辛党を唸らせる激辛の肉汁うどん【武蔵野うどん 藤原 @北与野】
この日はうどんを食べるためだけに埼玉までやって来た。埼京線の北与野駅で降り、出発前に調べておいた「おのうどん」に15分ほど並んで美味しい讃岐うどんをいただいた。
そしてあろうことか、僕はこの足で別のうどん屋さんへ直行しようとしている。改めて言うがここは香川ではない。埼玉だ。なんの変哲もない休日に、埼玉でうどんを2連食しようとしている男がいるのだ。
僕がこのうどん2連食に踏み切ったのは、前回の記事で書いたようにお腹にまだ余裕があるからというのはもちろんなのだが、実は理由がもう一つある。僕はつい2、3週間ほど前、健康診断を受けてきた。その結果、体重が去年より2kg減っていることが分かった。ただでさえ去年は一昨年と比べて10kg以上減ったというのに、今年はさらに2kgも減っている。BMIの数値を見ると、もう少しで「やせぎみ」のゾーンに入ってしまいそうな勢いだ。つまりここで何が言いたいかと言うと、僕は少しくらい食べ過ぎてしまったとしても、体重の観点から言えば問題ないということだ（ほかの観点に関しては知らん）。
健康診断の結果という強いエビデンスを持った僕は悠々と次のうどん屋さんへ足を進めた。さっき冷たいうどんをいただいたので身体が少し涼しくなったような気がする。そしてさっきの「おのうどん」から10分ぐらい歩いて、2軒目となる「武蔵野うどん 藤原」といううどん屋さんにたどり着いた。
ネットで軽く調べた所感ではここも人気店らしく、すんなり入れないことも多いらしいとのことだったが、お店の前に行列や人だかりはできていない。じゃあ入って大丈夫だろう、とのことでお店の扉を開けると、すぐ目の前に券売機がそびえ立っていた。結構狭いスペースに券売機が置いてあるため、身体と券売機の距離はゼロ距離に近い状態だ。このお店に入ってすぐ、ここで食券を買わなければいけないことを全てのお客さんが理解するだろう。
さて、ここで何を食べるか、という話になるがこの「武蔵野うどん 藤原」は店名のとおり武蔵野うどんのお店だ。武蔵野うどんといえば歯応えのある太麺を熱々のつけ汁につけて味わう「つけ汁うどん」が有名だが、このお店も例のごとく「つけ汁うどん」が人気のようだ。しかしこのお店のつけ汁うどんは他のお店とはちょっと異なる。一般的な武蔵野うどんのつけ汁は少し甘味を感じるものが多いのに対し、この「藤原」さんのつけ汁は辛味を感じるのが特徴だ。つまりこの「藤原」さんの名物はただのつけ汁うどんではなく、「旨辛肉汁うどん」だということになる。
そうとなったら、その名物の「旨辛肉汁うどん」を頼まないわけにはいかない。券売機の一番左上にある「旨辛肉汁うどん 並」のボタンを押し、食券を発券。ついでに天ぷらメニューの中で一番人気だという150円のちくわ天も追加してみた。2軒目で天ぷらまで食べてしまっても大丈夫だ。なぜなら僕は2kg痩せた男なのだから。
食券を購入した後、店内のカウンター席に案内された。この時土曜の12時半頃だったが空いている席があり、すんなり座ることができた。事前に調べた時に見た、「外で並びました」的な口コミは一体なんだったのだろうか。席に座り、店員さんに食券をわたす。すると店員さんが、
「辛さはどうされますか？」
と僕に聞いてきた。カウンターの手元を見ると、「旨辛肉汁うどん」の辛さを説明する貼り紙が目に入った。どうやらこのお店では辛さがレベル0.1〜5の中から選択できるようだ。基本はレベル1で提供されるようで、これでもカレーの辛口よりちょっと辛いらしい。そしてレベル2は「激辛」、レベル3以降は「挑戦したい方」と書いてある。僕は基本的に辛い料理は大好きなので、ひとまず「激辛」といわれるレベル2を注文してみた。これで食べられなかったら赤っ恥である。
そのレベル2のうどんは注文してから5分ちょっとで僕のもとにやって来た。僕がそのおぼんを見て最初に目に入ったのは、ズバリ紅に染まったつけ汁だ。これはたしかに、なかなか辛そうな見た目をしている。武蔵野うどんでこんなに赤いつけ汁を出すお店には初めて出会った。2軒目だというのに、まるでこの日最初の食事であるかのようにワクワクしてくる。
さあ、いただいてみようじゃないか。まずはつけ汁につけずにうどんをそのままいただいてみる。おお、さすがのコシ。予想していたほどの固さではなかったがコシはかなりしっかり感じられる。このコシを作り出している職人さんの技術に感動だ。そしてうどんそのものに塩味が結構効いているため、つけ汁につけなくても十分美味しくいただける。せっかく激辛を注文したがこのまま汁につけずにたいらげてしまおうかとさえ思った。
そんな冗談はさておき、いよいよレベル2のつけ汁にチャレンジだ。どんな辛さが僕を待ち受けているのか、緊張の面持ちで麺をつけ汁に入れ、ゆっくりと口の中に入れた。
麺が口に入った途端、ケホッ、ケホッとむせてしまった。レベル2のつけ汁は、想像以上の辛さだった。麺を口に運ぶたび、熱々で辛味たっぷりの汁が僕の喉を刺激し、思わず咳が出る。レベル2でこの辛さなのか…！と驚かされた。
しかし、食べられないかと言われればそれは違う。僕は辛い料理が好きなのだが、どうやら喉があまり強くない。口の中では美味しくいただける料理でも、飲み込んだ途端むせてしまうことがよくある。側から見たら僕はむせているので、辛い味が苦手であるにもかかわらず、頑張って辛い料理を食べているヤツに見えているかもしれないが、まったくそんなことはない。これは強がりでもなんでもなく、僕がただの「喉が弱い辛党」というだけのことである。食べたらむせる、という時点で身体がその食べ物に対して拒否反応を示しているのは明白なのだが、僕はそれでも辛い料理が大好きなのだ。
話が逸れたので戻す。この「旨辛肉汁うどん」が美味しいかどうかについてだが、結論かなり美味い。辛いだけじゃなくてつけ汁からコクや旨みもしっかり感じられるし、先ほど述べたとおりそもそも麺が美味いのでつけ汁につけたことでその麺の美味さが倍増している。さらにつけ汁の中にたっぷりと入った豚バラは少し甘めの味付けで、辛味と良い具合に調和しているし、シャキシャキのネギの食感もとても良い。個人的にはネギ増しさせてもらいたいほどネギが美味しいと感じた。
たまにむせながらうどんを食べ進めていると、そんな僕に思わぬ情報が入ってくる。隣のカウンターでうどんを食べていた常連ぽいおじさんが、店員さんに
「ニンニクもらってもいいですか？」
と話しかけていたのだ。それを聞いた店員さんは厨房の方から小皿に乗せたニンニクを持って来て、おじさんに渡している。えっ、もしかして店員さんに頼めばニンニク持って来てもらえるのか…と思った僕は店員さんに
「すみません、僕もニンニクいいですか？」
と聞いてみた。すると店員さんは笑顔で
「はい。少々お待ちください」
と言って厨房の方へ歩いて行った。どうやらニンニクは常連限定のサービスではなさそうだ。店員さんには厨房と客席を2往復させてしまって申し訳ない。店員さんはすぐに戻って来て僕の手元にニンニクを置いてくれた。ニンニクはすでにすりおろしてあり、サービスにしてはなかなかといえる量が小皿の上に乗っている。これを半分ぐらいつけ汁に入れてうどんを食べてみたら、先ほどよりも味にパンチが増した気がした。やはりニンニクはうめえ。激クサ男になってしまうリスクを抱えてでも、このつけ汁にニンニクは入れた方が良いと僕は思った。
常連から思わぬ情報をゲットし、さらに美味しさが増したつけ汁でガンガン食べ進める。あっという間に完食してしまった。とても美味しかった。つけ汁のインパクトが強くて忘れかけていたがちくわ天もしっかり美味しかった。天ぷらって海老天やイカ天ばかりが注目されがちだけど、ちくわ天が持つポテンシャルも忘れてはならない。
うどんを食べ終わったあと水を飲んでいたら、向かいのカウンターにやって来た男性が
「辛さはレベル3で！」
と意気揚々と店員さんに言っていた。おお、あの人レベル3にチャレンジするんだ、と思って見ていたら、5秒後には
「すみません、やっぱレベル2でお願いします」
と言っていて僕は飲んでいた水を吹き出しそうになった。最初の強気な姿勢はなんだったんだよ。彼の注文は店中に響き渡っていたため、ほかのお客さんの中にも笑いを堪えきれていない人を何人か見かけた。最後に良い物見れたよ。ありがとう。
とはいえ、僕も次にこのお店を訪れたらレベル3を注文するだろう。僕は自分の身体を痛めつけるのを、やめることはできないようだ。お店を出たあとはなかなか良い満腹感。うどんの2連食は不思議と罪悪感が少ない。去年と比べて2kg減ったわけだし、うどん2連食はまたいつかやろうと思う。
今回行ったお店
武蔵野うどん 藤原
●住所：埼玉県さいたま市中央区上落合3-12-36
●アクセス：北与野駅から徒歩8分
●営業時間：11:00〜14:50（L.O. 14:20）
●定休日：日曜
●支払い方法：現金のみ
●駐車場：あり（お店の前に4台）
頼んだメニュー
●旨辛肉汁うどん 並 ¥1000
●ちくわ天 ¥150
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