくは関西の、「ど」がつく田舎で生まれ育ちました。家を一歩出れば雄大な山々に囲まれた風景で、田んぼや畑、稲や果物

日本酒と味覚。「甘い」ウィスキー。

日本酒が大好きで、1杯目のビールやハイボールを除けば、この数ヶ月は気付けば日本酒ばかり飲んでます。 最近はこんな事態とあって、家にあったストックあるいはオンラインで購入した日本酒を家で飲んでました。 元々、お酒は全般的に好きで、ヨーロッパに駐在していた頃は日常的にワインとウイスキーを飲んでいたし、帰国してからは焼酎も愛していたのですが、日本酒ばかりを飲み始めると面白いもので、白ワインの酸味感がきつく、赤ワインの渋み感は強く、焼酎はアルコールがちょっと高い。。 なんていう

世界は奇跡の積み重ねで動いている。日本酒オンライン販売。

新型コロナ、という言葉を聞かない日がない。 「これまで当たり前だと思っていたことが決して当たり前ではないことに気付いた」という言葉はもう既に飽きるほど耳にしていると思いますが、 まさにそんな実感があって、最近思っていることを脈絡なしに書いていきます。 ******* 新型コロナという明らかに「平時」ではないこの事態が何を示しているのか、ぼくらの将来的な社会生活、経済活動においてこのウィルスが示しているもの、その本質は何なのか、まだうまく飲み込めないでいる。 仕事

「自分は何も分かってない」という情熱の世界がある。

社会人になって間もなく、日本酒好きの父親の影響もあり、ぼくは日本酒というお酒が好きになった。 日本酒が好きになった頃は、『真澄』『菊姫』『大七』など、とってもメジャーで、その頃住んでた近所のスーパーで簡単に手に入る「ザ・日本酒」と言える銘柄ばかり飲んでいた。 日本酒のことなんて、全然分かってなかった。 どんな酒屋さんに行けば素晴らしいお酒を求めることができて、どんなお店に行けば素晴らしい日本酒を楽しめるのか、全然分かってなかった。 ******* 「生酛」「山廃