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好きな恋愛映画を語る Vol.10 ビフォア・ミッドナイト

 こんばんは。「好きな恋愛映画を語る」シリーズ、久々に更新します。今回は『ビフォア・ミッドナイト』について。Vol.1で取り上げた『ビフォア・サンライズ』、Vol.5で取り上げた『ビフォア・サンセット』の続編。内容的に、自作小説を書き終えてからにしたいと考えていたので、このタイミングになりました。記念すべき(?)Vol.10に相応しいかと。※ネタバレ有

Vol.10:『ビフォア・ミッドナイト』(2013年)

 リチャード・リンクレーター監督による『ビフォア〜』シリーズ。一作目『ビフォア・サンライズ』(1995年)は、旅先で偶然出会った若い男女、ジェシー(イーサン・ホーク)、セリーヌ(ジュリー・デルピー)のウイーンでの一夜を描いた物語。

 二作目『ビフォア・サンシャイン』(2004年)は、三十代前半になった主人公の二人が第一作から九年振りにパリで再会する物語が描かれていました。

 今回の三作目『ビフォア・ミッドナイト』は前作からさらに九年後、四十代に入った二人のその後が描かれます。前作の後、二人は結ばれ、双子の娘、ジェシーの元妻の息子と共にギリシャでバカンスを過ごしています。今作は、運命的、情熱的な恋愛を経て結ばれた二人が、リアルな現実の生活を過ごして、恋愛感情だけだった若い頃には見えなかったお互いの嫌な部分が耐えられなくなり、気持ちがスレ違う様子が描かれています。その意味では、Vol.8で取り上げた『ブルーバレンタイン』と同じく「倦怠期を迎えた夫婦」映画と言えるかもしれません。

 今作はシリーズの中で、唯一リアルタイムで映画館で観た作品(当時は三十代前半)ですが、当時は情熱的な恋愛の果ての現実を突きつけられた印象が大きかったように思います。しかしながら、今回、見返して観たら異なる部分により惹かれました。コインの裏表のような部分ですが。そこについては最後に触れます。

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 まず、今回も当シリーズの特徴である二人のひたすらに長い会話が存分に楽しめます。改めて、この演技とは思えない自然な会話シーンは凄い(インタビューでこれらは全て台詞でアドリブは無く、ひたすら憂鬱になるほど練習を繰り返していたと言っていました)。個人的には、ホテルまでの田舎道を話しながら歩いてる途中で山羊を見つけて「あっ、山羊だ」ってセリーヌが言うところが自然過ぎて好きです(これも台本通りと思うと凄い)。

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 今回は、これまでとは異なり現実生活に根ざしたキャリアや子育てに関する話題が多いですが、やはり二人ならではの哲学的な会話やふざけたノリが出てきて嬉しくなります。加えて今回は、二人に加えて老人から若者まで世代の異なるメンバーと食事を囲んで会話する場面あり、少し二人の世界が相対化されます。この場面は賑やかで楽しいだけでなく、愛や人生に関して示唆の多い会話が交わされます。特に、夫を亡くした老婦人が、夫に関する何気無い記憶を次第に忘れていくことを「再び夫を失うようで悲しい」と嘆く場面はグッと来ました。また、ジェシーとセリーヌの往年のコンビによる喧嘩漫才のような息の合ったやりとりも微笑ましいです。

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 二人は友人が用意したリゾートホテルで、久々に二人だけの時間を過ごし、ちょっと良いムードになるのですが、些細なことから大喧嘩に発展し、取り返しのつかない方向に進みそうになります(喧嘩中の二人の格好の哀愁が堪らない、、)。

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 ここで、ジェシーが「タイムマシーンで未来から来た男」設定で関係を修復しよう大芝居する場面、一作目の時から垣間見られるジェシーの子供っぽさと、好きな気持ちを情熱的に直球で伝えることに躊躇ない部分が出てるんだけど、この状況をどうにかできるとしたらジェシーのこの性格であり、さらには最終的にこのノリに付き合うセリーヌでもある。お互い完璧ではないし、たくさん不満もあるけど、あの日の運命的な出会いを信じた自分を信じ続けたいという二人の覚悟に感動しました。

 今回、久々に今作を観返して、運命的な恋愛をしたカップルが生活を共にして倦怠期を迎えるリアリティ以上に、それでも二人が惹かれあった当時と変わらない部分や、その過去を肯定しようと、不完全であることも呑み込んで新しい関係を気付こうと努力する人間の姿が印象に残りました。この映画は悲劇なんかでは全然なく、むしろ希望のように思います。

 ということで、この『ビフォア〜』シリーズ三部作は、三作を通して観ることで恋愛のあり方の変化を味わうことができる、とても希少な作品です。自分にとっても今後も大事な作品であり続けると思います。

 尚、九年ごとに続編が作られてきたシリーズですが、今年、2022年は前作から九年後になります。過去には四作目の制作に関する噂が出ていましたが、以下の記事によるとどうやらそれは無さそうです。個人的にはこの三部作が完璧に思えているので、それで良かったなと思ってます。

 最後に細かい話ですが、どなたかわかる方教えてください。先に述べた食事の場面で、セリーヌがみんなに向かって、「(九年前についに結ばれた際)ジェシーは既婚者で子供がいることを隠していた」というのですが、『ビフォア・サンシャイン』でジェシーはそのことをセリーヌに話している場面があるので、「あれ?」と思いました。これってどういうことかわかる方いたら教えてください。セリーヌの被害妄想?もしくは単純に忘れてる?とかなんでしょうか。


映画感想Podcastやってるので、良かったら聴いてください↓




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