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本の雑誌2025年3月号~私はこれで書きました。
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「本の雑誌」を買いました。作家のシーナマコト、もとい、椎名誠が創刊や編集に関わっていたことは知っていましたが、買ったのは初めてです。もちろん、手に取ったのも読んだのも初めてです。
なんで今回に限り(たぶん、来月号を買うことはなかろう)買ったのかというと、特集が気になったからです。
特集『私はこれで書きました。』なんとなく、昭和の甘木CMを連想するタイトルですが、まあ今どきの若者は気にならないのでしょう。
小説家の執筆道具に特化した特集というのは、なかなかお目にかかれません。北方謙三氏は万年筆による手書き派だそうですが、他の作家たちはすべてパソコンを使っています。スマートフォンで書く人もいれば、ポメラを使っている人もおり、『マイクロソフトWordは小説の執筆には向いていない』という記事には大いに首肯して首を痛めそうです。テキストエディタを使っている作家さんもいます。
驚いたのは、同じテキストエディタでもマイクロソフトのヴィジュアルスタジオコード(Visual Studio Code)を使っている作家さんもいたこと。しかも「novel-writer」という拡張機能(様々な操作を自動化してくれるマクロのようなもの)まで作ってしまっているのですよ!
さすがに「プログラミングじゃないんだから」と、思いかけたのですが。
その驚きとギャップ感は、ワードで執筆している人がテキストエディタを使っている人に対して抱くものと同質のものではないか、と気づきました。うん、たぶん、そうだ。
自分と違うからといって、自分の手には負えそうもないからといって、他人様のすることにケチをつけちゃいけませんね。
特集の後半は、編集者の座談会。原稿を受け取る側の苦労話が面白い。1990年代から2000年代前半だと、まだワープロ専用機で原稿を書いている人が多くて云々などは、時代の証言、歴史の証言として貴重なものでしょう、一部の人にとっては。
さらに作家さんたちにアンケート形式で執筆環境を尋ねていますが、やはりWordを使っている人が多いですね。あまりパソコンのスペックやソフトウェアに関心やこだわりのない人が多いのかもしれません。
こだわりといえば、北方謙三氏の万年筆へのこだわり、万年筆愛は熱いですね。モンブランだパーカーだペリカンだというブランドへの愛着、使っているうちに仲良くなれるかという、あたかも生き物との付き合いのような感覚。愛用品として紹介された、太い万年筆の写真。万年筆を握るとペンだこにあたり脳の小説中枢が働きはじめるという、万年筆と脳の関係。しかも下書きなしで原稿用紙を無駄にすることもなく書き切れる。1枚だけ無駄にしたのは、お茶をこぼしたから。いや~、どれもグッとくる話です。
キーボードへのこだわりを書いた作家さんもいましたが、正直なところ、万年筆ほどのインパクトはありませんでした。いや、ぼくもキーボードは選びますし、キーボードを選ぶことは大切だと思いますけど、どうも万年筆と脳のつながりには勝てない、ような気がする。
だからといって、今から万年筆を使って手書きしたりはしませんけど。
まあせめて、『私はこれで書きました。』を読んでいる間、コーヒーやケーキをこぼさないように注意して読みましたけど。
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