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『イジメ バスターズ』出版余録


 ◆古くて新しいテーマ

(いつか書かなければ…)
 と思っていたテーマのひとつが、イジメだった。
 子供が学齢期の時代はよくイジメに遭った。その頃は学校への対応に追われ、もちろん小説に書くことなど思いもよらなかった。

 ◆調査委の報告

 私が目を悪くしたので、妻は早くから勤めに出ていた。子供が成人になって就職し、家庭を持って、孫もできた。この境遇に至って、改めてイジメについて考えてみた。

 イジメは学校、職場、地域でますます潜行している。イジメの事案が持ち上がるたびに、調査委員会なるものが設けられ、ほぼお定まりの結論が出される。「イジメと認定されるものはなかった」などと。人間が傷つき、時には自死した場合でも、のんきなことを言っている。

 ◆例外もある

 埼玉にいた頃、仕事から帰ると、家族が大騒ぎしていた。
 電話がジャンジャン掛かってくる。出ると切られる。イヤガラセだった。
 何でも、次女が道を歩いていて、後ろから自転車に追突された。搭乗女性はケーキを持っていたため、台無しになってしまったらしい。怒った。
 とりあえず、次女から家の電話番号を聞き出したのだった。

 私が電話を取った。
「おい。いい加減にしろ!」
 怒鳴りつけた。相手は、娘に詫びさせろ、と言う。
「後ろから自転車に追突されて、なんで謝まらなければいけないんだ!」
「そんなことは、言われなくても、分かってます。だけど、この場合はお宅の娘が悪い」
 まるで話にならなかった。
「じゃあ、警察に知人がいるから、訊いてみるよ」
 と、はったりをかました。
「お母さん。警察に知ってる人がいるから、相談するんだって」
 母親が電話を替わった。
「まあ。この民主主義の世の中で、警察に手を回すなんて。どういう家庭なんでしょう」

 ◆本音と建て前

 まさか「イジメは是か非か」と問われて、イエスと答える人間はいないだろう。
 それこそ「そんなことは分かってます」と言われるに決まっている。しかし「この場合は別よ」と、どこかで思っていないだろうか。

 拙署の中で(「第4話 大奥物語」)、新人看護師のイジメも取り上げた。人権委員会にかけられ、イジメた側は謝るが「あなたにも問題があるのよ」と告げる。まったく懲りていない。社会の縮図だろう。

 恥を忍んで白状すると、私自身、少年期はイジメの被害者であり、かつ加害者だった。そのことは「第8話 荒野に生きて」で「陳述」した。

 イジメ防止のために、さまざまな努力がなされている。一向に効果が上がらないのは、働きかけが心の深奥部にまで届いていないからではないか。経験的に、そんなことを思う。

 なお、深刻なテーマにしては、タヌキやツチノコが活躍するライト・ノベルです。あとがきでは、高校時代のクラスメートだった故・大杉漣も出てきます。衒(てら)っているわけではありませんので、悪しからず。

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