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ギターメンテナンス〜弦が常に当たっているパーツ類編〜

こんにちはギタリストのYamatoです。
7日連続投稿最終日は楽器として1番大事なピッチ(音程)に多大な影響があるパーツのメンテナンス方法のご紹介です!

※前回の記事はこちら


・常に弦が設置しているパーツとは?

ざっくりどのパーツを指しているかと言うと
①ペグ
②ナット
③ブリッジ
大まかにこの3か所が常に弦が当たっている(触れている)部分です。
※フレットも演奏中は弦が設置してますが、常にと言うわけではないのと、個人のメンテナンスでは出来ることが無さすぎるので除外しました。

この3か所はギターを触ろうが触るまいが、常に弦が触れているのでチューニングや音色に多大な影響を及ぼします。

高価なギターでもここのメンテナンスを怠ると、弦が押さえにくかったり、チューニングが安定しなかったりしますが、逆にこの3か所をしっかりとメンテナンスしたら、ギター本来のポテンシャルを引き出すことができますので、しっかりとメンテナンスが出来るよう挑戦してみましょう!

①ペグのメンテナンス方法。

ペグはチューニングをするために緩めたり閉めたりと、動的パーツがいくつも組み合って出来ています。
そのため動きが悪いとチューニングの時間が苦痛になったり、そもそもチューニングできなくなることも考えられます。

ペグにもいくつか種類があり
・ギア(歯車)が剥き出しのタイプ

画像1


・ギアにカバーが付いてるタイプ。

画像2


・ギアがカバーで密閉されているタイプ。

画像3


大きく分けてこの3種類が主流だと思います。

またその3タイプでも
・弦ロック機能なし
・弦ロック機能あり(ロック機構も様々ありますが割愛)
の2種類があるので、一般的に見ても6種類のペグに分かれます。

ロック機能の有無は直接メンテナンス方法に差はなく、各社のロック機構によってメンテナンス方法が変わると思いますので、今回はロック機能なしの3種類に絞ってご紹介したいと思います。

・ギア(歯車)が剥き出しのタイプ。

この手のタイプはエレキギターだと珍しいタイプですか、アコギ/クラギやベースだと割と多く見られますし、見た目的に1番ロマンを感じる作りだと思いますw

しかし、ロマンが故に露出されたギアにホコリなど汚れが溜まりやすく、チューニングしようと回しても硬くて回りにくい状態になりやすいです。
そんな時はギア周りをブラシで磨き、潤滑剤を付けるとだいぶ回復します。

ペグの中でも1番手のかかるタイプなので、ロマンはいかに愛情を注げるかですね…
※私は見た目は好きですが、定期的なメンテナンスがめんどくさいので密閉型が1番好きですし、なんならペグの無いヘッドレスユーザーですw

・ギアにカバーが付いてるタイプ。

このタイプはトラディショナルなタイプのギターに多いと思います。

見た目はカバーがされているので、オープンタイプに比べるとホコリ等の汚れに対して強そうですが、下記メンテナンス用の穴が開いているので、長年使用するとなんやかんやで微粒な汚れが溜まります。

このタイプはカバーに小さな穴が開いており、そこからグリス等を散布してギアのメンテナンスを行います。
それでも症状が回復しなければ取り外してブラッシングするか、超音波洗浄のような洗浄機器が必要となってくるので、下手したらオープンタイプよりもメンテナンスの手間が凄いことになります…

・ギアがカバーで密閉されているタイプ。

こちらは上記2点と比べるとギア部分が密閉されている恩恵で、汚れの侵入も97%くらいはカットされているので、ギアのメンテナンスをする必要もほぼ無いですね。

逆にペグの周りが硬くてメンテナンスが必要になったら細かいパーツを無くさないよう&傷つけないようバラしてメンテナンスを行うので、労力と時間を考えると買い替えた方が安くつくかもしれません…?
50年代/60年代のいわゆるヴィンテージ愛好家の方で、オリジナルパーツに強い拘りがある方は愛情がすぎるが故メンテナンスしているそうですが、私は新しいペグの方が精度が高いと思うので買い換える派です(これについてはそれぞれのロマンによりけり)。

・各タイプ共通のメンテナンス。

ここまでタイプ別にメンテナンス方法を書きましたが、全てのタイプに共通するのが、ポスト穴(弦を通す穴)のメンテナンスです。

ここはブラシなどでホコリを払って、オイルやグリスを注入してやることでチューニングが安定しやすくなります。

「オイル刺したら滑って安定しないやんけ!」
とオイルの特性や物理の法則を考えると、滑りを良くすることがチューニングの安定に繋がるのが謎な理論ですが、これはチョーキング/アーミングなどで、チューニングが合っている状態から接点(弦と今回紹介する各3か所のパーツ)が移動して、接点が元の位置に戻る動作が起きています。

なので、滑りが悪いとチョーキング/アーミングで引っ張られた弦が、力を抜く事で元の位置に戻ろうとする時にしっかり戻らないリスクが生まれます。
※チョーキングをする前とした後ではチューニングが狂ってしまう現象。

そこで滑りをよくすることによって、弦との接点が元の位置に戻りやすくするために、オイル/グリスを注入してやります。
※滑りが良くなるということで、戻りが良くなるのに加えてチョーキングも少し楽になったり、より繊細な音程変化も可能になります。

また、これ以降のナットやブリッジのサドル部分など、弦が直接当たっている部分はオイル/グリスを使い、同じようにチューニングの安定性を図ります。

②ナットのメンテナンス方法。

ナットは弦が乗っているだけのシンプルな構造ですが、常に弦と密着していることにより、チューニングなど弦が動くと擦り減っていきます。
余りにもすり減ると、弦高が異様に低くなりビビりやすくなりますし、バリ(ざらつき)がひどいと接地している辺りの弦が切れやすくなる原因にもなります。

ナットも様々な材質や加工のナットがありますが基本的には
・金属製ロック機能あり。

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・金属製ロック機能なし。

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・骨系ロック機能なし。

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・その他材質ロック機能なし。

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※画像はGraphtech社のTASQという人工象牙。
人工象牙の他にもカーボンや木材も用いられることがあります。

この4種類が一般的なナットだと思いますので、この4種類でもロック機能の有無による違いでメンテナンス方法が少し異なります。
※なので実質2パターンのメンテナンス方法の紹介です。

・ロック機能あり。

もはやフロイドローズ系のロックブリッジが搭載されているギターは、ほぼこれしか選択肢が無いナットなので、使用ユーザーも多いと思います。

※やろうと思えば他の材質のナットをつけたり、併用したりしているギターもありますが、最近それ系のカスタムしてる方やメーカーがあまりいないので、費用対効果が薄いんでしょうかね?

このロックナットはメンテナンスというほどでも無いですが「ホコリを払って弦と設置する面にオイル/グリスを塗布する」だけですw

あと強いてやることとしてあげるなら、ボルトで締め上げて弦を固定する構造なので、弦と設置する部分が擦れて極小さなバリができるので、弦が切れやすかったりチューニングがあまりにも安定しない場合は、コンパウンドで磨いて滑らかにする必要があります。

しかしそのレベルのメンテナンスは、何年も酷使しない限りはそこまで磨耗しない思うので、一般的には行わなくても大丈夫です。

・ロック機能なし。

フロイドローズ系以外のブリッジ(シンクロ系・ストップテール・裏通しなど)だと自ずとロック機能なしのナットが一般的です。

※これもシャーラーかどっかがストップテールタイプでロックナットでもチューニングができるファインチューナー仕様の物も有りましたが、最近噂すら聞かないレベルでニッチなモデルです…w

※あることはありましたがいつから在庫切れなのか不明ですw

このロック機能のないタイプのナットは、基本的に材質が違うだけで構造は同じです(弦が乗っているだけ)。

ロックナットと同じく金属製のナット(主にブラス)は、オイル/グリスと何年かに一度コンパウンドで十分ですが、骨系やプラ系など金属よりも柔らかい素材のナットは削れやすいため定期的に摩耗具合を見て、バリがあるようなら整えましょう。

逆に金属以外のナットは、柔らかいという点で比較的加工がしやすく、色々な材のナットを試したい方には良い点でもあります。

・ナットメンテナンスの注意点。

これはナットを付け替えた時の注意点ですが、ナットが高い(溝が浅い)と解放弦でバッチリチューニングを合わせても、フレットを押さえた時に音程がシャープしやすくなります。

ナット高杉

この様に開放弦(黒い線/仮にミの音)と1フレットを押さえた時(赤い線/仮にファの音)だと、黒い線の位置から指板側に弦を押し込むと、少なからず弦が伸びる(チョーキングと同じ動き)ので、開放弦でしっかりチューニングを合わせても赤い線のファの音がシャープ気味になります。

ナット適切

ナットの高さが適切に設定できてると、開放弦(黒い線/仮にミの音)と1フレットを押さえた時(赤い線/仮にファの音)のギャップが少なく、開放弦でチューニングを合わせても1フレットのファの音も聴感上気にならない程度のシャープ具合、またはチューナーも微動だにしないくらいになります。

押さえやすさ/鳴り方も大事ですが、可能な限り全ポジションでしっかりとした音程が取れるように調節しましょう!

③ブリッジのメンテナンス方法。

ブリッジは今まで出てきた2か所よりもパーツの点数が多く、更に一般的なギターなら弦が6本分なので調整箇所がめちゃくちゃ多いです。
また弦高やオクターブピッチ(ハイフレットのチューニング)、楽器の鳴り方など多くの要素に絡んでくる、メンテナンスがそれなりに大変なパーツです。

ブリッジの種類は基本的に

・チューンオーマチック+ストップテールピース系(トレモロ機能なし)

ストップO

・シンクロナイズド系ブリッジ(トレモロ機能あり)

シンクロ

・フロイドローズ系ブリッジ(トレモロ機能あり・ロック機能あり)

フロイド

この3種類が大分類で、そこからさらにメーカーやモデル、年式等で様々な仕様がありますが、すべて紹介するには経験もないし文字数がやばいので一般的な仕様の物でメンテナンス方法をご紹介いたします。

・チューンオーマチック+ストップテールピース系のメンテナンス方法。

こちらはギブソン系のレスポールシェイプのギターでよく使われているタイプの物です。

ストップO

画像の上のパーツがテールピース、下のパーツがチューンオーマチックブリッジ(略してチューンオーやシンプルにサドルやブリッジとも呼ばれます)です。

テールピースはパーツの点数が少なく、
・テールピース本体(弦を通す部分)
・アンカーボルト(テールピースの取り付け部分)
・スタッド(ボディに埋め込まれる台座部分)
この3つで構成されており、アンカーボルトの高さを調節することで、弦のテンション感/張力を調整します。

テールピースを高めにすることで張力は弱まり、弦が押さえやすくなりますが、力いっぱい押弦したりピッキングをするとシャープしやすくなります。
逆にアンカーボルトをいっぱいまで締めテールピースを低く設定すると張力が強まり、押弦の力がより必要になりますが、多少力んだ演奏でも音程がズレることは少ないです。

ちなみに高さの調節はアンカーボルトをマイナスドライバーやコインで回すことで調整します。

次にブリッジ部分のパーツですが
・ブリッジベース(各パーツを取り付ける骨組み部分)
・サドル(弦を乗せる部分)
・オクターブスクリュー(サドル位置を調整するためのネジ)
・サムナットorエベレーションナット(ブリッジベースを調整するためのネジ)
・スタッド(ボディに埋め込まれる台座部分)
この5つで構成されています。
※サムナットはナット部分とネジ部分がくっついているタイプと独立しているタイプがあります(これのどちらかによって呼称が変わってると思うのですが、基本的にトレモロブリッジユーザーなので、詳しい人に確認して下さいw)。

テールピースより複雑ですが、主にメンテナンスを行うのはオクターブスクリューとサムナットの2か所です。

・オクターブスクリュー(オクターブチューニング)

まずはオクターブチューニングについてですが、一般的には12フレット上のハーモニクス音と実音で音程差が無いようにチューニングを行います。

これはハーモニクス音は弦が沈んでいない状態に対し、実音はハーモニクスに比べると弦が沈んだ位置になり、若干音程がシャープしてしまうギターの構造上致し方が無い欠点で、その構造上の欠点を少しでも小さくするためにオクターブスクリューでサドル位置を調節するメンテナンスです。

ちなみに私はハイフレットもよく使うので、12フレットで行うと17フレット以降のピッチに違和感を覚えるので
・19フレットのハーモニクス音
・19フレットの実音
・オクターブチューニングしている弦より1個太い弦の開放
この3点を聴感上でズレを感じないように合わせています。
※最低音弦は1個太い弦が無いので19フレットのハーモニクス音と実音のみ。
2弦は19フレットのハーモニクス音と実音&20フレットの実音と3弦の開放で違和感が無いか確かめてます。

このオクターブチューニングは弦のゲージ(太さ)を変えた時や、弦高やネックの調整を行った時に行います。
この時にハーモニクス音と実音の音程がズレていなければ調節の必要はありませんが、ズレている場合調整が必要です。

具体的にハーモニクスに比べて実音が低い場合はヘッド方向(図解赤矢印方向)にサドルを移動し、実音が高い場合はテールピース側(図解緑矢印方向)に動かします。

オクターブチューンオー

※サドルをどちらに動かすかはナッシュビルタイプと他のタイプだと取り付け向きが逆だったり、それを気にしない方もいたりで、正直トレモロブリッジユーザーにはよくわかりませんので、ご自身のオクターブスクリューを回したらどっちに動くか確認しながら調節してくださいw

また、弦を張っている状態だとサドルがうまく動かないので、弦を緩めて調節しましょう。

・サムナット(弦高)

こちらはテールピースのアンカーボルトと同じ作用で、ナットを締めれば弦高が低くなり、ナットを緩めたら弦高が高くなります。

この手のブリッジの弦高調節は「高音弦側」と「低音弦側」の大まかな調節しかできないので、「4弦だけ気持ち弦高を低くしたい」という時はサドルを削るしかないです。
※逆に4弦だけ高くしたい場合は4弦以外のサドルを均等に削って、ナットを緩め全体を高くする必要があります。

・補足的にサドル

上記の様に独立して弦高を調節したい場合や、ナット同様長年使っているとバリができチューニング精度や弦の切れるリスクに繋がるので、オイル/グリスで摩擦力を減らしたり、コンパウンドやヤスリで溝の形を整えましょう。

チューンオー図解

・シンクロナイズド系ブリッジのメンテナンス方法。

こちらはフェンダー系のストラトキャスタータイプのギターに多いブリッジです。

シンクロ

基本的に調整する箇所は上記チューンオーと同じく、オクターブピッチと弦高です。
が、ここからのトレモロ機能付きのブリッジはパーツの点数が多く、どこかしらのパーツを設定したら、別パーツも再設定しなくてはいけないくらいお互いが影響し合うので、ベストなセッティングにもっていくには根気が必要です…w

多いとは言っても基本的に
・ベースプレート(各パーツを取り付ける骨組み部分)
・サドル(弦を乗せる部分)
・オクターブスクリュー(サドル位置を調整するためのネジ)
・サドルビス(弦高調節用イモネジ)
・アンカーボルト/スタッド(一体型でボディに直接撃ち込まれる木ネジタイプとチューンオーみたく独立しているタイプがあります)
・トレモロブロック/サスティンブロック/イナーシャーブロック(ベースプレート裏側の弦を通す部分、スプリングを取り付ける部分)
・トレモロスプリング(上記ブロックと下記スプリングハンガーを繋ぐバネ)
・スプリングハンガー(ブリッジとボディを繋ぐスプリングを取り付ける部分)
※この他にもアームに関するパーツや細かいバネ/ネジ等がありますが割愛しますw
一気に書き出すと多く見えますが、実質8点のパーツなのでチューンオー+テールピースの点数と変わりませんね。

ひとまずは先ほどご案内したチューンオーと変わらないパーツからご案内していきます。

・オクターブスクリュー(オクターブチューニング)

これはチューンオーと全く一緒でスクリューを回すことでサドルを動かし、ハーモニクス音と実音を合わせてオクターブチューニングを合わせます。

オクターブシンクロ

シンクロ系はオクターブスクリューの取り付け方向が決まっているので、緑矢印方向に動かしたい時はネジを締めて、赤矢印方向に動かしたい時はネジを緩めます。
こちらも弦を張っている状態だとサドルがうまく動かないので、弦を緩めて調節しましょう。

・弦高調節用イモネジ(弦高)

このタイプのブリッジは各サドルごと独立して弦高を調節することができます。

各サドルについているイモネジを締めれば弦高が高くなり、ネジを緩めれば弦高が低くなります。
この時2個のイモネジの飛び出し量に差があると、サドルが傾いてしまうのですが、ここも水平に保つ派と角度を付ける派がいらっしゃいますが、私は断然水平派です。
※角度を付ける派も意図的につけているのかどうかはわかりません…w

また、シンクロナイズド系ブリッジもアンカーボルトの締め具合でベースプレートごと弦高を変えることができます。
が!しかし!アンカーボルトは弦高のほかに、アームアップ方向の稼働量も変わってくるので、もしベースプレート事動かす場合は、裏のスプリングの調節も必要になってきます。

・アンカーボルト&スプリング(弦高&ベースプレートとボディの隙間)

シンクロ調節起因

先程少しお話したアンカーボルトの締め具合で、ベースプレートごと弦高を調節できると書きましたが、具体的に持ち上がる部分はアンカーボルト側(ヘッド側)だけが持ち上がり、オクターブスクリュー側(ボディエンド側)はスプリングによって引っ張られているので元の位置のままです。
※図解緑矢印

これによって何が問題かというと、アーミングをしない方なら特に問題ないと思いますが、ベースプレートとボディ(図解に載ってないですが…)の隙間が無く(少なく)アームアップ方向の動きが制限されます。
アップ方向へのアーミングを行い方は
・アンカーボルトで緑の矢印を持ち上げる(ネジを緩める)
・スプリング(スプリングハンガーを固定している木ネジ)を緩める(赤矢印の動き)
そうすることでベースプレートとボディに隙間が生まれ、アップ方向への空間が確保されます。

一応アンカーボルトを動かさないで、スプリングの締め具合によってアップ方向の空間は確保できますが、私はベースプレートとボディが水平でないとなんか落ち着かないので、調整するなら両方行いますw

また、赤矢印と紫矢印はスプリングの締め具合のほかにも
・スプリングの硬さ
・スプリングの本数
・スプリングの掛け方
・etc…
でも変化するので、概ね8割ぐらいのメンテナンスが出来てから着手すると、ベストな状態に仕上げやすいと思います。

シンクロ図解

・シンクロナイズド系ブリッジのいい所

シンクロナイズド系は他のブリッジに比べると、各サドルごとに弦高調節が出来たり、オクターブスクリューが調節しやすい取り回しになっているので、スプリング(ベースプレート)のメンテナンス方法さえ慣れてしまえば、一番楽なタイプだと私は思います。
※その面倒なスプリング調節が無いけど弦高とオクターブチューニングの楽さが同じヒップショットタイプのトレモロなしブリッジが最強説までありますw

ヒップショット

・補足的にサドル

ナットや他のブリッジ同様長年使っているとバリができチューニング精度や弦の切れるリスクに繋がるので、オイル/グリスで摩擦力を減らりたり、コンパウンドやヤスリで溝の形を整えましょう。

・フロイドローズ系のメンテナンス方法。

フロイド

こちらのタイプはシンクロナイズド系ブリッジよりもチューニングのズレを少なくするために、サドルとナットで弦をロックしているためパーツの点数が1番多いブリッジです。

が、これもメンテナンスの方法に多少の違えはあれど、基本はサドルの位置でオクターブチューニング、ベースプレートの高さで弦高を行うと言うのはチューンオー系と同じでざっくりとした調節を行います。
※各弦独立した弦高調節も可能ですが、そちらについては後ほど詳しく書いてます。

パーツはほぼシンクロナイズド系と変わらず
・ベースプレート(各パーツを取り付ける骨組み部分)
・サドル(サドルとベースプレートをマウントスクリューで固定する部分&弦を乗せてロックする部分が繋がっている)
・ファインチューニングスクリュー(ナットで弦をロックした後だと、ペグでチューニングができないので、チューニングスプリングに反発する力でロックスクリューを動かす部分)
・ファインチューニングスプリング(ベースプレートとトレモロブロックの間に挟んでいる角度付きの板バネで、チューニングスクリューに反発する力でロックスクリューを動かす部分)
・ストリングロックスクリュー(インサートを固定するため&ファインチューナの締め具合をサドルに伝達するネジ)
・ストリングロックインサート(ロックスクリューを締めることで弦をサドルに固定するブロック)
・サドルマウントスクリュー(サドル位置を固定するためのネジ)
・アンカーボルト/スタッド(一体型でボディに直接撃ち込まれる木ネジタイプとチューンオーみたく独立しているタイプがあります)
・トレモロブロック/サスティンブロック/(ベースプレート裏側のスプリングを取り付ける部分)
・トレモロスプリング(上記ブロックと下記スプリングハンガーを繋ぐバネ)
・スプリングハンガー(ブリッジとボディを繋ぐスプリングを取り付ける部分)

シンクロナイズド系に無かったファインチューナーが新たに追加されていたり、オクターブ調節に関わるビスの名称が変わっていたりと、差異はあるものの概ねほぼ同じ構造です。
※代理店のHPで詳しい図解がありますので、興味のある方はご覧ください。

・サドルマウントスクリュー(オクターブチューニング)

前述の2種類のブリッジはネジを回せばサドルが動く構造ですが、フロイドローズ系はサドルをベースプレートと固定するためだけのパーツです。

なのでオクターブチューニングを行う際は
・マウントスクリューを緩める。
・自由に動くようになったサドルを人力で移動する。
・移動が完了したらマウントスクリューを締めサドルとペースプレートを固定する。
この流れがオクターブチューニングの一連の流れです。

この時に厄介なのが、ペースプレートがフローティング状態(ブリッジがアームダウン/アップ方向に動く状態)だと、オクターブチューニングの際に弦を緩めてサドル位置を調節し、サドル位置を固定して弦を張った時では、ベースプレートの高さと角度が若干変わっているので、細かい修正回数が増えます。
※これがフロイドローズ系が嫌われる理由の一つでもあると思います。

対策としては、普段フローティング状態でも、オクターブチューニングをする時だけ割り箸等をベースプレートとボディの間に挟んでおけば、チューンオーほどではないですがそれなりに作業が楽になります。
一応それ専用のオシャレアイテムもありますが、そのためだけのアイテムにしたら少しお高い感じがするので、私は工具箱に転がってる金属板を挟んでますw

それとオクターブチューニング専用に開発されたチューニングキー的なのもありますが、正直フロイドローズにしか使えない(他のロック式ブリッジは別の物を用意するか、そもそも取り扱いが無い)ので、私は一度も買ったことがありません。
※あったらあったで便利そうですが今更うーん…?て感じですw

サドル位置の移動方向は今まで通り、ハーモニクス音より実音が低い時はヘッド方向(赤矢印方向)に、ハーモニクス音より実音が低い時はボディーエンド方向(緑矢印方向)に移動させます

オクターブフロイド

・アンカーボルト&スプリング(弦高&ベースプレートとボディの隙間)

ここはシンクロナイズド系と特に変わりはないのでそちらを参考いただきたいと思います。

シンクロ調節起因

アンカーボルトで弦高(緑の矢印)
スプリングの張り具合でベースプレートとボディの隙間(赤と紫の矢印)
一応フロイドローズ系の略図も載せておきます。

フロイド図解

・ファインチューナー(チューニング)

まずはファインチューナーの簡単な構造をご覧ください。

ファインチューナー略図

ざっくりと上記の様な構造でチューニングを可能にしています。
ファインチューナーのよくある不具合は
・チューナービスを回しても音程が変化しない。
・そもそもチューナービスが回らない。
このどちらかだと思います。

・チューナービスを回しても音程が変化しない。
まずビスが動いているけども、音程の変化がない場合は、多くの場合長年の使用によってスプリングが弱くなってしまい、持ち上がる方向(赤矢印方向)への力が足りなくなることもあります。

その場合はスプリングを交換すれば、従来の反発力が戻るのでしっかりとチューニングが可能になります。
※これを行うには結構な点数のパーツをばらす必要があったり、オクターブチューニングが絶対必要なので、スプリングをかえるついでにブリッジ全体のフルオーバーホールを行うきっかけにはちょうどいいと思います。

または画像で紫に塗られている部分が汚れやさびで動きが鈍くなっていることもあるので、エアダスターやスプレー式のパーツクリーナーで汚れを落とし、オイルを注入したらスムーズに稼働するようになります。

・そもそもチューナービスが回らない。
この際持ち上がる方向(赤矢印方向)は動くけど、押し付ける方向(緑矢印方向)に動かない場合は、上記紫のパーツが固着していると思うので洗浄&オイル注入をしたら動きがよくなります。

またはどちらの方向にも動かない場合は、チューナービス自体が固着していると思うので、そちらも洗浄&オイル注入をすれば回しやすくなります。

・ファインチューナーあるある
ファインチューナーはブリッジに併設されており、更にブリッジミュートなどで手が直接触れやすいパーツという事と、構成されているパーツがとても小さなパーツが多いという点で、汚れが溜まりやすかったりサビが発生しやすいので、ファインチューナの可動域(チューニングできる音程範囲)が狭くなったり、そもそも動かなくなってしまいます。

なので、弦交換のたびに一つ一つ磨いてはオイル/グリスを付けると弦交換の時間が1回1時間は超えてしまいますので、そこまではしなくとも弦を外した状態で、ブリッジ全体をブラシで磨いてあげるとフルメンテナンスの頻度が少なくなる思いますので、可動部分の隙間などはこまめにブラシ掛けするとよいと思います。

・各弦(各サドル)単体の弦高調節

フロイドローズ系はシンクロナイズド系と違い、各サドルごとでの弦高調節が出来なくなないですが、そこまでシビアにも追い込めませんし、指板の形状(R/ラジアル・ラディアスなど指板中心の膨らみ具合)に併せている初期設定なので、結構調整が難しいです。

方法としてはサドルとベースプレートの間にめちゃくちゃ薄いスペーサー/シム(金側板)を挟むことで、特定箇所のサドルを単体で弦高を上げることができます。

しかし、これは弦高を調節したいだけなのに、わざわざサドルを外す必要があるので、必然的にオクターブチューニングも行わなくてはいけないので、ここまでやっている人はフロイドローズ系ユーザーでも少ないのではないでしょうか?(私はめんどくさいので過去にやってもうやってませんw)

・補足的にサドル

ナットや他のブリッジ同様長年使っているとバリができチューニング精度や弦の切れるリスクに繋がるので、オイル/グリスで(以下同文)

・最後に

ここまでかなりの文字数になってしまいましたが、お付き合いいただきありがとうございます…w

今回の弦が常に当たるパーツは、楽器としての存在意義に直結するくらい重要なパーツなので(音痴な楽器だと弾いててつらいですよね?)自分でここまでの調整/メンテナンスが出来るようになると、音程のしっかりとれているギターを弾く事になるので、もし演奏中に微妙に音を外すと「自分の腕がまだまだやな…」というのもはっきりとわかるので、上達への近道の一つとして、ゆくゆくはご自身でも追い込んだセッティングが出来るようぜひセルフメンテナンスに挑戦してみて下さい!

それと各パーツで頻繁に登場するオイル/グリスですが、私は基本的にオイル派です。
グリスだと塗りすぎたりしたときのふき取りが面倒だったり、塗るために何かしらつまようじ的な物を用意しないといけないので…
ちなみに使っているのはFreedom Custom Guitar Researchのオイルです。

これだとキャップに刷毛が付いているので散布しやすいのでお勧めです。

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それと「こいつのレッスンだと不安だな…」とお考えの方は、小林信一さんが運営しているONLINE MUSIC DOJO内で、私も所属している全国ONLINE GUITAR LESSONには様々な先生がいらっしゃるので、気になる先生を探してみるのも良いかと思います。

2020年10月から、Twitterにてフレーズリレーという企画が開催されたので、「#MusicDOJO #ギター講師リレー #StayGuitarHome 」で検索していただけると各先生の特色が分かるかと思いますので、ぜひ一度検索してみて下さい!

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