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「食べる」のしんどい #12 ラーメン屋のチャーシュー丼はなんか違う

 ラーメンを食うつもりは全くなかった。しかしラーメンを食った。
 なぜか。
 朝昼と自炊したら、自分の作る飯に飽きたのである。モチベーションの問題。自分の作った飯は驚きがない。
 食にはやっぱり驚きがほしい。せっかくだから、入ったことのないラーメン屋に行こうと思った。
 行かなかった。
 遠いし、暑かったから。
 挫折した私は、恥ずかしながら、つけ麺屋に入った。

 つけ麺と白ごはんかな、と券売機の前で逡巡。何を思ったか、つけ麺とチャーシューご飯にした。
 チャーシューご飯、店によるが、チャーシュー丼というところもあるだろう。このメニュー、ラーメン屋の3大鬼門である。
 チャーシューご飯がなぜ鬼門なのか。
 思っていた味と違うからである。これは一概に店が悪いとは言えない問題である。

 チャーシューご飯に何を求めているのか。それはチャーシュー麺と白ご飯のセットを、わざわざラーメンのどんぶりから、チャーシューを食べて、ご飯茶碗を持って、白ご飯を食べるという面倒臭いムーブを行わず、簡便にチャーシューとご飯、つまり肉と米を楽しみたいからではないだろうか。私はそうである。

 だが、店はそうは思っていない。そう考えられない、というべきかもしれない。
 店からすれば、チャーシューご飯とメニュー名までつけて提供するのだから、チャーシュー麺と白ご飯の延長のようなことはできない。
 付加価値をつけないといけないからである。
 なので、ちょっとネギを乗せてみたりする。肉を炙ってみたりする。チャーシューの切れ端を砕いて、コーンビーフみたいにする。チャーシューを煮た甘辛い返しをご飯にかけてみる。
 すると、こうなる。


 

 これはもう立派なひとつのメニューである。チャーシュー麺+白ご飯の面影はもはやない。別系統の食感、味、香ばしさ。などなど。

 違う。そういうのじゃないんだよな。
 
 あくまでもチャーシューとご飯を簡便に食べたいだけの私からすると、ラーメンと言われて、全粒粉の麺、魚介系の淡麗スープ(鰹を効かせてみました!)のほぼ日本蕎麦みたいなものを食べさせられたような気分になる。
 ちなみに、ラーメン屋の3大鬼門のもうひとつは、全粒粉麺と魚介スープの組み合わせである。

 このチャーシューご飯も、これはこれとして、単品で食べたら美味しいよね、たぶん。
 まあ、ラーメン屋も良かれと思ってやったことなので、単純に齟齬があるというだけなんだよね。
 しんどい。   


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