
判断ミスは命取り
背中が痛い
ずいぶんと昔のお話です。
母親を亡くして1年ちょっとが過ぎた頃、実家の自分の部屋でくつろいでいたのだが、喉が乾いたのか、風呂に入ろうと思ったのか、とにかく台所に行ったときにばあちゃんに呼び止められた。
「たっちゃん、申し訳ないけどお父さんがずっと痛がっているから病院連れてったってくれへん?」
「へ?!」
さすが、ばあちゃん。
息子のことはいくつになっても心配だよな。
と思いつつ、オヤジの様子を見てみた。
居間でオヤジが横になって猫のように丸くなっている。
そっと覗いてみると、必死な形相でウンウンと唸っていた。
「どこが痛いんや?」
と聞くと、背中がとにかく痛いとのこと。
背中と聞いて、なんで背中が痛いんだろう?って疑問に思った。
しかしながら尋常じゃない痛がり方をするので、自分がローンで購入して間もない新車のカルディナの助手席にオヤジを乗せ、弟2人も後ろに乗せて通いなれてはいたが、久しぶりとなる市民病院に向かって走り出した。
◇◇◇
市民病院にて
自宅から市民病院までは20分ぐらい。なるべく信号にかからない道を選ぶが、いくつかには引っかかるのがもどかしかった。着いたのは夜10時頃だったと思う。
病院について、兄弟3人でオヤジを支えながら受付を済ませ、夜間受付の待合室に座って待っていた。オヤジはベンチで横になったままだ。
休日の土曜日だが、結構な人数が待合室にいた。
しばらく待っていたのだが、全然、自分たちの順番が回ってこないので不安になり、通りすがりの看護師さんに
「申し訳ないのですが、あまりにも痛がっているので先に見てもらえませんか?」
とお願いした。
看護師さんはオヤジの状態を見て、すぐに診察を始めると言ってくれたのでホッとした。
しばらく経って医者に呼ばれて、すぐに手術をしないといけないと言われて手術に同意することの確認をとられた。
もちろん手術してもらうようにお願いした。
◇◇◇
手術の終わりを待つ
手術が始まることとなり、別の場所に移動して手術の終わりを待つこととなった。家で待つばあちゃんに電話して手術が終わるまで帰らないことは伝えた。
この時に待っていた場所がぶっちゃけるとイメージが良くない。
市民病院の霊安室で1年ちょっと前の早朝に母親の亡骸と対面し、病院から運び出されるのを泣きながら見送った通路。
もし手術が失敗したら・・・
そう思うと寝るに寝れなかった。
弟たちはそうそうにベンチで横になって寝ていたけど。
でも起きて自分と一緒に心配するよりもずっと寝てた方がいいだろうから寝かせておこうと思った。
今と違ってスマホもなく、ただひたすらこの病院で過去にあったことを思い出しながらじっと待ち続けていた。
◇◇◇
手術終了
手術は3時間ほどで終わったと思う。3時だったか4時だったか。
医師に手術が無事終了したことを告げられた。
それとともに
「胃穿孔です。胃に穴が空いており、切除しました。あと3時間遅れたらかなり危険な状態でした」
と優しく、暗にもっと早く連れてくるべきという感じで言われた。
胃に穴が・・・
スーパードクターKを愛読していたから分かる。
腹膜炎を引き起こしてやばくなるやつ。
そうか、胃穿孔を起こしたのが背中側だと胃の内容物が背中にあふれて背中が痛くなるのだなと理解した。
「どこぞで草でも拾って食ったのだろう。サロンシップでも貼っておけ」などと血も涙もないことを言わなくて良かったと心から思いました。
そして症状の確認のために切除した胃を見せられた。
確かに、胃と思われるものにキレイな真珠ほどの穴が空いていた。
白くてひだひだの物体・・・
・・・ミノにそっくりだな
と不謹慎ながら思ってしまった。
弟たちは寝ていたので、切除された胃は見ていない。
これを俺だけに見さすなと少し思ったのだが、幸いにして自分もその後、焼肉屋でミノが食べられなくなるといったことにはなっていない。
ミノを食べるときはちょっと思い出すけどね。
とにかく無事に終わってホッとしました。
この経験から学んだこと
・まず尋常じゃない痛がりはすぐ医者に行ったほうがいい。
・自家用車で病院に行くのではなく、救急車を呼ぶべきときがある。
・救急車で行けば受付で待たされることはなかった。
・律儀に受付で待たない。判断はすみやかにプロに仰ぐべき。
・胃はちょっとしたことで穴が空くので要注意!
・命の悲鳴には耳を傾けよう
幸いにしてこの失敗を活かす経験には今までのところ、遭遇したことはない。
しかしながら、とりかえしのつかないことにならずに済んだということは強く心に残っているのでもし同じような状況が起きたなら、次は正しい判断をしようといつも思っている。
P.S. 今は胃の広範囲切除をしなくても済むケースが増えているみたいですね。なんにせよ早めの診察が大事ですね!
同じことが今の自分に起きたら・・・チーンだな・・・

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