トレーニーの日常 【胸編1】
分厚く境界のはっきりした胸は逞しさを感じる。
普通に運動をしているだけではほとんど意識されない筋肉ではあるが、体の前面にあり、かつ大きな筋肉であることから、鍛えて大きくしたいという願望の対象になりやすい部位ではなかろうか。
今回はそんな胸の筋肉について見ていこうと思う。
胸の筋肉といえば大胸筋、という認識でほぼ間違いない。小胸筋なる筋肉もあるのだが、いかんせん大胸筋の深層にある筋肉のため触れることができないから、見える部分を鍛えるという意味で、トレーニングは大胸筋にフォーカスすることになる。
大胸筋は面積の大きな筋肉であるため、全体を満遍なく鍛えるためには部位を分割し、それぞれで鍛え分ける必要がある。部位は一般に、上部•中部•下部の3つに分けられる。はっきりとした境界があるわけではないが、多少角度を変えたりして筋繊維の走行方向と力の発揮方向を合わせることで、「上の方」とか「下の方」という形で刺激を変えていき、全体としてのボリュームを底上げしていくこととなる。
大胸筋の主な働きは上腕の水平屈曲である。つまり、真横に真っ直ぐ広げた腕を、体の前方向に水平に動かしていく動きが、大胸筋が働く動作の基本となる。目の前に立っている大きな丸太を抱きしめるようなイメージだ。
しかし、上腕の水平屈曲だけを行うという動作は日常では稀で、実際にはベンチプレスの動作に見るように、肘関節の伸展も同時に行なって物を押すような動作の方が圧倒的に多い。肘関節の伸展によって上腕三頭筋が関与するため、物を押す際、体の前に向かって押すというイメージを持っていると腕ばかり使ってしまい、大胸筋は働きにくい。どちらかと言うと、腕を内側に閉じるイメージを持ってプレス動作を行うことで肩関節の水平屈曲を強調し、より大胸筋に入りやすくすることがコツとなる。
話は少し変わるが、大胸筋は非常に形に個性が出やすい部位だと思う。
フィジーカーやボディビルダーの写真を見比べてみるとわかるが、発達度合いもさながら、形も十人十色であることが見受けられる。筋肉の形状は生まれた時にほぼ決定し、ほとんど変えようがないため、多種多様な形が現れるのだろう。とはいえ、努力次第で厚みや盛り上がり度合いなどはいくらでも変えられる部位ではあるだろうから、自分の大胸筋の形があまり美しくないと思っても、落ち込むことはないと思う。弱点があるなら徹底して克服し、見栄えの良い胸に整えていけばいいだけだ。
次回は胸のトレーニングについて書いていきたい。
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