連載漫画の作り方3 技術のこと3
納期のことさらにさらに
まず、ボクが週刊少年マガジンでやっていたときの週のスケデュールをお話しします。
木曜 午後~夜 原稿を渡す
金曜午後 ネーム打ち合わせ→5,6時間して→ 夜ネームアップ
土曜午後 ネームがアップしてない時は再び打ち合わせからネームアッ プ(アップしてる時は休養)
日曜 下描き
月曜 下描き、ペン入れ
火曜 アシスタント来る ペン入れ+原稿仕上げ
水曜 ペン入れ+原稿仕上げ
注目して欲しいのはネームのアップで、もしいくらか休養がとれるとしたらここしかない。週刊で17~20ページをあげようと思ったら、打ち合わせして内容決めたら5,6時間で一本しかも十分な内容のネームを作れないと休めません。当時のボクにはそんな力がなく金曜日に一回でネームのオッケーが出ることがありませんでした。そして、大概土曜の休みはなくなっていました。つまりどこでも休んでない!
のちに知人から
「せっかくマガジンで仕事やってたから言わなかったけどさ、終わって良かったよ。あの頃のお前、完全に変だったモノ」
と言われました。おかしくもなるでしょう、このスケデュールだったら。
「たまさか」ということ
これに耐えられるトレーニングをしておけば良いのでは?と思うでしょうけど、週刊に耐えられるトレーニングというのは実は週刊をこなすことにしかないのです。なんだか妙なロジックですけど、あの特異な時間を再現させるのは多分無理です。
つまり……たまさか、週刊をこなせた人は週刊をこなす力をつけることができて、週刊で生き残っていける。こなせなかった人は力をつける機会がないのでいよいよ週刊で生き残っていけない。
ここでいう「週刊をこなす力」というのは漫画を描く力ではありません。上のようなスケデュールをコントロールしていく力です。そしてその力があるかどうかはやってみなければわからない。「たまさか」というのはそういう理由からです。
忘れないで欲しいこと
ここで付言しますが、週刊連載できなければ漫画としてダメ、っていうことでは絶対にないのです。
週刊漫画雑誌の編集者はそういうふうに振る舞います。「うちの週刊誌からドロップしたら漫画家として食っていけない」くらいを担当してる漫画家に思い込ませます。大概の出版社で彼らが一番予算を使うし売り上げを上げているから、プライドがあるのです。漫画界全体もそういうヒエラルキーで成り立っちゃってます。
もちろん週刊連載漫画には優れた作品が生まれやすい土壌があります。週刊漫画連載はボリュームが大きく、人目にもつきやすいので漫画家としての良い資質が認められやすい。良い資質を認められた漫画家はさらにその資質をのばすという循環に入りやすい。こういう循環の中で優れた作品が生まれやすくなっていくのです。だからといって週刊漫画の全てが優れた内容の漫画ってわけではありません。
大事なのは
では何故ボクはここで連載漫画の作り方など語っているのか。それは
・定期的な収入があれば安定した気持ちで作品を作っていける
・定期的な発表の場があれば自分の可能性をいろいろ試せる
からです。この2点の理由から、プロでいたい人には連載をもつように勧めたいのです。そしてそのために
自分の性質にあった連載の仕方を見つけて欲しい
と思っています。「力」ではないですよ、「性質」です。
それを見定めるのも技術のうちなんですね。
ってことでいい加減技術については切り上げてこの先に行こうと思います。
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