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わんだふるぷりきゅあ!に絡めてオオカミを語る
【注意書き】
本記事には『わんだふるぷりきゅあ!』のネタバレを含みます。
【本文】
『わんだふるぷりきゅあ!(以下「わんぷり」と表記)』は動物と人間の交流がテーマで、敵がオオカミであることが途中から示唆されていた。2025年1月12日の放送でラスボスであるガオウの正体が明かされたが、オオカミではなくヒトというのは意外だった。ただ、正体がヒトだったことで、ますます「どう決着をつけるか」が気になるところではある。
オオカミが絶滅して久しい今、生態系も大きく変化しているし、人の意識も変わっているので、ニホンオオカミを復活させる、あるいは他地域からオオカミを導入するのは現実的ではない。むしろ弊害のほうが大きいと思われる。
もともとうまく共存していたはずのオオカミとヒトが対立するようになった側面には、ヒトの都合でオオカミが住む自然を切り開いた事が挙げられる。野山を切り開いて牧畜などを始めたところ、オオカミが家畜を襲うようになり、オオカミが害獣化してしまったわけだ。
それ以前は田畑を荒らすイノシシやシカを適度に狩ってくれる益獣とされ、秩父の三峯神社を中心にオオカミ信仰が盛んだったりする。このあたりは小倉美惠子氏の『オオカミの護符』に詳しく書かれている。『めぐりジャパン』のシリーズ記事も合わせて参照してほしい。
わんぷりに無理やり関連させて、オオカミに関連する本を一冊紹介しよう。熊谷達也『漂泊の牙』(集英社文庫)である。
東北で、未知の動物に人が殺される事件が発生。現場には絶滅したはずのニホンオオカミの足跡があった。この事件で妻を失った動物学者の城島が、執念で真相を追う。
全体に推理小説的な要素が強いが、動物小説としてもしっかりしている。作中では既存の犬種を使ってオオカミを復活させようという試みが描かれるが、「犯人」は飼い主だけを受け入れ、飼い主に百パーセント従うオオカミ犬を作り出そうと、無益な、そして冒涜的な試みを繰り返す。これはさすがに擁護できる行為ではなく、作者も否定的に描いている。
先にも書いた通り、内容は推理小説的だが、動物小説としては「なぜ日本にオオカミがいなくなったのか」「なぜ日本人はオオカミを恐れるのか」「本来のオオカミは、どういう動物なのか」が興味深く描かれている。わんぷりを見てニホンオオカミに興味を持たれたなら、合わせて読んでみてほしい。
日本オオカミ協会がこの本の書評を出しているので、併せてリンクを貼っておく。
わんぷりもいよいよクライマックスだが、一度拗れてしまったヒトとオオカミの関係、どう決着をつけるのか……
ちなみにメインキャラクターでは猫屋敷ユキ/キュアニャミーが好きです(ただの猫好き)。