特養入所は3年待ち?いつ入れるの?

 自宅で父の介護をしているけれどもう限界、病院に母が入院中だけど治療もなく寝たきりでなんかかわいそうだけど、家に連れて帰って介護はできないし…や、すでに特別養護老人ホームに申し込みしているけど、なかなか順番が回ってこない、といった早く身内の方を特別養護老人ホームに入所させたい方向けの記事になります。
 自宅で生活が困難になった高齢者向けの施設は色々あります。サービス付き高齢者向け住宅、有料老人ホーム、認知症グループホーム、介護老人保健施設などなど。
 いわゆる高齢者施設の中でも重度の要介護状態の方が比較的多く入所しているのが特別養護老人ホーム(以下特養)です。
 私はこの特養で生活相談員として、入所の受付窓口の仕事をしていたわけですが、申し込み受付の際最も多い質問がタイトルにある「いつ入れるんですか?」「何か月待ちですか?」「今すぐは入れないんですか?です。
 この、特養いつ入れるか問題について、今回の記事ではぶっちゃけどうなのかをお話したいと思います。

 まず特養の特徴です。
 現在の介護保険制度では、要介護認定を受けていて、原則その要介護度が3以上の方が入所の対象となっています。要介護3ってどんな状態かというと、人それぞれで一概には言えませんが、身体的には歩くことが難しくなってきて、移動するときは歩行器や車いすが必要、トイレは尿便意があいまいで漏らして下着を汚してしまうことが多い、また認知症の症状が出現していて、先ほどのトイレの事も含めて身の回りの事がうまくできない、といった状態です。要介護5だと、食事なども自分で食べることができず、いわゆる寝たきりの状態の方が多いです。
 まだ、身体的な衰えだけなら何とか自宅で…という方もいますが、認知症の症状が入ってくると自宅でも手に負えない方が多いです。
例えば
・冷蔵庫の中の物をあさって、気づいたらほとんどの物を勝手に食べていた。
・便を漏らしてしまったが、自分で後処理をしようとするけどうまくできず、部屋中便まみれになっていた。当然本人も便まみれ。
・一人で外に出て帰ってこれず、警察に保護された。みたいなことが頻繁に起きている。
 などなど。結構きついですよね。
 このような方は、自宅でももう限界と思い、市町村の役場やケアマネジャーさんに相談して特養のような施設を紹介されるわけです。
 ちなみに、要介護1・2の方も特例的に入所が認められる場合があります。家庭内で虐待を受けている、認知症上がひどすぎて自宅での生活が困難といった場合には、特例入所が可能となっています。
 しかし残念ながら、ほとんどの特養がこの特例入所は受け付けてくれません。なぜなら、要介護度が軽度の方が入所すると収入が少ないからです。次の話にも関連しますが、施設の料金は要介護度によって決まります。要介護1・2の方よりも、4・5の方のほうが料金が高いです。つまり軽度の方が入所するよりも、重度の方が入所した方が、施設の収入が多くなるので、無理して要介護1・2の方を入れたいとは思わないわけです。
 特養に入るためには、最低限要介護3以上は必要となると言えます。

 実際に特養を待っている人数ですが、これは市町村によって異なるとは思います。私の勤務する特養は比較的田舎で人口も少ないため、要介護3以上の方で50名程度です。大都市になると数百人はいるのでしょう。
 しかし待っている人数というのは正直なところ、そこまで大きなポイントではありません。もちろん少ない方が入りやすいのは間違いないのですが、たとえ150人待ちですと言われても、あまり気にしないでください。なぜかというと、特養に入所するうえで最も重要なポイントは「要介護度」だからです。
 特養の入所順は、申し込み順ではありません。入所順は各施設で決定しています。その順番において最も大きく左右されるのが要介護度です。要介護度が3の方よりも、5の方のほうが圧倒的に優先度が高くなります。
 私の経験上、要介護3で申し込んでいる方は4~5年待っても入れていないのに対し、要介護5の方は申し込んで1か月で入所ということがよくあります。もちろん、要介護度だけではないのですが、7割くらいは要介護度で決まると思ってもいいかもしれません。
 なので、現に申し込みされている方で、要介護3であれば、担当のケアマネジャーさんなどに聞いて、要介護度の見直し(区分変更申請)をするかどうかを検討してはいかがでしょうか。特に病院で入院している方は治療最優先で1日のほとんどをベッド上で過ごしている方が多いので、要介護度の見直しをすれば上がる可能性があります。

 最後に1点ポイントがあります。どうしても「この特養がいい!」というこだわりが無ければ、特養を複数申し込みすることは可能です。いろんな特養を申し込んで、順番が回ってきたところに入所することが可能です。
 もし、要介護3でなかなかこれ以上要介護度が上がりそうにないという方は、施設の加算料金を確認してみてください。その中で、「日常生活継続支援加算」という加算を算定している施設があれば、その特養への入所は難しいと思ってください。この加算は、簡単に言うと新規で入所した方の要介護度が4・5の方が多いと算定できる加算になります。この加算を算定している施設は、あまり要介護3の方は入れたくないというのが本音です。
 この加算を算定していない施設は、待ちの人数によっては要介護3でも入所できる可能性があります。

今回はこの辺にして、次回もこの話の続きをつづりたいと思います。

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