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親魏倭王、本を語る 特別編その01
モーリス・ルブランの『ルパン対ホームズ』は「金髪の婦人」「ユダヤのランプ」の2編からなる作品集であるが、「金髪の婦人」はほぼ長編といっていい分量があり、「ユダヤのランプ」は便宜上2章に分割されているが、分量的には短編である。
本書では、『怪盗紳士ルパン』所収の「遅かりしシャーロック・ホームズ」にチラッと登場したシャーロック・ホームズが本格的に登場し、ルパンと対決する。ただ、これはコナン・ドイルの了解を得ず勝手にルブランがホームズのキャラを使ったもので、先の「遅かりしシャーロック・ホームズ」の時にドイル側の講義を受け、ルブランは苦し紛れにエルロック・ショルメ(英語読みだとハーロック・ショーメスか)というよく似たキャラクターに作り替えた。人物造形もホームズとは別人にされているのだが、日本語訳の際はなぜかホームズに戻されるのが慣例で、ホームズファンが読むとかなり違和感があるという。(全くの別人だから当然である)。自分はジュヴナイル版でしか読んでおらず、読んだのはホームズよりルパンのほうが先だったから、特に何も感じなかったが。
ホームズとルパンは作品の考証が進んでおり、その生涯がだいたい明らかになっているが、それによるとホームズはルパンより20歳近く年長であり、ホームズとルパンが直接対決するのはちょっと無理があるような気がする(作中ではアクションを伴っている)。
余談だが、芦辺拓氏が『真説ルパン対ホームズ』というパスティーシュを書かれており、当事者ではない第三者が描いたルパン対ホームズということで気になっている。
先述した通り、コナン・ドイルから抗議を受けたモーリス・ルブランは、自作に登場するシャーロック・ホームズをエルロック・ショルメ(ハーロック・ショーメス?)に作り替えるが、それに伴い、ワトソンもウィルソンに代えられている。日本では翻訳時にショルメをホームズに戻すのが慣例になっているが、訳本によってはウィルソンはそのままになっており、読者が混乱をきたしているケースがあるという (一部ファンの間では、なぜワトソンがホームズに随行しなかった(別人が随行した)のかの考察が行われたりしているともいう)。