『和製ピンクパンサー』出版余録


 


 ◆人格いろいろ

 世の中には、私などの理解の及ばない人格の持ち主がいる。

 前作の『女子高生Y』がそれだ。Yは病的な嘘つき、虚言症である。
 今作の主人公は、窃盗癖にプラスしてクレーマーの性向を持つ。
 いずれも、社会の鼻つまみ者になりかねない。 

 ◆時代の落とし子

 Yが都会の若者だったのに対し、『和製ピンクパンサー』の主人公・粕原洋子さん(仮名)は昭和中期、徳島県の田舎に生まれた。彼女がいかにして人格形成したか、その軌跡を追ってみたものである。

 出生地・出生時期からして、私の分身と見る向きもあるだろう。確かに異物混入をはじめ、眉にケガをしたり、郵便局員に窃盗の疑いをかけられたりするのは、私の実体験に基づいている。

 しかしながら、ズロースの穴や父親の病気、兄の失踪、姉の自死などは身近にあった素材を集めて肉付けを試みた。大波・小波に揉まれた結果、私とは別人格ができあがった。
 あの時代なら、粕原さんのような人物が実在しても、不思議ではない。

 ◆思いやり

 あとがきにも記したように、小品はハッピーエンドである。
 主人公がカスハラおばさんのまま人生を終えるとすれば、あまりにも寂しすぎる。同時代を生きてきた私の、せめてもの思いやりだ。

 今の世の中、粕原さんクラスの「ちょいワル」はざらである。上手(うわて)を行く人間も、めずらしくない。それら悪党を翻弄する主人公を創造したいが、私の力に余るところである。

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