あの時の少女に謝りたいけど名前も知らない
先日、中学生時代の思い出を書きました。
いい機会ですから、これまで何度か書こうとして書けなかった、中学生時代の自分のダークなダメな部分について、勇気を出して書きます。
中学3年の3学期も終わる頃、高校受験も終わり、「まあ合格するだろう」という成竹もあり、あとは卒業式を待つばかりという浮かれた時期のことです。ある美少年が廊下で友人と歓談しておりました。すると友人の視線がふと美少年の背後に流れて、何かに気づいた表情に変わったのです。
ちなみに、この「美少年」とは、何を隠そうぼくのことです。
中学生のころは美少年でした(中学生時代の知人が周囲にいないので、堂々と宣言できます)。
今では、立派に「ハンサムで上品な還暦(過ぎの)紳士」です(noteにはリアルの知人がいないので、堂々と宣言できます)。
ともかく自称・美少年が「?」と思いながら、後ろを振り返ると、下級生の女子がふたり、思いつめたような顔で立っていました。どちらも知らない女の子でした。下級生、とわかったのは、学年により女子の制服のリボンの色が違っていたからです(そういう校則だった)。1年生だったか、2年生だったかまでは覚えていませんが、確かに下級生でした。
ふたりは互いに顔を見合わせたかと思うと、ひとりがもうひとりの背中を、そっと押すような仕草をしました。すると押された女子生徒が意を決したような顔で「あの……」と言いかけたのです。
冷静に考えてみれば、その女子生徒は意中の先輩が卒業してしまう前に何か大切なことを伝えたかったのでしょう。そういう雰囲気でした。ここは静かに微笑んで、「なんだい?」とやさしく尋ねるか、あるいは黙って聞いてあげるのが、人として正しいあり方でしょう。
トコロガシカシ。
自称美少年、後にもハンサムで上品な還暦紳士と僭称する少年は、気が緩みまくっていたのでしょう。高校入試が終わって受験勉強からも開放されて、99.9%合格する見込みで、あとは卒業式と合格発表の確認だけというころですもの。気が緩んで当然といえば当たり前。しかし、こいつに関して言うなら、緩んでいたのは気持ちだけではなく頭のネジまで緩んでいた!
緩みネジの少年は、勇気を振り絞って憧れの先輩に声をかけた少女に対して、何と言ったと思いますか?
「わ、バケモノ」
このひとこと、です。
一体全体、馬鹿少年は何を考えていたのでしょうか。何のつもりだったのでしょうか。
見ず知らずの女の子に向かって、しかも明らかに何か伝えたいことがあって渾身の勇気を振り絞るようにして先輩の前に立った健気な女の子に対してですよ。
次の瞬間、彼女は「ひどい!」と泣き声で叫んで、駆け出していきました。一緒にいたもうひとりの女の子が後を追って走り去ってから、馬鹿少年は友人に向き直りました。友人は「おまえ、ひどいやつだな」とだけ言い残して去っていきました。
本当に、「ヒドイ」の一言です。まったく弁解の余地も弁明のソクラテスもありません。この一事をもって、今後二度と女の子から好意を寄せられることはないであろう、という罰を受けても当然というくらいにヒドイことでした。最低男ですな。
許してもらえるはずはないけど、彼女も立派な中年女性になって、そんな思い出などとっくに踏み潰していることだろう、と願うばかりです