老衰と点滴
やまと診療所武蔵小杉の木村一貴です。
先日、やまと診療所のドクター内でオンラインで意見交換がありました。
テーマは
「老衰の患者さんに点滴を続けるか?」
■老衰について
老衰。
定義が難しいのですが、
ご高齢の方が徐々に体力が低下していき、
食事が取れなくなり衰弱していくことだと思います。
食事摂取が少なくなり栄養が取れない状態が長く続くと、
血液の中のタンパク質が少なくなります。
血液の中のタンパク質は水を血液に引き込む作用があり、
血液の中に水分を留めておけなくなります。
血管の中は脱水になり、
血液として保持されるはずの水分は
浮腫として身体に出ていきます。
胸の水やお腹の水として出ていくこともあります。
衰弱の過程ではそれで苦しくなってしまう場合もあります。
その場合には、酸素や薬で対応します。
■点滴の効能
点滴の効能については、
水分を入れる行為になります。
普通の点滴ではエネルギーはほとんど入りません。
脱水や熱中症など極度に水分が枯渇している状況では
大きな効果を発揮します。
でも、徐々に体力が低下して食事が摂れなくなった末には
ほとんど効果を発揮しません。
最初は良いのですが点滴を入れることを身体が受け付けなくなると
浮腫が増強し、痰が増えて苦しくなることもあります。
そうなった場合はご本人やご家族に
点滴を止めることを提案することがあります。
■老衰と点滴
でも、医学的にはそうでも、
最期は何もしない方がいいのか?
介護者が何もしないことに後悔しないのか?
点滴をしないことで、
最後は何の治療もしてあげられなかった。
もっと何かしてあげられることはなかったのか。
そう考えられるご家族もいらっしゃいます。
老衰の過程の中で、
栄養と水分をどう摂ってもらうのか?
は在宅診療の中でご本人とご家族と決めていく課題になります。
口から摂れるだけ摂っていくのか?
点滴はしたいのか?
鼻から管を入れたり、胃瘻から栄養を投与したいのか?
出す答えに正解はありません。
ご本人の意志や家族の想いによって答えは変わります。
私たちは、できる限りその希望に添えるように治療していきたいと思っています。
後悔が少ないように選択をしていただきたい。
その助けとなるように関わりたい。
と思いながら日々診療をしています。
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