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やの家の人々

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オヤジ、オフクロ、アニキとやのけんじ。 家族の思い出話を綴るエッセイです。
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デジタルタイムカプセル

デジタルタイムカプセル

過去にはFacebookやラジオの投稿としても書いたエピソードですが、今回はnoteにも書き記そうかと思います。

ある日、ちょっと入り用で、押入れから古いWindowsを引っ張り出しました。
それは父が生前に「パソコンを覚えたい」と言い出したときに、それならば使っていないものが1台あるよと貸したWindowsでした。その頃から型落ちで古かったけれど「練習用だから」と言って喜んでいたのを覚えていま

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BBA型ロボット

BBA型ロボット

かつてFacebookにも書きましたが、本日は祖母(2000年没)のお話です。

まず、祖母の人柄について。
どのような人柄かといえば、よくいってからかい上手。悪くいえば嘘つきなトンパチばあちゃんでした。

私が幼稚園の頃だったと思います。
自宅の廊下を歩いていると、祖母が自室のふすまをちょい開けして手招きしています。さながら誘拐犯のような怪しい動きですが、まあ身内なんで、疑問ももたず部屋に入りま

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見失ったエルドラド

見失ったエルドラド

先日のエピソード「そうだ、僕らはそこからやってきた」は主人公が父ですが、このエピソードにはまるでスピンオフのようなエピソードがあります。その主人公は母です。

父の手術が終わった直後、執刀医からのご説明ということで、母と兄、そして私は一室へと誘われます。父はまだ術後の処理で手術室に。つまり、「ふるさと発言」の直前のタイミングでの話になります。注)前回の「そうだ、僕らはそこからやってきた」参照。

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そうだ、僕らはそこからやってきた

そうだ、僕らはそこからやってきた

先日、「誕生日が迫ると思い出す父との電話。」と題し、ちょっぴりノスタルジックな父の話を書きましたが、やの家は基本的に「涙1:9笑い」の家族なので、note開設の初っ端としては、まちがえたかな、と思いました。

なので、また父の話でリベンジを図りたいと思います。

「誕生日が迫ると思い出す父との電話。」でもチラッと触れた、父が前立腺癌を患ったときの話。

いろいろな経緯はさておき、結局のところ、男性

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誕生日が迫ると思い出す父との電話。

誕生日が迫ると思い出す父との電話。

そのとき、私は荒んでいました。

ことごとくうまくいかない仕事のことで、人と話すことさえ疎ましく思っていました。

携帯電話がうるさく着信を知らせます。

「出たくないな」

そう思って無視することを決め込みましたが、こもるようなバイブレーションの音は、一向に止む気配がありません。

しつこいなぁ、と面倒くさくもディスプレイをのぞいてみると「実家」と表示されていました。

「親父か」

母であれば

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