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[連載小説]それまでのすべて、報われて、夜中に

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中高男子校の六年間と浪人生活ですっかり女性との距離感を見失ったボクが就職活動中に偶然出会った理想の女性、麻衣子。ことごとく打ち手をミスるカルチャー好きボンクラ男子と三蔵法師のごと…
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2021年3月の記事一覧

[連載小説]それまでのすべて、報われて、夜中に「第十八話:エターナル・サンセット」

[連載小説]それまでのすべて、報われて、夜中に「第十八話:エターナル・サンセット」

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第十八話:エターナル・サンセット
 麻衣子は東京にいる。

 そのことが麻衣子のどんな変化を意味するかわからなかったが、麻衣子に会いたい気持ちと、現状を知りたいという好奇心が抑えられなかった。そして、正々堂々と連絡する決心をした。

 最後の電話から九ヶ月経っていた。現在彼女がボクに対してどんな感情を抱いているかはわからない。公式には、「もう連絡しないで」と言う麻衣

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[連載小説]それまでのすべて、報われて、夜中に「第十九話:ジ・アザーサイド・オブ・ホープ」

[連載小説]それまでのすべて、報われて、夜中に「第十九話:ジ・アザーサイド・オブ・ホープ」

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第十九話:ジ・アザーサイド・オブ・ホープ 二月終わりの夜に人生二度目の錦糸町駅に降り立った。

 麻衣子から指定された総武本線高架下にあるロッテリアへ。

 待ち合わせ時刻の五分前に店に入った。麻衣子はまだ来ていないようだった。ホットコーヒーを注文して席で待った。待ち合わせ時刻を五分ほど過ぎてスーツ姿の麻衣子が店に入って来た。

「遅くなってごめん!」
「仕事お疲れ

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[連載小説]それまでのすべて、報われて、夜中に「第二十話:トゥルーマン・ショー」

[連載小説]それまでのすべて、報われて、夜中に「第二十話:トゥルーマン・ショー」

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第二十話: トゥルーマン・ショー 二〇〇四年春、誰もが名前を知る大手メーカーに入社した。

 入社直後に一ヶ月間の新人研修が行われた。新卒入社の同期約百五十名は自社工場がある相模原の研修施設に集められ、泊り込みで事業理解プログラムやグループワークを行う。日中のプログラム終了後は連日、宴会場や宿泊部屋のあちらこちらで飲み会が開かれた。誰もがこの研修は同期間の親睦を深め

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[連載小説]それまでのすべて、報われて、夜中に「第二十一話:ソーシャル・ネットワーク」

[連載小説]それまでのすべて、報われて、夜中に「第二十一話:ソーシャル・ネットワーク」

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第二十一話:ソーシャル・ネットワーク 入社から半年間、世の多くの新入社員と同様に、慣れない仕事と上司や先輩、同期との飲み会で忙しい日々を過ごしていた。

 錦糸町で再開した麻衣子とはあの日以降会っていない。毎朝、三島まで新幹線通いの彼女の朝は早く、帰宅時間が遅いボクとは電話するタイミングすら無かった。

 そんな中、麻衣子とのコミニケーション手段となったのは「ミクシ

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