「あなたは信頼できる」。全盲の方から会って5分でそう言われた独立型社会福祉士。
「かかりつけ社会福祉士」として関わった全盲の方との出会いの場面を書きます。
***「かかりつけ社会福祉士」とは特に明確な定義はありませんが独立型社会福祉士の実践のひとつです。単発ではなく継続した契約で、一定の業務を定期的に提供し、それに対してお支払いいただくスタイルです。「ホームソーシャルワーカー」や「顧問社会福祉士」と表現している独立型社会福祉士もいます***
※タイトルを「独立型社会福祉士」としましたが、日本社会福祉士会の「独立型社会福祉士名簿」登録者に限定した話ではなく、広く独立スタイルで活動する社会福祉士をイメージしています。
※※独立型社会福祉士名簿についてはコチラをご参照ください※※
独立型社会福祉士名簿とは | 日本社会福祉士会 (jacsw.or.jp)
社会福祉士の可能性を探求し、社会福祉士自身が元気であることを望み、世の人々の心が軽くなり、そして私の収入もアップすることを考え続けて23年、フリーの社会福祉士(2001年開業)柳田明子です。
タイトルの「独立型社会福祉士」とは私のことです。
もう亡くなられましたが、私はかつて全盲の高齢女性(以下Aさん)の「かかりつけ社会福祉士」としてご依頼をいただいていました。
ケアマネジャーさんもいましたけれど、より広いスタンスで関わる存在として、ご家族が私に「かかりつけ社会福祉士」としての契約を求められたのです。
そんな立場でAさんに初めてお目にかかった日のことです。
私はその日、お一人暮らしのAさん宅にお伺いしました。家族の同席はありません。1対1です。
Aさんは40年ほどその家で暮らしておられます。
私はインターホンをならしました。
Aさんが玄関に出てこられ、慣れた様子で私を家の中へと案内してくださいました。
うながされるままにテーブルの椅子に着席。Aさんは向かい側に座られました。
そこで改めて、
「社会福祉士の柳田明子と申します。どうぞよろしくお願いいたします。」
とご挨拶をして、少しやりとりがありました。内容は天候とか当たり障りのないことで、ラリーにして数往復、時間にして5分くらいでしょうか。
そのタイミングでAさんが、じっと私のほうを向いて、
驚くべきことに、
「あなたは信頼できる」
とおっしゃったんです。
私はびっくり仰天。
そう言っていただけるのは嬉しいですけれど、まだ会って5分程度しか経ってなくて、ほんの少ししかお話もしてないのに、どうして?
疑問に思った私は率直にAさんになぜそう思われるのかお尋ねしました。
Aさんから返ってきた答えは…
「あなたは家の中をキョロキョロ見回さないから」
…でした。
確かに私は家の中を不躾に眺めまわしたりはせずに席につき、Aさんのお顔をまっすぐ見ながらおはなしをしました。
Aさんいわく、Aさん宅を訪れる専門職や関係者の中には、興味本位に(とAさんには感じられるふるまいで)家の中をじろじろ見まわす人がいるそうで、「そんな人は信頼できない」けれど柳田はそうじゃなかったから「信頼できる」と思われたそうなのです。
なるほど…
家の中を(目の見えないAさんには分からないと思って)キョロキョロじろじろ見る人がいるんだ…
だけど…
私はさらにAさんに質問をしました。
「見えておられないのに、なぜそれが分かるのですか?」
その答えは、
「声の向きで分かる」
でした。
つまり、相手がキョロキョロしながら話をしていると、その声が首の動きに合わせていろんな方向から耳に届くけれど、相手がキョロキョロせずにまっすぐAさんのほうを向いて話をしている場合は、声の発信が固定されて聞こえるから分かるということらしいのです。
それを聴いて私は、いろんな思いが頭をよぎりました。
当たり前の(家の中をじろじろ見まわさない)行為が信頼につながることの重要性。
信頼していただけた大きな安堵。
キョロキョロする失礼な態度の専門職がいることの不信感。
今回は表れなかったけど私の中に絶対ないとは言い切れないよこしまな心持ち。
「目が見えないから分からないだろう」とキョロキョロされるAさんのくやしさ。
「目が見えない」ことに対する私の無知さ。
これから何が何でもこの信頼を裏切ることはしないという決意。
いろんなことを思いました。
この日のこの体験から、私は改めて、いつだって、相手がどんな状態であろうとも、当然に全力でお会いし、決して失礼な態度はとるまいと、当たり前のことなのですけれどそう心に誓ったのでした。
この私の体験は、例えばマニュアルとして、
□目の見えない方のご自宅を訪問した時はキョロキョロ家の中を見回さないようにしましょう
と規定するような話ではないと思います。
社会福祉士としての矜持の問題ですね。
社会福祉士の仕事は【私自身】しか使うものがないから、常に自分の人間性を試されているような、だけど、だからこそすべての人生経験が糧になり、年齢を重ねるごとに味わいが増すいぶし銀のような滋味あるところに私は魅力を感じているんだなぁと、改めて思い、Aさんのことを感謝の気持ちで思い出しながら今日の記事を書きました。
社会福祉士が独立を考える時のワンポイント5選をマガジンにしています。有料です。1本100円です。4本以上読まれるならマガジンのほうがお得です。
本日は以上です。
今日も気持ちの良い一日を!
柳田明子社会福祉士事務所〰聴く・伝える・ともに考える〰(2001年開業)
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