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認知症患者の頭痛管理 - 薬物療法だけでなく、不安や生活リズムにも注目

こんにちは、やまとドクターサポートの原田です。毎週開催している「15分間医師カンファ」では、現場での気づきや悩みをテーマに、やまとの全診療所の医師が様々な視点から解決策を考える場を設けています。今回は「認知症患者の頭痛管理」について話し合いました。
Take Home Message

  • 痛みの訴えの背景にある要因を多角的に評価

  • 薬物療法だけでなく、不安や生活リズムにも注目

  • 家族との認識共有と段階的なアプローチが重要

カンファでの意見交換

A医師:「91歳の女性で、脳動脈瘤で脳外科から紹介された方なんです。認知機能の低下があり、グループホームに入所中なんですけれども。頻回に頭痛の訴えがあって...」
B医師:「具体的な状況は?」
A医師:「最初は定期でカロナールを3000mgぐらい1日内服してもらう形にしたんですが、それでも夜間未明にコールが止まらず、2時3時に対応せざるを得なかった。4時間とか6時間空けてという指示をしているんですが、それでもその30分ぐらいでもう痛みを訴えて。今度は家族に電話が行って、ご家族が診療所に乗り込んできて...」

C医師:「認知症の患者さんとはいえ、痛いと言ったら痛いんだろうなと思って見るようにしています。本当に痛いのかなと言ってカロナールくらいから始めることはありますが、一応フォローして、痛み止めは普通に認知症じゃない感じと同じように出すようにしております」

D医師:「痛みでどんな生活が障害されているのかっていうことを聞き出すようにしています。どれだけ支障があるかというところをお話するようにしています」

E医師:「痛い場所は頭痛でよろしいですか?中枢性の疼痛という可能性もありますが」

A医師:「部位としては後頭部の後ろあたりという訴えがあります。この方、右眼瞼下垂があって。脳外科の先生に確認したところ、特に痛み止めで対応するしかないという返答だけは聞いています。バイタルも血圧は120台と正常です」

F医師:「SG顆粒を使うことがあります。普通のカロナールとかロキソニンなんかよりは長持ちして効くんじゃないかなという経験があります。あとは抗不安薬とか、場合によっては抗うつ薬が必要になったりすることもありますね」

G医師:「頭痛だけじゃなくて他の要素も見ながら、痛みだけでなく不快感とか不安だったりとか、他のものが痛いという表現になっているのかどうか。痛くない時間は何をしていて、痛みの訴えが出ない状況になっているのか、が気になります」

H医師:「漢方の五苓散というのを使うことがあります。漢方って聞くとそれだけで効くんじゃないかって期待を持つ人もいて、それだけでも効果が期待できるので使ってもいいかもしれません」

I医師:「ちょっと一つ聞きたいんですけども、カロナールとか飲んだ時は、本人としては効いている印象はあるんですか?」

A医師:「正直、増量も試みて、元々1800-1900mgくらいだったのを3000mgくらいにしたんですけど、あまり効果はなかったというのが2-3日の内服での反応でした」

J医師:「私の経験では、カロナールを2000mgくらいを分4で飲んでいて、不安が強い施設のおばあちゃんで、お薬をスタッフにも常に求めて困っていた人がいたんです。痛み止めを増量してもあまり効果が変わらなかった時に、逆に1回あたりの量を減らして200mg×1回にしたんです」

A医師:「それでどうなりました?」

J医師:「本人は薬が欲しい時にもらえるし、こちらとしても好きなだけ飲んでいいよという感じでやると、逆に落ち着いて。1回あたりの量は減っているんだけど効くという感覚は持っているので、それで施設としても落ち着きましたし、実際の1日の投与量も減ったんです」

K医師:「不定愁訴の多い方を診ていると、慣れちゃって、自分の中でこう変にバイアスかけちゃうことがあると思うんですよね。でも、できるだけ客観的に、フレッシュな目で毎回見ることは大事なんじゃないかなと感じています。そうしないと本当に大事な疾患を見落とす危険もあるので怖いと思います」

L医師:「痛みのアセスメントって基本的にはトータルペインの考え方で行きますので、もちろん痛みですから、まず痛み止めをある程度まで上げていって。その後で他のことを考えなくちゃいけないのかなと思います。不安もあると思いますし、睡眠障害とか、認知症なのでそういう幻覚、痛み幻覚みたいなものもあるのかもしれない。90歳の女性で聞いてると、多分なんか症状のことばかり考えてしまうとか、眠れないとか、多分そこら辺から来ているのかなと思います」

M医師:「大事なことは、この思考プロセスをちゃんと共有しておくことだと思います。そういったプロセスもご家族に見えるような形で伝えていくと、少し関係が構築されていったりとかもするのかなと思います」

おわりに

様々な視点からの意見が出ましたが、特に重要なのは以下の点です:

  • 痛みへの多角的なアプローチ(薬物療法、心理面、生活面)

  • 家族との治療プロセスの共有

  • 先入観にとらわれない、フレッシュな視点での評価

本日の議論が、医療介護の現場での一助となれば幸いです。
やまとドクターサポートの原田でした