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第74回: 「Global Southのど真ん中」で考える機会 (Mar.2024)

ふと気付けば2024年も早3月。本年度はようやく、「『グローバル』を目指すならインドへ向かえ」という予てからのメッセージが現実化してきた。一年掛かりで戦略を練り武器を磨いて陣を敷き、いよいよ新年度からは具体的な商機を仕掛け、インドにプレゼンスを築く積極投資を始める、という日本企業も出てきた。これまで長らくインド市場に携わってきた企業の中にも、旧来型の製品販売や工場運営に止まらない、新規事業やイノベーションの機会を探る動きが目立って増えている。日本語メディアも少しずつインドをまともに報じるようになってきた。ただ、渋々ながら当地を訪れる (?) 実際の担当者に話を聞く限り「中国に代わる大国」、「東南アジアの次」を枕詞とした消去法的選択を語るばかりで、結果として、及び腰でおっかなびっくりのインド視察、通り一遍で焦点の定まらない市場調査、といった域を脱しないことも多い。

特に年末年始から来年度に向けた仕込み (予算消化?) が盛んなここ数か月はオンラインでもオフラインでも、インドへ「はじめの一歩」をご一緒する機会が多い。決まって聞かれるのは、「なぜ大和はベンガルールに居るのか?」。ちょうど、代わりにうまく説明してくれている記事が目についた。"To see India’s future, go south" (The Economist) 、「『インド』を目指すなら南へ向かえ」とでも訳そうか。

新年度早々に総選挙を控える時節柄、記事自体は政治的背景を軸に話が展開されている。人口も国土も日本とは桁違いに大きい上、民族・言語・宗教・風俗の複雑さも日本とは桁違いのインドを民主主義の前提下で治めることの難しさは計り知れないから、この10年間、国の目覚ましい発展を率いたModi首相の三期目がどうなるか、は間違いなくトピックだ。ただ、政府機関や巨大資本とはそもそも寄って立つ土俵が異なる一人の外国人としては、年中快適な高原気候のみに止まらない、「南」の居心地の良さがある。それぞれ対象は違えども、誰もが自らの興味・関心に対してひたすら素直に「何か」を実現しようとしている。それぞれが勝手に忙しくしている一方で、互いに「何か」に共鳴できる仲間を探しているから、会話は常にオープン・イノベーションが基本姿勢。この手の分野に明るい人、こんな技術を扱える人、どんなテーマでも何人かに声を掛ければ、およそ数時間内に専門家に辿り着く。

全インド28州の内、ベンガルールを中核都市とする南部5州の人口は2割相当。対して金融機関借入高は3割、外国直接投資は3割5分を集め、GDPへの貢献も3割を超えるという。iPhone組み立てをはじめ中国の代替を狙う電子機器輸出高においては半分弱、テック・スタートアップにおけるユニコーン企業の半分弱、ITサービス輸出高の2/3、グローバル企業の各国拠点を支援するGlobal Capability Centre (会計士・弁護士・デザイナー・アーキテクトなどプロフェッショナル業務を担う) に至っては8割を「南」が担っているそう。「インドを訪れる外国人ボスたちは首都デリーを目指すが、ビジネスの実を狙うなら南へ2時間半のフライトを厭うべきでない」と記事は指摘する。

ベンガルールには、日本の人口の倍を優に超える「南」5州からのみならず、全国から職や機会を求める人々が集まる。英語でオープンなコミュニケーションが前提の社会だから、自然と世界にも目が向く。「グローバル」で一通り活躍したインド人が国に戻る際、当地を選ぶことも多い。そんな都市だから、航空宇宙・医療産業をはじめとした先端技術が発達し、ものづくり・ITが集積し、スタートアップが勃興する。このことが強力な誘引力となって優秀な頭脳ややる気に満ちた若手・学生が集い、拡大再生産が繰り替えされる。正に、世界を牽引するGlobal Southのど真ん中。

さて翻って日本人・日本企業。当地を訪れる間、いくら五感に刺激を受け続けても、日本の日常に戻って一週間もすれば「何か不思議な夢を見た気がする」くらいの感覚しか残らない。「日本に帰ってよく検討します」と言ったきり、というのは枚挙に暇がない。ただただ驚いて圧倒されているばかりでなく、この地の空気を味わっている間に日本の典型的な思考回路を再構成し、インドの実態に即した事業計画やアクションプランを書き上げてしまうことをお勧めしている。

大和合同会社ではインド各地の企業・機関・個人との多彩なネットワークに基づき、「Global Southのど真ん中で考える機会」を提供しています。

- 企業幹部へ、Global Southを感じてグローバル経営を考える機会
- 事業担当者へ、Global Southを試して新規事業を考える機会
- 起業家へ、Global Southの事業機会に挑む機会
- 研究者へ、Global SouthでBreakthroughを探す機会
- 教育者へ、Global Southで日本の教育を考える機会
- 芸術家へ、Global Southで表現の幅を広げる機会
- 若手・学生へ、Global Southで競ってキャリアを考える機会
- どなたでも、Global Southに浸って新たな思考回路を築く機会


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