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2021年映画マイベスト10

 今年は新作映画は大体80本くらい観ました。その中でのベスト10。今年も良作多くてかなり悩んだ。。。

【第10位】クイーン&スリム

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 BLMをテーマにしたロードムービー。といっても、メインの二人含めて道中に登場する人物の性格、仕事、家庭環境などによって、人種差別問題に対する温度や考え方も当然ながら異なる。そして、それが二人の逃亡劇の命運にも繋がっている構成が見事。

 出来事だけ見ると派手な逃走劇であり、スリリングな場面も多いけど、会話を中心に二人の関係性の変化が丁寧に描かれ、さらにスタイリッシュな映像と音楽が加わることで、全体が穏やかな空気感に包まれているというバランスが不思議。ちょっと去年公開の『WAVES』(の後半)を思い出した。

【第9位】街の上で

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 『街の上で』の魅力は、何気ない日常における異性との恋愛未満の関係描写の見事さだと思ってる(ちなみに映画では通常の恋愛も描かれている)。ライブハウスで一瞬言葉を交わした相手、自主映画に出演して欲しいと言ってきた女性監督、打ち上げで隣に座った衣装係…(あまり映画では描かれないが、実際の現実にはたくさん溢れてるそれらの感情はその時、確実に存在していて、街の記憶として残っている。そのことをとても愛しく感じた。

 ちなみに、主人公・荒川青(若葉竜也)と衣装係の城定イハ(中田青渚)が初対面からだんだん打ち解けていく過程を見せる会話のシーンの絶妙なリアリティが凄まじかった。陳腐な言い方だけど芝居と思えない感じ。

 今年の邦画の恋愛映画で言えば『花束みたいな恋をした』もベスト10に入れたいほど好きだし、色んな人と語った思い出があるのだけど、この映画の空気感が忘れられなくてこちらをランクインで!

【第8位】エターナルズ

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 「ヒーローチームもの」の醍醐味は個性的な技能を持つメンバーがそれぞれの特性を使って活躍することだと思ってる。その意味で『エターナルズ』は、誰か一人が突出して活躍するのではなく、各メンバーそれぞれに見せ場がある点が堪らなく良い。そして、各メンバーの個性を表現するために、キャスティングに人種の多様性を取り入れたことが効果的に作用している。

 7000年前から生きている人間ではないヒーロー達の物語という難題を、人間の歴史を客観的に語る(さすがに2時間半で語るには急ぎ足にならざるを得ないが)という方向で活かしたクロエ・ジャオ監督の力量を感じた。

 アメコミ映画で言えば『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』も「最低で最高!」という忘れられない作品で好きなとこもたくさんあるけど、チームモノとしては僅差でこちらを!

【第7位】パーム・スプリングス

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 これまでに色々な映画で擦られまくって来た「タイムループもの」。本作も『恋はデジャブ』を彷彿とさせる展開があるが、これまで無かったある要素が追加されることで「タイムループもの」の新しい可能性を感じさせてくれて、ワクワクした。

 ぶっとんだ設定でありながら、主役の二人のキャラクターも魅力的で、しっかりラブコメとしてグッと来る内容になっていて楽しい。それでいて、ちょっと人生についても考えさせられる。

 LAのリゾート地が舞台ということもあり、コロナ渦で観ると旅行気分をちょっとだけ満たしくれるような気持ちになった。実際には二年連続中止となっているコーチェラフェスも登場するのが嬉しい。

【第6位】最後の決闘裁判

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 中世歴史ロマン映画と見せかけて、3者それぞれの視点で同じ出来事が語られる『羅生門』方式で浮かび上がる現在進行形のフェミニズム的なメッセージ。

 人はいかに自分の都合良く物事を捉えているかということが、巧妙に描かれた各章の差異で明らかになる。それは、映画を観ている側も同様で、SNSでの感想コメントにも如実に現れている。。。

 リドリー・スコット、83歳にしてこの感覚を持ち得てるというのが凄い。

【第5位】ファーザー

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 認知症によって自分がわからなくなっていく不安や恐怖を認知症患者側の視点から描き、観る側は疑似体験する。しかも、それが映画としてのサスペンスにも繋がっているという完成度の高さ。

 人間は老いて徐々に機能を失っていくという逃れようの無い事実を突きつけられる。物忘れが多くなった親のことが当然思い浮かべるし、いつかの自分でもある。

 非常に特殊で他には代え難い映画。

【第4位】サウンド・オブ・メタル〜聞こえるということ〜

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 主人公が聴覚を失う感覚を追体験するという意味では『ファーザー』と近い部分がある。ただし、この映画では、難聴となったその先に耳が聴こえないことを機能の「喪失」として捉えるのか否かという問いがメインテーマになっている(その気づきと主人公の聴覚の追体験は繋がっている)。

 聴覚だけではなく、時間と共に何かを失っていくことをどう受け止めるか、それによって変化する自分の「居場所」について考えさせられる。

【第3位】私というパズル

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 死産を経験した女性が周囲とのすれ違いに苦しみながら、その悲しみを乗り越えようとする映画。

 取り戻しようの無い「喪失」から始まっているため、何かが解決したり、スッキリしたりすることなどはない。この映画の主人公マーサ(ヴァネッサ・カービー)はじっくりと悲しみと向き合う。通常の映画であれば、なんらかのドラマチックな展開を求めてしまいそうなところを、この映画では主人公の心情に寄り添うように丁寧に心境の変化を描いていく。とても優しい映画だった。

 冒頭の長回しの出産シーンの臨場感が凄くて、最初から惹き込まれた。

 ちなみに、取り戻せない「喪失」という意味では、日本映画『空白』も近いテーマだった。古田新太演じる被害者の父親と、この映画の主人公の夫は少し近い。

【第2位】プロミシング・ヤング・ウーマン

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 エンターテイメントとして抜群に面白く、且つフェミニズムのメッセージの鋭さが両立している無敵な作品。

 わかりやすい「悪者」だけではなく、ひょっとすると本人は自分のことを善人と思っているかもしれない人物までが、この映画の攻撃対象である(それは当然、観ているこちら側も対象範囲になる)。

 観た後に感じる後味の悪さも含めて、作り手の本気度を感じる。映画的なドラマ展開の面白さとメッセージが矛盾していないのが素晴らしい。(『ラストナイト・イン・ソーホー』はその点が残念だった)

 主演のキャリー・マリガンの演技の切れ味、劇中に流れる往年のガールズソングの使い方の巧みさ、装飾など見どころ多し。

【第一位】フリー・ガイ

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 映画の雰囲気から、軽い気持ちで観たらやられてしまった本作が一位。

 エンタメ映画として、ゲームのモブキャラに自我が芽生えたらという設定、巨悪との闘い、ラブコメ、ゲームあるある、主人公ガイ役のライアン・レイノルズのおもしろ演技など、楽しい要素は盛りだくさんなのだが、この映画は楽しいだけではなく、「自由」とは何かという問いへの一つのアンサーになっているところが素晴らしい(カフェ店員の行動が変わったさりげない場面で思わず涙が出た)。実社会に生きるモブキャラの一人である自分へのメッセージとしてとてもエンパワメントされた。

 ラブコメ映画としても、純朴なガイとギークな美女ミリー(ジョディ・カマー)の組み合わせが甘酸っぱくて良かった。ラストの結末も。

 色々ととても良く出来たエンタメ作品。

 ちなみに本来なら同率一位にしたかった『ソウルフル・ワールド』は去年の年末に観たということもあり、今回は外すことに。こちらもエンタメでありながら、人生において大事なことを伝えるネクストレベルな映画だった。

2022年も良い映画との出会いに期待。

2020年のベスト10はこちら↓




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