やさしい日本語で、SmartHRの年末調整がもっと使いやすく?外国出身ユーザーの声を聞いてみました。
こんにちは。SmartHR アクセシビリティスペシャリストで、やさしい日本語プロジェクトを進めているmaihaです。
SmartHRのやさしい日本語プロジェクトでは、今年の年末調整に向けてやさしい日本語版の年末調整を準備しています。
SmartHRの年末調整機能は、ユーザーが自分の情報を入力したり、「はい」「いいえ」で回答できるアンケートに答えていくだけで、年末調整に必要な書類を作成できるものです。
年末調整のアンケートやユーザーインターフェースの文言を、簡単な日本語で表記することで、よりわかりやすく、負担の少ない年末調整を実現したいと考えています。
今回は、SmartHR ユーザー企業の アディッシュ株式会社を訪問し、外国出身の従業員と人事労務担当者、それぞれ2名の方にお話を聞くことができました。アディッシュさん、ご協力ありがとうございます。
クレメンスさんとケンさんにやさしい日本語版の年末調整の画面を見てもらう
クレメンスさん(写真左側・白系のトップスを着ている)
日本語能力試験 N1
フランスから日本に来て7年
アディッシュに入社して3年目
入社時から、日本語での問い合わせ対応を担当
SmartHRの年末調整は英語に切り替えて使っている
ケンさん(写真右側・青色のシャツを着ている)
日本語能力試験 N1
アメリカから日本に来て5年
アディッシュに入社して2年目
SmartHRの年末調整は英語に切り替えて使っている
お二人とも日本語の能力はとても高いですが、普段はSmartHRを英語に切り替えて使用されているそうです。
SmartHRのやさしい日本語は、日本語能力試験でいうとN4〜N5くらい、より低い水準での理解を目標に書き換えを行なっていますが、お二人には外国出身・日本語以外を第一言語とされている立場から、ざっくばらんに感想や意見を話してもらいました。
外国出身のお二人から見えた「わかりやすさ」と「わかりにくさ」
年末調整の通常の日本語版と、やさしい日本語版の画面を用紙に印刷したものを見ていただきました。
※使用しているUIテキストは、すべて開発中のものです。2024年の正式版とは内容が異なる場合があります。
表現や、漢字の使用によって変わる「わかりやすさ」
SmartHR: わかりにくいところはありましたか?お二人なら、通常の日本語版でも、十分理解できたかもしれません。
クレメンスさん: そうですね。通常の日本語版では、あまり聞かない言葉もありました。「かけもち」とかは聞き慣れない。隣に「ダブルワーク・副業」と書いてありましたが、周りに副業している人が多いので「副業」ならわかります。外国人だと「ダブルワーク」のほうがわかりやすいかも。
クレメンスさん: やさしい日本語版は、だいぶわかりやすいと思います。今まで、いろんなところで「やさしい日本語」を見ることがありましたが、漢字が全部ひらがなになっていたんですよね。それは外国人には、わかりやすくありません。この年末調整のやさしい日本語版では、漢字が少し使われていて、N3やN4の人にもわかる漢字になっているので、わかりやすいと思いました。
ケンさん: 漢字は、読み方がわからなくても、意味はわかるものも多いんです。ひらがなになっていると、読み方はわかるけど、元の漢字がわからなくて、意味がわからない。
SmartHR: なるほど。意味がわかることが重要なときは、漢字が使われている方が役に立ちそうですね。
間違いやすいポイントが、先に説明されているといい
クレメンスさん: 扶養家族の質問では、「扶養」は、読み方はわからないけど、わたしは日本で年末調整を3〜4回やっているので、なんとなく意味はわかります。通常の日本語版でも進められると思います。初めての人だったら難しいかもしれないですね。
ケンさん: やさしい日本語版は「あなたのお金で生活している家族はいますか?」と、わかりやすいです。でも、家族がいて「はい」を押してしまったけど、家族の収入が多くて(扶養の範囲を超えていて)本当は「いいえ」を押さなければいけない場合もあると思います。家族の収入が多い場合は「いいえ」を押すということは、ボタンを押して、ダイアログの説明を読まないとわからない。(画面内のボタンを押すと、扶養家族の条件について詳しい説明が表示される)
SmartHR: たしかに。例外的な要素は、あとの方に補足として書いてあることも多いですが、それだと最後まで読まなかったら間違えてしまいますね。ダイアログにある説明に気付かない人もいます。タイトルからわからない情報こそ、先頭に書いておく必要がありそうです。
ケンさん: 扶養家族の説明も、リスト(箇条書き)になっていましたが、リストになっていると、すごくわかりやすいです。
SmartHR: その他、年末調整以外では、どんな困りごとがありますか?
クレメンスさん: 普段いろいろな手続きをするとき、英語の情報を見るんですが、手続き書類の名前が英語に翻訳されてしまうと、逆にわからなくなってしまうことがあります。実際の書類には、日本語でタイトルが書いてありますよね。なので、英語で書いてあるとどの書類のことを言っているのかわからなくて、インターネットで日本語の名前を調べ直すことになります。
ケンさん: SmartHRから通知やメールが届くとき、全部日本語ですよね。届いてもよくわからなくて、確認しない人もいるんじゃないかと思います。日本語があまり得意じゃない人はわからないと思います。
やさしい日本語版の年末調整、点数をつけるなら?
クレメンスさん: 私は85点です。今まで見てきた「やさしい日本語」は、全部ひらがなで逆に読みにくかったりしたので、正直あまり期待していなかったんです(笑)漢字を少なくしすぎていたりとか、わかりにくい言葉もまだ残っているので満点ではないですが、結構いいと思います。
ケンさん: 私も85点ですね。今日見たやさしい日本語版は、全体的にタイトルが簡単になっていて答えやすいんですが、ミスをしてしまう可能性があると思います。ミスに影響する説明が、はじめのほうに来るように、情報の順番を替えたりするといいかもしれない。
SmartHR: ありがとうございます。最後にもし感想があればお願いします!
ケンさん: 読めるかどうか、緊張しました。(通常の日本語版の文章を見たら)N1の漢字があるな〜って。
※ やさしい日本語版では、N1〜N3の漢字には読み仮名をカッコ書きで表示しています。
クレメンスさん: やさしい日本語版は、結構よかったです。専門用語とか税金の話って外国人には難しいと思うので。やさしい日本語があれば、いろんな方に役に立つと思います。
SmartHR: 私たちも、従業員としてSmartHRを使う方に見てもらうのは初めてだったので緊張しました。よかったと言ってもらえて、安心しました。今日はありがとうございました!
人事労務担当者が感じる、社内手続きでの課題
SmartHR: 今回はご協力いただき、ありがとうございました。外国人の従業員が多く在籍されているアディッシュ株式会社で、年末調整などの手続きで困っていることなどがあれば、教えていただけますか?
藤井さん: 手続きの問い合わせについては、日本人・外国人関係なく来ていると思います。件数的にも変わらない。ただ、質問の内容は少し違うかも知れません。「源泉徴収票」に関する質問でも、日本人だと「源泉徴収票ってどうやったらもらえますか?」という質問で、外国人だと「源泉徴収票ってなんですか?」という質問がきたり。どういうものか知らなくて、言葉の理解というより、それが何かをイメージできていない場合があります。
わかりやすい言葉だけでは不十分?イメージを補完する画像や動画の活用も。
田島さん: 言語の壁というよりも、イメージできていないことに課題があると思います。何について言っているのか、イメージしやすくなるものが必要で、画像とか写真があるといいのかもしれません。
藤井さん: 国籍や言語に関係なく、興味・関心があるかによって違いがありそうです。わからないときに質問して、正しく理解しようとする人もいますし、そうでない人もいます。
田島さん: 年末調整が何なのかや、用意しなければいけない書類があることなど、外国語で説明をする動画みたいなものは、アディッシュであれば、英語がネイティブの従業員に手伝ってもらって、作ることができます。しかしながら、日本語が得意ではない方を雇用している企業様だと、そういった手間も大きいかと思います。そこでSmartHRさんが動画などをつくって提供してもらえると、どの企業にとってもメリットがあると思います。
SmartHR: 実は、手続きや制度をやさしい日本語で説明する動画の作成も、検討を進めています。SmartHRのプロダクトで手続きをするために、必要な情報が不足しているという状況を踏まえ、必要な情報を、もっとわかりやすく提供することも必要だと思っています。
田島さん: 「やさしい日本語」のような動きは、本当にありがたいなと思います。今アディッシュでは(日本語能力試験の)N1相当の日本語を理解している人を採用していますが、今後市場の人材が少なくなっていったら、今よりも外国語ネイティブの採用基準を広くしていくこともあると思います。そのときに必要な「多様な人材が働きやすい環境づくり」に役に立つと思いました。
SmartHR: 多くの企業の「多様な人材が働きやすい環境づくり」に役立てればと思っています。この度は本当にありがとうございました!
まとめ
今回は、アディッシュ株式会社を訪問して、外国出身の従業員2名と、人事労務担当者2名に、開発中のSmartHRの年末調整 やさしい日本語版について意見をいただきました。
SmartHRのやさしい日本語プロジェクトは「わかりやすいと感じてほしい人」の外国人ペルソナとして、留学生や技能実習生、特定技能外国人などでN4〜N5レベルを設定していますが、日本語の能力が高い人にも「わかりやすくなった」という評価をいただくことができました。
また、外国出身のクレメンスさんとケンさんのお話から、ひらがなが多すぎるとわかりにくい、意味を理解するためにも漢字は必要ということや、読めることよりもタスクをミスなく完了できることの重要性について改めて認識する機会になりました。
人事労務担当の田島さんと藤井さんのお話からは、具体的なイメージができていないことによるコミュニケーションの課題があることを教えていただきました。やさしい日本語のプロジェクトでも、画像や動画を活用するなど、文章の翻訳以外でのアプローチも進めていこうと思いました。
いただいたご意見を元に、2024年の年末調整をできるだけ良い状態でリリースできるように準備を進めています。アディッシュ株式会社の皆様、本当にありがとうございました。