870円で大満足できる、絶品ハンバーグとアジフライ【フジランチ @国分寺（東京都国分寺市）】
今回僕が国分寺駅で電車を降りたのは、駅の北口の路地裏にひっそりと佇む「フジランチ」という洋食屋さんでランチを食べるためだ。
僕がこのお店を知ったきっかけは、テレビ東京の『タクシー運転手さん一番うまい店に連れてって！』というグルメ番組。僕が見たとある放送回でその「フジランチ」が紹介されていたのだ。僕が観たその回はもうずいぶん前の放送回だったはずで、僕はお店を知ってからずいぶん長いことGoogleマップにピン留めし続けている。つまり以前からずっと行ってみたいと思っていたお店だ。
なぜこれほどまでに僕が長い間「フジランチ」に想い焦がれていたのかというと、番組で目にした手作りのハンバーグがとても美味しそうだったからだ。お店はとても人の良さそうな雰囲気の老夫婦が営んでおり、そのマスターが作ったハンバーグを運転手さんが子供のように頬張っているのを見て、僕も絶対いつかここに行こうと決心したのだ。
半年ほど前、ちょっとした所用があって国分寺駅を訪れた際、ついでに「フジランチ」の前まで行ってみたことがある。しかし残念ながらその日は臨時休業で、テレビで観たあのハンバーグはその姿さえも拝むことができなかった。
そして2024年の夏、数々のアスリートが大きな期待を背負って挑戦をしたパリオリンピックも閉幕したタイミングで、今度は僕が「フジランチ」への挑戦しようと国分寺駅に降り立ったわけである。
国分寺駅に着いたのは10時ごろ。想定よりもだいぶ早く着いてしまったので、まずはお店の前まで行って今日が臨時休業じゃないかどうか見に行ってみた。駅からお店までは歩いて3分ほどで着く。前回はお店の前で膝から崩れ落ちそうになった僕だが、果たして今回はどうだろうか。ドキドキしながらお店の近くのT字路を曲がると、半年前に見たそのお店が同じような佇まいでそこにいた。そして今日は臨時休業の看板は出ていない。よし、今日は食べられる。それを確信した僕は心の中でガッツポーズをし、11時の開店まで駅前をふらついて暇を潰すことにした。
国分寺駅前のベンチに座りながらGoogleマップを開き、お店の口コミを見ていたら、どうやらこのお店は行列のできる人気店で、休日は特に待つことが多いそうだということが分かった。さらに、開店時間の11時に行っても満席で入れない場合があるとのこと。これらの情報をあらかじめ入手していた僕は開店時間の15分前、10時45分ごろにお店を再び訪れてみた。
お店の前に着くと、並んでいるお客さんはいない。お店の看板もまだ「準備中」になっているし、さすがに早く来過ぎたか。まあ、15分ぐらいお店の前でスマホでもいじって待ってよう…なんて思っていたらお店の扉がガチャっと開き、中から店員のお兄さんが現れた。あれっ、まだ開店時間じゃないよな…？と思いながらその店員さんを見ていると彼がこちらに向かって
「すみません、中どうぞ」
と声をかけてきた。えっ、まだ開店時間じゃないのに入っていいの？と少し戸惑いながら、僕は店員さんに誘われるままお店の中に足を踏み入れた。そしてお店に入って僕は驚きの光景を目にする。それは、もうすでにお客さんが5〜6人席に座っていたことだ。えっ、お店もうやってたの？と思いながらきょとんとした顔をしていたであろう僕はそのままカウンター席に案内された。両隣にはどちらも常連の匂いがムンムンに香っているおじさんが座っている。僕は常連さんと常連さんの間にお邪魔させていただく形となった。
カウンターにメニューは置いておらず、目の前の厨房のホワイトボード書かれた「本日のサービスメニュー」というメニューが目に入った。お店で人気のハンバーグがお得に食べられるメニューが日替わりでサービスメニューとして提供されるようで、この日はハンバーグとアジフライのセットがなんと870円。それを見た瞬間僕はこれだ、と思いハンバーグとアジフライのセットを注文した。しかし後からやって来た常連さんたちの注文を聞いていると、みんな「フジセット」というメニューを頼んでいる。えっ、そんなメニューあるの？どこに書いてあった？そう思ったフジランチ童貞の僕はきょろときょろと店内を眺めはじめる。そして後ろを振り向いた時に、お店の壁にたくさんのメニューが書かれていたことに気づいた。なんだ、ここにメニューが書いてあったのかと思うと同時に、常連客が皆こぞって注文している「フジセット」の文字も目に入った。どうやら「フジセット」というのは、ハンバーグエッグと鳥の唐揚げがセットになったメニューらしい。「フジセット」の正体を知った僕は、こちらのメニューも魅力的だったなと思った。そして先ほどよく考えずに焦って注文してしまった自分を反省した。しかし、僕が注文したハンバーグとアジフライのセットだって十分魅力的な内容である。洋食屋さんのアジフライ、良いじゃないか。僕は注文の変更はしないと決心し、ハンバーグとアジフライが現れるのをひしひしと待つことにした。
料理を待っている間にカウンターから厨房を眺めてみる。カウンターの向こうではテレビで観たあのマスターが華麗な手捌きで複数の料理を同時に作っている。長年培ってきた経験があのマルチタスクを可能にしているのだろう。そして奥さんの方はマスターから何も言われなくとも料理の盛り付けや配膳を行っており、2人とも70歳は超えていそうにもかかわらず、その動きからは一切の迷いも感じられなかった。まさに阿吽の呼吸である。
そうして10分ぐらい待っていると、僕のもとに料理が運ばれてきた。1枚の白いプレート皿の上にテカテカのデミグラスソースがかかったハンバーグがそびえ、その背中をアジフライやナポリタン、キャベツやレタスといった野菜が支えている。童心をくすぐってくる素晴らしい見た目だ。
僕があの日テレビで観たハンバーグをようやくいただける。割り箸を割る僕の手は嬉しさで震えていた気がする。ハンバーグはすでに5つに切られており、1つ分を箸でつかんで口に運んだ。うわぁ、めっちゃ美味い。箸でつかんだ時点で想像できたが、食感がとても柔らかく優しい。マイルドでコクのあるデミグラスソースが肉の脂や旨味を綺麗に包み込み、口の中はまさに幸せいっぱいだ。フジランチのご夫婦が作る見事なハーモニーに、一口で僕は脱帽するしかなかった。またこのハンバーグはたぶん豚肉の割合が高めなのか、豚の香りを強めに感じるような気がした。それもまた、このハンバーグの個性であろう。
続いてアジフライ。870円のプレートに付いてくるアジフライにしてはサイズがかなり大きい。重量があって箸で持ち上げるのが少し大変なほどだ。食べてみるとやや粗めの衣がサックサクで、身も美味しい。なかなか食べ応えのあるアジフライだ。
そしてこのお店のウリはハンバーグやアジフライといったメイン料理だけではない。セットで付いてくるライスの量が多いのだ。並盛りで注文してもファミレスのライスの大盛りを超えるぐらいの量のライスが提供される。もちろんメインとライスの相性は最高なのだが、食べ進めていくうちにご飯の多さがちょっとだけキツくなってきた。そんなライスの洗礼に苦しむ僕に対して、常連客は小ライスで注文している人が多かった。
アジフライの下に隠れていたナポリタンも美味しい。懐かしさを感じるシンプルな味だ。あとキャベツやレタス、トマトといった野菜も多めに盛られていることも忘れてはいけない。
ライスの多さには少し苦戦させられたが、デミグラスソースがライスと本当に合うおかげもあって美味しく食べ切ることができた。次にこのお店を訪れる際は小ライスにしようと心に刻み、会計のためレジの方へと動いた。レジでは入り口で案内してくれた店員のお兄さんが会計をしてくれた。値段は、870円。どう考えても安い。あんなに美味しくてこんなにお腹いっぱいになるのに、870円で良いんですか。まったく、素晴らしいお店である。
ごちそうさまでした、とお店の方に伝えながらお店を出た。お店を出る頃には店内は満席になっており、外へ出るとお店の前では5、6人のお客さんが席が空くのを待っている。これだけ安くて多くて美味しいのなら、行列ができるというのも納得だ。
この日は国分寺でとても良いお店を知ってしまった。23区内をはじめとする都心の方も美味しいお店は多いけど、僕個人的には郊外エリア（といったら国分寺市民に怒られるかもしれないが）で良いお店を見つけたときの感動の方が大きい。
ぶっちゃけ都心は人が多くてあんまり好きではないし、僕が今都心の近くに住んでいるのは都心が好きだからというわけではなく、あくまで仕事や人付き合いに関わる利便性を考慮したうえでの現状だ。お店を出た時、都心に行かずとも郊外で十分悠々自適な生活を送れるぐらい、僕は自分の市場価値をもっと高めたいと思った。しかしすぐに、そんなことよりも今のこの満腹感をどうにかしたいという気持ちで頭がいっぱいになった。
今回行ったお店
フジランチ
●住所：東京都国分寺市本町2-13-7
●アクセス：国分寺駅から徒歩5分
●営業時間：11:00〜14:00
※10:40ぐらいに行ってもたぶん入れます
●定休日：火曜、水曜
●支払い方法：現金のみ
●駐車場：なし
頼んだメニュー
●本日のサービスメニュー ¥870
（ハンバーグ+アジフライ）