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読書録:世界史とつなげて学ぶ中国全史

岡本隆司『世界史とつなげて学ぶ中国全史』(東洋経済新報社)
日本史を学ぶうえで必要なのは交流のあった地域の歴史。特に中国と朝鮮半島は日本史に大きな影響を与えているだけに、大まかな王朝の変遷ぐらいは頭に入れておく必要がある。
ワイは元々『三国志』が好きで、そこから楚漢戦争や春秋戦国時代に関心を持つようになったが、一方で、簡便に読める中国史の通史を探していた。今までに読んだことがあるのが下記の2冊。
岡田英弘『中国文明の歴史』(講談社現代新書)
鳥山喜一『中国小史 黄河の水』(角川ソフィア文庫)
いずれも名著だが、本書は同じ通史ながらこの2冊とは毛色が違う。先に読んだ2冊が一国史、ナショナル・ヒストリーの視点で書かれているのに対し、本書は世界史を絡めた広い視野で書かれている。つまりグローバル・ヒストリーの視点である。
本書は中国文明の黎明期の記述で幕を開ける。中国は広い。黄河流域と長江流域で緯度が異なるため、生活文化が根本的に違う。北は畑作、南は稲作が主流だった。それより北、現在の万里の長城以北は遊牧地帯である。中国文明は、特に最初の王朝はこの畑作と遊牧の接点から生まれた。この最初の中国はいわゆる中原一帯が版図で、長江流域では別に文化が発展した。安定した気候の長江流域では変化が少なかったのか、この地域が発祥の王朝は明ぐらいしかなく、多くの王朝は北で発生している。一方で、戦国時代の楚、三国時代の呉のように、長江流域は独立の気風があり、それが顕在化したのが南北朝時代のようだ。
思わず吹き出してしまったのは、ワイが好きな三国時代の記述が思いっきり少なかったこと。この時代は実はトータルで100年ほどで、中国の長大な歴史では誤差程度の時代なのである。本書では、その後の分裂期(南北朝時代)と合わせて記述されていて、「寒冷化の衝撃 民族大移動と混迷の三〇〇年」という章題が付けられている。
その後は隋末唐初や五代十国時代のような混乱期を挟みつつも、唐、宋、明といった大帝国が続く時代になる。しかし、それは中国が孤高の帝国と化す道程でもあり、特に明、清代は世界史から孤立した時代だった。
読む順序としては、まず本書で大まかな時代の変遷を掴み、ついで先に挙げた岡田英弘『中国文明の歴史』(講談社現代新書)で各王朝を細かく学ぶのがいいだろう。


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