読書録:格差の起源
オデッド・ガロー『格差の起源』(NHK出版)
京都・大阪方面へ出かける際、往復の電車内で読んでいた本。自分の読書ペースからすれば、もう少し早く読み終わってるはずだったが、今年の4月以降は外出回数が少ない上、自律神経症状+異常な暑さからくる多汗で帰りの電車内では汗を拭き続けていて読書などできなかった。結果、読了まで半年ほどかかったことになる。
本書は二部構成で、第一部は人類の成長過程、第二部は人類の格差の起源に焦点を当てる。
第一部では、マルサスを援用して人類の歴史が「技術改良等での生産増→人口増→結果的に成長が止まる」の繰り返しであることを指摘し、産業革命以後の急速な経済成長を「医療等の発達による乳幼児死亡率の減少とそれに伴う少子化、工場等での雇用勤務による安定した収入増」によるものとしている。これまで、人類は食料生産が増大するとその分「働き手」として子供を産み、人口を増やした。当時は乳幼児の死亡率が高かったので、保険として子供は多く産む必要があったが、結果的に食料生産が人口増の波とぶつかって限界に達し、生きるギリギリの生活水準が維持されるという。現在のように余裕のある生活を営めるようになったのはつい最近の話なのだ。
一方で、第二部においては格差は人類の出アフリカの時点で始まっていたとし、地理的要因、歴史的要因、文化的要因から地域間における生産量、情報量等の格差は必然であったと解く。まず多様性の問題として、アフリカから遠く離れれば離れるほど、その集団の中の多様性は失われる。次に格差の問題として、定住先の資源の密度や環境によって生産量は規定されてしまい、他地域と比較すると優劣ができるのは必定だという。
比較的平易で読みやすくそれでいて膨大な情報があり、充実した読書ができた。成長と格差の諸要因についての鋭い指摘に何度も目から鱗が落ちた。世界史、特にグローバル・ヒストリーの観点から何かを調べようと思うなら読んでおいたほうがいいかもしれない。
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