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最近観た劇場公開・配信映画(2021年12月)

 今年も残すところ1週間を切りました。とはいえ大晦日までにまだ何本か映画を観る気がしますが、自分の中では恒例となっている今年のベスト10映画の記事を書きたい気持ちもあり少し早めに12月に観た映画を紹介。

ラストナイト・イン・ソーホー(劇場公開)

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 デザイナーを夢見てロンドンに上京した少女が1960年代のソーホーへのタイムリープを繰り返すサイコホラー。

 『ベイビー・ドライバー』のエドガー・ライト監督らしい印象的な音楽使い(音楽が物語のテンポを生む)、照明等の視覚演出も加わって、ジェットコーストターに乗っているかのようにテンポ良く話が進んでいく。こちらの世界とあちらの世界の境界部分の繋ぎのスムーズさが、主人公の精神的混乱状況に説得力をもたらす。

 映画の大きなテーマとしてme too的な華やかな世界の裏に広がる闇(当時のソーホーも現代も)に光を当てるというメッセージがあり、娯楽映画との両立に成功しているように思えるが、映画鑑賞後に改めて考えてみると、どうしてもこの映画のラストの展開がそのメッセージに対して邪魔しているように思え、例えば『プロミシング・ヤング・ウーマン』ほどの作り手の本気度を感じることはできなかった。

 それでも、主人公が華やかな60年代ソーホーを訪れる場面は音楽と映像も相まって最高に胸踊った。主演のトーマシン・マッケンジー、アニャ・テーラー=ジョイの二人のフレッシュな演技も素晴らしい。 

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ドント・ルック・アップ(劇場公開、Netflix配信)

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 冴えない天文学者とその生徒が地球に衝突する彗星を発見し、その危機を社会に伝えようと奔走する風刺コメディ。

 この映画が良いのは圧倒的に笑いのセンスが良いところ。当然、風刺なので、アメリカ社会について良く知っていた方がより面白いのは間違いないけど、基本的にはそれとは関係なく普通に笑える場面も満載(水とスナックに関する中将の謎の話が好き)。

 そして、笑える風刺の一方で、(トランプ以降の)アメリカや世界そのものがここでネタにされてることを笑えないような現実があることに恐ろしさも感じる。

 とはいえ、ダメ方向に感情を爆発させるディカプリオが堪能できるのはやっぱり至福だし、ジェニファー・ローレンス、メリル・ストリープ、ケイト・ブランシェット、ジョナ・ヒルらの豪華キャストが真剣にバカを演じているのが良いし。アリアナ・グランデが全く得しないほぼ本人役に出てるのも楽しいし、ティモシー・シャラメがいつもと違う役柄で登場するのもアガるし、とても景気が良い映画だった。

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  映画冒頭で作業中のジェニファー・ローレンスがWu-Tang Clanの『Ain't Nuthing ta F'Wit』を口ずさんでる場面から始まったところで、「この映画、信頼できそう!」と思った笑

マトリックス・レザレクション(劇場公開)

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 マトリックス三部作が公開されてからおよそ18年振りの続編。

 何を隠そう三部作が公開されていた頃は、「ミニシアター映画こそが映画」だとばかりに、SFやアクション映画を軽視していた若気の至りなこじらせ期にあたるので、『マトリックス』シリーズは全く観ていなかった。最新作を観るために過去作を一気見して望んだ。

 まず、前半の大きな構造的な仕掛けは、観ている側を不安にさせ、これこそ『マトリックス』らしさなのかもしれないと楽しんだ。そして、今作から登場した新キャラ達にも新しいマトリックスが始まる予感を感じて期待が高まる。

 ただ、後半の展開は、どうしても過去作ファンへのサービス的な要素が強く感じてしまい、せっかくの新キャラ達も過去作を引き立てるための存在でしか無いように思えて残念だった。『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』のようにもっと彼らの物語を観てみたかった。

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クイーン&スリム(Netflix配信)

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 マッチングアプリで知り合った黒人カップルが、ふとしたきっかけで白人警官殺害の容疑で逃亡することになるロードムービー。

 BLMムーブメントが主題の一つなのは間違いないが、BLMや人種差別問題といっても、白人は勿論、黒人同士でも考え方は異なる。それぞれの考え方の違いが、そのまま逃走中の二人の命運を握るスリルと繋がっている構成が見事。

 そして、人種差別問題や現代アメリカ社会の辛い現実を描く一方で、美しい映像と最新のヒップホップ/ソウル(エンドロールにはローリン・ヒル新曲!)を背景に会話を中心に進んでいく普遍的な恋愛の物語。このバランスがこの映画を特別なものにしているように思う(ちょっと『WAVES』(2020年)にも通じる温度感を感じる)。とても良い映画。

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パーフェクトケア(Netflix、劇場公開)

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 高齢者から資産を搾り取る悪徳後見人が主人公のサスペンスコメディ。

 主人公マーラ(ロザムンド・パイク)の行動、言動、表情がとにかく胸糞悪くて全く共感できず、モヤモヤ(ムカムカ?)しながら前半観ていたが、次第にマーラの常軌を逸した欲望への執着心を目の当たりにしているうちに、感動すら覚えるようになる。

 最終的には、マーラのキャラクターと予想外の展開に最後まで引き込まれてしまった(正直、話にツッコミどころも多いけど、そこはコメディということで)。『ゲーム・オブ・スローンズ』のティリオンことピーター・ディンクレイジもハマり役で登場。

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偶然と想像(劇場公開)

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 『ドライブ・マイ・カー』で世界から注目を浴びる濱口竜介監督による「偶然」をテーマにした短編三部作。

 ほぼ会話劇のみで話が進む。独特の棒読み調のためなのか、言葉本来の意味がスッと入ってくるように感じた。そして、それらは通常の言葉の組み合わせなのに思わずハッとさせられる言葉。特に、二話で教授の瀬川(渋川清彦)がゼミ生・奈緒(森郁月)に掛ける言葉が特に深く刺さった。

 一見、繋がりの無い三つの話は、ある話が次の話の答えになっているかのようで、またその逆にもなっているようで、絡み合っているように感じた。 もう一度繰り返して言葉を噛みしめたい作品。

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パワー・オブ・ザ・ドッグ(Netflix,劇場公開)

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 1920年代のアメリカ・モンタナ州が舞台。

 カウボーイが象徴する旧来型の「男らしさ」と現代的な価値観の衝突の話かなくらいに観てると、そんな一筋縄ではないことが明らかになっていく。牧歌的な風景とミスマッチな不穏なBGMに不安になる。

 主役のフィル(ベネディクト・カンバーバッチ)ら主要四名の複雑な人物像が繊細に描かる。言葉での説明が少なく、ラストの展開もすぐには全てを把握するのが難しいが、観終えて再び考察するとズシンと重い真実のようなものにたどり着く。とても考え抜かれた良質な映画。

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 『ラストナイト・イン・ソーホー』のトーマシン・マッケンジーがそんなに大きくない役で出てるのだけど、しっかり爪痕残してた。

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 今月は『マトリックス』過去作観て、ベスト10を決めるためにも入る可能性があるものを駆け込みで観たりして忙しかった。


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