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ふたりでみてはじめてわかること

私は何かに感動したり、すごく嬉しくて幸せな時、すぐにアウトプットせずにはいられない。

アウトプットする事で脳内が落ち着き、興奮状態から抜け出す事ができる。そして、アウトプットした言葉が私の周りで「幸せバリア」となり、嫌な事を弾き飛ばしている気さえする。感動や幸せにフォーカスする事は、一種の厄除けにさえなり得ると、私は信じている。

川内有緖さんの「目のみえない白鳥さんとアートを見にいく」を読み終えた時、すぐさま頭に浮かんだ、この本を読んでほしい人にラインを投げた。そのくらい、「この本はすげえぞ!」というアウトプットをしたかった。

アートの話というより、アートを介した人と人との関係性について考えさせられる本でした。図書館で借りたのだけど、これは一生側に置いておきたいので、買います!!

著者の川内有緒さんが“目のみえない白鳥さん”と出会ったのは、水戸芸術館に勤めるマイティーさんの紹介がきっかけだった。マイティーさんは、「白鳥さんと美術館に行くの、面白いよ!」と言う。

目のみえない人と美術館に行くって、どういう事だろう。という疑問を胸に、川内さんは白鳥さんとマイティーさんと3人で、都内の美術館へ向かう。

面白いのは、目のみえない白鳥さんがいる事で、一人で美術作品を鑑賞する時と比べものにならない位、“よく見る”事ができるということだ。

一枚の絵を見ながら、白鳥さん、川内さん、マイティーさんの3人で、あーでもないこーでもないとワイワイ話す事で、一人では気付けない事に気付くことができる。普段“見えている”はずの私たちが、いかに何にも“見ていない”かに、気付かされる。

こうして川内さん、マイティーさん、白鳥さんは、西は奈良「興福寺」、東は福島「はじまりの美術館」、新潟の「夢の家」や、なんと私の住む富山の黒部市美術館まで、まるでバンドがツアーをしているように、作品鑑賞の旅に出る。

その様子がまるで修学旅行のようで、本当に楽しそうなのだ。私も混ざりたいです!

作品について話すというのは、とてもプライベートな事だ。アートと同じく答えのない、生と死、恋や愛、差別や優生思想について話す事と繋がる。そういった、本質的な会話ができる、友情って良いなと思う。

この本の中では様々な友情が描かれている。

川内さん、マイティーさん、白鳥さんのバンドメンバーのような友情。

白鳥さんと韓国人現代美術家の、ヂョン・ヨンドゥさんとの友情。

パフォーマンス・アーティスト同士であり、かつては恋人同士だったマリーナ・アブラモヴィッチと、ウライの、約23年ぶりの再会。見つめ合ったたった数分間は、確かに友情だったと私は信じている。

そして、白鳥さんの友人であり、人生の転機となった東京都美術館の企画、「目の見えない人と観るためのワークショップ―ふたりでみてはじめてわかること」に関わったホシノマサハルさんの言葉に、私はオイオイ泣いてしまった。引用させていただきます。

「僕らはほかの誰にもなれない。それは心身を疲労してドアを閉じてしまう鬱状態のひとにも、多動症のひとにもなれない。視覚障害者にもなれない、僕らはほかの誰にもなれない。ほかのひとの気持ちになんかなれないんですよ!
なれないのに、なろうと思っている気持ちの浅はかさだけがうすーく滑っている、そういう社会なんですよ、いまの社会は。だから気持ち悪いの!
だから、俺たちは、むしろ進んで、いい加減に、わあああって言いたいんですよ。この世界で、笑いたいんですよ。」

誰かと一緒に時間を過ごす事の尊さ。話が通じる!!という居心地の良さ。そこには泣きたくなる位力強い「あなたが愛おしい」「一緒に笑っていたい」という、シンプルな幸せがある。

荒野のような人生で、そんな輝かしい幸せを感じたその一瞬一瞬を、この先も信じていきたいな、と思う。愛しさを感じた瞬間はどんどん過去になってしまうけど、その瞬間を「宝物」にして、大切にし続けるとはできるから。

こんにちは ぼくと いきましょう
一緒に笑い合いましょう

ふたりでみてはじめてわかることを見つけに、私は誰かと美術館へ行きたい。

わたしは美術館が大好きだから。

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