2018.11.10 俺のハートはいまだにチャイルド

初対面の男性はまず匂いでジャッジする。
外見の評価なんてものは後からいくらでも変わる余地があるが、
こと匂いに関してはファーストインプレッションが外れるということがまずない。

匂いは理性を経由しないただ一つの感覚だときいたことがある。
つまり本能がコイツ無理、
と判断したらよっぽどの工事を施さない限り、
未来永劫オマエ無理、
ということになるのだ。

その点、彼はほんのりミルキーな香りを漂わせ、
時折眠たげな瞳をこちらに向けたかと思うと、
思わせぶりに唇をすぼめて腰をくねりと揺らし私を惑わせた。

まったく!こんなに可愛いとはな!コロクゥ!
もっと早くお前に会いに来れば良かったぜぇぇぇ!

妹Aはコロク誕生後毎週末手伝いに来ているらしく、
乳のあげ過ぎと夜泣きで疲弊した妹Bをソファに寝かせ、

「あっ…これは…そろそろくるね…くる!ウンコ砲来るよ!」

と叫ぶとダッと駆け寄っておむつ脇で待機、
そよ風よりも静かなウンコ砲の音を聞き漏らすことなく、

「よし、出た!ダイパーチェンジ!」

秒でケツを拭きおむつ交換をしていた。

ほんとはお前が産んだんじゃないのか!
なんてポテンシャルを秘めてたんだ!

同じ未婚の女性(しかも血縁者)とは到底思えない。

私はと言えば、コロクをどう扱っていいのかが全く分からず、

「コロク、キレてるキレてる~!」
「いい血管出てるよ~!仕上がってるぅ~!」
「土台が違うよ土台が~!はい、ずどーん!」

と、扱いなれないにも程がある掛け声でお茶を濁し、
そんなオバの苦労を知ってか知らずか満足げなコロクは、
数分おきに授乳→小水→脱糞→睡眠→グズり→授乳という
生命力あふれる活動で私を鼓舞し続けた。

おむつを替えたそばからウンコをするので、
妹Aは終始ワンコそばのようにコロクのおむつを替える羽目になるのだが、
嫌な顔など一つも見せず、
むしろオバとして当然でしょうと言わんばかりのやる気と熱気で私を圧倒した。

ダメだ…私はオバですらない…

結局ソファで休んでいた妹Bを無理やり起こし、
最近あったアレコレを聞かせ、
お前も大変だろうが姉ちゃんは姉ちゃんで相も変わらず大変だ、
というようなことをまくし立てて帰宅した。

なんて大人げなく、身勝手な人間だろう。
甥っ子ひとり満足に可愛がれないばかりか、
妹Bをろくに労いもせず、
ただひたすら己の存在をプレゼンし、
私を忘れないで、私をずっと見ていてと、
コロクよりもずっと子供っぽい言動をいまだに繰り返している。

母よ、見ているか。
俺のハートはいまだにチャイルドだ。
育て方を責めてるんじゃない、
育ち方が悪かっただけだ。

きっと誰に育てられてもこうなっていた。
安心してくれ。

しかし赤子というものは、
あらゆる中年俳優に顔が似ているね。
高橋克実が泣いていたかと思えば、
佐藤二朗が微笑んでいるのだから、
本当に未知で不思議な生き物だ。

コロク、今度オバちゃんが行く時までには、
頑張って佐藤浩市ぐらいには成長していてくれよな!

祝、生誕1ヶ月。

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