ごはんについて書くための習作64
Google Mapsで「クラフトビール(✅ 現在営業中)」と検索しても周辺に店がない。「ビール」でもダメで、それなら「カフェ」ではどうか…と閾値を下げていく。「カフェ」で1件ヒットしたので、店の前まで行くが、看板のデザインが自分に合わなそうなので見送る。気温はわからないが日差しが強い。当てもなく、Google Mapsで検索した限りだが、当てもなく南に向かって歩き出す。蕎麦屋とカツ屋が並んでいる前を一度通り過ぎる。少し先の交差点が赤信号だったので、蕎麦屋の瓶ビールでも良いかと思い、引き返した。
午前中は木場でデザイン提案だった。会議室には10人以上いただろうか。「数年ぶりにこの人数の前で話します。」と言ったが、先月も同じような提案をしている。木場から清澄に向かう際に「木場親水公園」という細長い川沿いの広場を通ってきた。川の名前はなかったように思う。浅くて緩い流れの中にミズクラゲが沢山流れていた。汽水域なのか。ボラもいた。川沿いを遡上する方向に歩く。「園内で釣りをされる方へ」と釣り禁止のエリアが書かれた看板。何を釣るのだろう。道の下をくぐる際、遊歩道は川よりも低くなる。
蕎麦屋に入ると快活な店員に声を掛けられる。この後、会計時まで同じ調子でハキハキと喋る人なのだが、こちらの顔を全くみない。調子の高いところで単調に話続けるだけなので、快活というには違う気がする。語彙が足りない。
二人掛けのテーブルに通される。入り口から見て奥側、壁のほうに座ることを想像してメニューを向こう向きに置かれたが、人の行き来を見たくない私は手前に座った。置き直されたメニューは、ラミネートされた2枚のオススメメニューだけで、単品や飲み物のメニューは書かれていない。メニューを置き直させた申し訳なさから、他にメニューがあるか聞けず、オススメメニューの中から、ビールのつまみとなりそうなものを探す。
「とろろ」「天ぷら」「おろし」の3つの味が楽しめる蕎麦があったので、これだと思い、常連と思われる客を見送り終えた快活な定員に声を掛け注文。瓶ビールの有無を確認。生ビールもありますが?と聞かれるが、クラフトビールを諦めた私は瓶ビールがいい。
瓶ビールはエビスだった。久しぶりな気がする。ビールのあてとして、蕎麦の実を固めたジュレが出てきた。説明を受けて「なるほど」と相槌を打つ。蕎麦がくるまで少し前に買って読んでいなかったオムニバス形式の本を読む。江戸から明治を舞台にした小説の読み方が掴めず諦める。
「とろろ」「天ぷら」「おろし」の3つは蕎麦とは別だと勝手に思っていたが、それぞれが小さな蕎麦を形作っていた。蕎麦を先に食べてしまって、その3つをビールとやろうと思っていたのに誤算。自分のイメージに近づけるために、それぞれ下の蕎麦だけを先に食べ始めたが、「とろろ」だけは蕎麦としっかり絡んでしまっていたので、とろろ蕎麦として食べ切る。「天ぷら」の具は一旦、「おろし」の碗に移動させた。天ぷらが乗った「おろし」の下から蕎麦を抜き出し、食べる。
蕎麦を食べ切り、「おろし」の碗に残ったのは、蕎麦つゆに浸った天ぷらと大根おろし。「これは揚げ浸しじゃないか」という発見をツイートした。