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親魏倭王、本を語る その21

【江戸川乱歩賞受賞作についての雑感】
今までに読んだ江戸川乱歩賞受賞作でおもしろかったのが、
『13階段』高野和明
『脳男』首藤瓜於
『連鎖』真保裕一
『放課後』東野圭吾
『写楽殺人事件』高橋克彦
『プリズン・トリック』遠藤武文
『翳りゆく夏』赤井三尋
あたりである。
1990年代以降は社会性の強い作品が多くなり、格段に読み応えがあるものが増えたが、反面、テーマや内容が重くなり、読んでいて疲れることも増えた。2000年以降の受賞作で最高傑作だと思っているのが『13階段』なのだが、内容がかなりハードなので再読できない。
『翳りゆく夏』もけっこう重い内容なのだが、こちらは過去に発生した事件の再調査で、クリスティーの『スリーピング・マーダー』に似た雰囲気があり、読みやすかった。
『プリズン・トリック』は交通事故を扱い、社会性のある内容ではあるが、メインはトリックでゲーム性が強く、読むのが苦痛にはならなかった。
『脳男』はメフィスト賞的な印象の作品で、乱歩賞中の異色作かもしれない。

【「新本格派」考】
日本の推理小説史において「新本格派」の範囲をどこまでにするかはいろいろ意見があると思うが、綾辻行人氏を嚆矢とし、北山猛邦氏を掉尾とするのが作風から見て妥当なような気がする。
個人的には綾辻行人氏・有栖川有栖氏・歌野晶午氏・我孫子武丸氏・山口雅也氏・法月綸太郎氏・今邑彩氏を第一世代、芦辺拓氏・篠田真由美氏・二階堂黎人氏・倉知淳氏・京極夏彦氏・西澤保彦氏・北森鴻氏を第二世代、森博嗣氏・高田崇史氏・柄刀一氏・東川篤哉氏・霧舎巧氏・氷川透氏・北山猛邦氏を第三世代と考えるが、どの作家を新本格派に入れるかはまた異論があるところだと思う。
以上は私が知る範囲で「新本格派」と呼ばれていた(記憶がある)作家を羅列したものだが、こうやって並べてみるとけっこう乱暴で、作風には結構違いが多い。だが、全体としては、世代が下がるごとに(ここでいう世代は作家本人の年齢のことではない)キャラクター小説の側面が強まっているようである。

【英米の怪奇小説について】
日本では怪談は夏の風物詩となっているが、イギリスでは冬の風物詩なのだという。そのため、イギリスではクリスマスの時期に怪談会を開くことが多く、その時期に合わせた幽霊譚も多く書かれている。一般にファンタジーと認識されている、チャールズ・ディケンズの『クリスマス・キャロル』も幽霊譚である。
ミステリーと違ってホラーはあまり読まないほうなのだが、今までに読んだ長編ホラー小説の中で最もおもしろかったのは、以前も投稿した通りヘンリー・ジェイムズ『ねじの回転』とシャーリイ・ジャクスン『丘の屋敷』である。短編ではシャルル・ノディエ「スマラ」、テオフィル・ゴーティエ「死霊の恋」、プロスペル・メリメ「ヴィーナスの殺人」、エドガー・アラン・ポー「黒猫」、チャールズ・ディケンズ「信号手」、J・S・レ・ファニュ「大地主トビーの遺言」、ガストン・ルルー「火の文字」である。
A・E・コッパードの「消えちゃった」はどちらかというと「奇妙な味」の感じがした。

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