何故石の上に、3年もいないといけないのか?
あるITの社長で以前調子に乗って刑務所に入った、タレント社長
が面白い事を言った。
寿司屋で寿司を握り、味が良ければそいつはもう独立してもいい。
何故下積みや修行なんかしないといけないのか、と。
別に人は人。これを全否定しない。
そう思う人はそうすればいいが、こういう人の思考は日本の歴史と
美学、お客様への心遣いや利他的な心を知らず、儲かれさえすれば
いいという事に起因するのではないか。
そういう者は儲けこそ美徳、という昔の高利貸しと何ら変わらん。
大昔の悪徳高利貸しは、かの様にして儲けた。
土地の権利証を担保に人に金を貸す。借りた人は期日までに返さな
ければ担保に入れた土地を取られる。これは当たり前のことだ。
しかし期日になると悪い高利貸しは、借りた人が約定日にお金を持
ってきても、居留守を使うか旅に出て家から消える。
返しにきた人は金貸しがいないので、まさかお金を玄関に置くわけ
にもいかず、仕方なく帰るしかない。
こうして悪徳高利貸しは、翌日「何故お前は期日までにお金を返さ
ないんだ!この土地は俺の物だ」。
こうして次から次に土地を取得して、財をなしたと言う。
こういう場合、供託という制度があるが、基本的に法律というの
は、知らない人を保護しないという建前から成り立つので、当時
はこうして泣かされた人多い。
金にしか寄らず、金が無くなると人間としての全てを無くす。
何百人、私はこういう人を見てきただろう。
私もそうだが、法をまともに100%守って財をなす人はいない。
しかしビジネスを行うにあたり、師を持ち勉強し、途中で反省して
まともにお金儲けをすれば、自ずと社会に還元するという思考にな
る。いや、成らねばならん、と信じる。
だから松下幸之助みたいな方が尊敬される。
人の価値は断じて死んでから決まるから、美しく生きる努力をせね
ばならんのだ。
ここに石の上にも3年、と言う師を持ち嫌な事も辛い事も、3年は
我慢しなければ社会の本質は分からない、と言う理由がある。
人間の根本や人格は、大凡15歳で決まり25歳で完成する。15歳で
何かをやりすぐ辞め、また次の事をやりすぐ辞める。
こういう子の9割は、20歳を超えても職が続かず、己を過信し勘違
いをする事が多い。
ボクシングの元世界チャンピオンの西岡利晃は「ボクシングは選手
なら30戦しないと本質が分からない」と言った。
けだし名言である。
彼は3度世界戦のチャンスをもらい、引き分けを挟み3度共、世界
タイトルを逃した。
西岡のジムの会長は「もう諦めたらどうだ」と言った。
私もそう思った。いや、誰もが彼は終わったと言った。
一度、両国国技館で、彼の世界線をリングサイドで観たが、西岡が
チャンピオンに左ストレートをぶち込み、デスマスクと言われたチ
ャンピオンが顔色を変えたシーンを観て「よし来た!」と思った。
しかし後半西岡はガス欠し、後一歩届かなかったのを見届け、よく
やった、もう終わりだ、と思った。
誰もがそう思った。
しかし西岡はアメリカに旅立ち、1人練習に励み、走り込みにより
スタミナを蓄え下半身を鍛えた。
しかし神は更に彼を突き落とした。
走り過ぎによるアキレス腱断絶・・・。
ボクサーのそれは、ただでさえブランクを作り、死刑を宣告された
も同じである。
しかし、彼は諦めず、逆に胸を張ってこう言った。
「チャンピオンになりたい、ではない。なるんです!」
西岡のジムの会長は、4度目のチャンスを彼に与えた。
そして彼は世界を獲る。
メキシカンで私の大好きなチャンピオン、ジョニー・ゴンザレスと
戦い、ワンパンチで倒し奇跡を起こす。
そしてボクシングのメッカ、ラスベガスのシーザースパレスで試合
をした、日本初の選手となる。
もし彼が1度目で世界を獲っていれば、今の彼は絶対にない。
辛口で知られるボクシング関係者も「西岡は本当にボクシングが分
かっている。解説が的確だ」と言う。
wowowエキサイトマッチで、ボクシングの解説をする今の彼の言
葉は、何十年もボクシングを指導した者さえ唸らせる。
寿司を握り、旨いだけで店を出す奴に、お客様の性格や味覚、猫舌
だとか熱いお茶が好きだ、という分析は絶対に出来ない。
そして寿司屋は水商売なので、売上の悪い時が必ず来る。
そこで「あの時師匠はこうしたな。じゃあこういう風に変えてみ
るか。ナニ、下積みのあの苦労を思い出せば大した事じゃない」。
だから何でも最低3年は、我慢という財産を得る為に石の上に座る
のではないだろうか。
ボクシングも商売も、人生も全ては辛抱から道は拓ける。
この思考のない者に良い人、良いお客、良い師友は絶対に出来ぬ。
そうではないだろうか。
子を持つ親は子供に近過ぎず、遠からず、観察してほしい。
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