日本猫島探訪―香川県・佐柳島の猫たち―
クロネコみっけでお馴染みとなった、猫島特集。今回は香川県の猫島として有名な、佐柳島を取材しました。現在島民は40人ほど。猫の数はその倍以上の100匹を超える島には、歩けば猫に当たるほど猫たちがわんさか! まだまだ若い猫たちの暮らしや、島の様子についてたっぷりお伝えします。
周囲6.6kmの猫島「佐柳島」
瀬戸内海に浮かぶ塩飽(しわく)諸島に位置する佐柳島は、香川県多度津郡にある多度津港からフェリーで約1時間で到着する島だ。美しい瀬戸内海に浮かぶ、周囲わずか6.6kmしかない島に暮らす島民はわずか40人ほど。長崎港と本浦港の2つの港があり、それぞれの港に分かれるようにして約100匹ほどの猫が暮らしている。
島に着いてまず初めに、「佐柳島猫を見守る会」の会長を務める池田さんに話を伺った。「私が面倒を見ているのは長崎地域の猫たちです。長崎だけで約50匹ほどの猫が暮らしていて、家の周りでその子たちの面倒を見ています。ここら辺は住んでいる人も少なく、空き家が多いので、猫たちはそれぞれ自分の好きな場所を見つけて空き家の中で風を凌いだり、暖を取ったりしていることがほとんどです。猫たちの寿命は平均すると4〜5年程度。佐柳島の長崎側は夏は風通しが良く涼しいのですが、冬はものすごく寒くなる地域なので、冬の寒さに耐えられない子も多いです」と話す。
池田さんは自宅の隣の土地を借りて、猫たちが遊べるような公園を自作している。そこには日向ぼっこができるように、ビニールハウスが作られていたり、まるで猫のテーマパークのような作りになっている。
現在、長崎地区では不妊去勢手術を行なっている猫は、ほとんどいない。「今の時期はお腹が大きくなっている猫も多数います。多くの場合は4〜5匹産んで、育つのはその中の1匹くらいです。そのため、猫自体は自然と淘汰されて増えていきません。ただ、今年に入って猫の会の会長が私に代わったのですが、今後は少しずつ猫の不妊去勢手術をしていく予定です」と池田さんが話す。
島唯一の宿泊施設「ネコノシマホステル」で暮らす猫たち。
続いて伺ったのが、島唯一の宿泊施設であり、カフェとしても利用することができる「ネコノシマホステル」。2017年にオープンし、夫婦2人で運営をしている店舗だ。「義父がこの島の出身だったという縁があり、大阪から夫婦で移住をしてきました。猫たちに会いにいらっしゃる方がほとんどですが、北は北海道から九州方面の方まで、全国から多くの方がいらっしゃっています。猫好きの他には、島巡り好きの方やお墓参りの方などが多いです」と話してくれたのは、村上直子さん。
「今現在、中にいる猫は、一時的に保護している猫を含めて21匹です。それ以外に、外で暮らす猫たちの面倒を最大15匹程度見ています。私たちの家が本浦地区にあるので、私ができる範囲で本浦地区の猫たちのお世話もしています」
島の猫たちの様子についても聞いてみた。「猫たちの寿命の平均は3~5年くらいです。妊娠している猫はだいたい空き家で産んでいるので、私たちの前に姿を現したときには少し育った猫たちが登場することがほとんどです。具合が悪い猫がいた場合、状況によっては病院に連れて行くこともあります。けれど、基本的には猫たちは自然と淘汰されていくので、外での生活をサポートする感じです」。
島猫たちの名物「飛び猫」を激写!
佐柳島で検索をかけると、見かける写真が堤防を飛び越える猫。今回の撮影ではこのシーンを激写すべく、島の人たちにやり方を聞いたところ「エサで惹きつけてジャンプするところを撮影するんですよ。そうしたら上手に撮れますよ」と教えてくれたのは、長崎地区の池田さん。「ただ堤防は本浦のほうにあるので、そちらで撮影するといいです」とも話してくれた。
「島の猫が増えたのは40年ほど前から。それまでは人間が食べるものにも困っていた時代でもあったので、猫たちは一家に1匹、ネズミ避けとして飼われていただけでした。けれど、食べるものにも困らなくなってきて、猫たちがどんどん増えていったことで今のように猫島になったんです」と話すのは、本浦港でチケット販売を担当している山路さん。山路さんは島で長年暮らし、猫たちの様子を見守ってきた人だという。今は皆と周りに暮らす、猫を見守っている。
島の猫たちと接する時に気をつけることは……?
島に来る人たちに守ってほしいことについて、ネコノシマホステルの村上さんに聞いてみると、「皆さんに気をつけてほしいことについては、簡単にまとめてリーフレットのようなものを作っています。道の真ん中で餌やりをするのは危険なこと、エサをあげすぎないでほしいこと、無断で私有地に入らないでほしいこと、ゴミを置いていかないでほしいことなどです。特にエサが余ったからといって、撒き散らしてから帰る人がいるのですが、それは絶対にやめてほしいですね。余ったものは、ここでも引き取れますし、本浦港でも引き取ることができます。帰る際に一言言っていただけると嬉しいです」と話す。
佐栁島への行き方は……?
佐栁島へのアクセスは、高松駅から電車、または車で1時間ほどかけて多度津港に向かうところから始まる。そこから、フェリーに乗船し、約1時間で佐柳島に到着。料金は往復で約1,500円で行くことができる。
今まで訪れた猫島の中でも、島を歩いていると一番猫たちが近寄ってくるのが佐柳島だった。佐柳島を訪れると猫たちがたくさん寄ってきてくれるので、至福のひと時を味わえるはず。
スタッフクレジット:
photo:Yu Inohara edit&text:Makoto Tozuka
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