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民俗学小話集⑥

【即身仏になった人とは】
湯殿山において即身仏を志した行者は一世行人という下級の行者で、火の管理をするため生涯妻帯禁止(ケガレ忌避のため)、ほぼ寺院の雑用係で、出世しても本山末寺の行人寺の住職にしかなれなかったとなかなか厳しい生活。しかし、即身仏を志すと上人号が授与されるなど、格段に待遇が上がったらしい(命と引き換えなので、それも悲しい)。ちなみに即身仏修行の一環として行われる木食行(穀類を経つ行)はトランス状態に入りやすくするのが本来の目的で、この修行を積んだ行人は祈祷時の霊媒を勤めた。堀一郎先生によると、酒田市の行人寺・海向寺で行われる「作祭り」では、一世行人に神降ろしをして作付けの託宣を得るという。
 
【カジマヤーの話】
宮田登先生の『冠婚葬祭』(岩波新書)に記述があるが、沖縄にはカジマヤーという97歳の祝いがある。長寿の祝いとして盛大に行われるが、地元の民俗学者によると戦前は葬式のようであったという。
これは、沖縄では人の定命を88歳とする考え方があって、それ以上生きているとその分だけ子孫の命が縮まってしまうのだという。そこで「もう充分長生きされたので、そろそろあの世へいらしてください」とお願いし、あわせて子孫の長寿を祈るのがカジマヤーの祭りの原型だったらしい。主役となる老人に死に装束を着せ、枕飯を供えるなど、葬儀を彷彿させる風習を伴っていた。
 
【トムライアゲ】
死者供養は中陰の期間を過ぎると百箇日、一周忌、三回忌………と続くが、五十回忌(地域によっては三十三回忌)をトムライアゲと称し、死者が祖霊と合体したとしてそれ以降の年忌供養を行わなくなる。
一般にウレツキ塔婆という葉付きの生木の塔婆を立てて証とし、地域によっては墓石を倒す=撤去したりする。
「墓石を倒す」という風習は大学の授業で聞いた話だが、限定された地域のもので一般的ではないようだ。 この風習は古い時代の墓石が位牌と同じく故人単体か夫婦単位で作られていたことに由来し、「○○家先祖代々」の墓石が一般的となった現在ではおそらく見られなくなっていると思われる。
 
【替え歌の話】
『サザエさん』の2番の替え歌で、
「戦争しようと町まで 出かけたら
 戦車を忘れて 三輪車で突撃
 あっちは大砲 こっちは水鉄砲
 ルールルルルールー 今日は大ピンチ♪」
というのがあって、僕が幼稚園~小学校低学年だった30年近く前には歌われていた。
替え歌には意図的に作られたもの以外に、どうも自然と流布しているものがあるようで、『ひな祭り』の替え歌で爆弾に灯りをつけて五人囃子が吹っ飛んだり、『お正月』の替え歌で餅をのどに詰まらせて救急車を呼んだりというのが僕の身辺で見られたが、高校生になったとき、別の自治体でも同じ替え歌が歌われていてびっくりした。

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