読書録:16世紀「世界史」のはじまり
玉木俊明『16世紀「世界史」のはじまり』(文春新書)
まず近況から話を始めるのを許していただきたい。今、適応障害(うつ状態)の診断を受けて加療中なのだが、今年の4月以降、特に6月以降、どういうわけか眠気が強まり、一日中何もできない日が続いた。それが、先日の頭痛の発作のあと、異常な興奮&覚醒状態と引き換えに読書意欲が戻って来、それからかなりのハイペースで読書している。
新書ということもあって内容が軽いためかサクサク読めた。仕事柄、論文などを読むことも多いワイにとっては、新書は「軽い読み物」である。
本書は大航海時代に焦点を当て、この時代にグローバル化が進んだ理由を多角的に検証する。一国の歴史をナショナル・ヒストリー、国境を超えた広範囲の歴史をグローバル・ヒストリーと呼ぶが、本書は後者に当たる。
東洋と西洋はシルクロードによって交流が行われていたが、東洋と西洋が領域を接するというかたちで最初に繋がったのは13〜14世紀のモンゴル帝国の拡大であった。これが第一次グローバル化で、大航海時代は第二次グローバル化というところだろうか。モンゴル帝国については、岡田英弘『世界史の誕生』(ちくま文庫)が詳しい。
大航海時代は植民地支配の拡大と科学技術の発展、そしてキリスト教内部の宗教対立があった。ルターの宗教改革に始まるプロテスタントの勃興に対処すべく、カトリック教会は海外布教にかじを切る。そんな中、イエズス会が宣教師兼商人として活躍し、西洋の最新の科学技術を供与する見返りに布教を進めていった。これは言い換えると、当時のヨーロッパには科学技術とキリスト教しか輸出できる産物がなかったとも言える。
この時代は国家の変革期でもあり、領土を巡回する王から王都に定住する王への変化が起きる。この政治システムの変革が近代国家成立の遠因となる。
同じ著者の本では『物流は世界史をどう変えたのか』(PHP新書)もおもしろかった。
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