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川魚の好む環境を考えてみる

川に棲んでいる魚のうち、日本人が最も身近に感じる魚はメダカだと思います。童謡「めだかの学校」で子供の頃から多くの人が知っている魚です。食べる魚の場合は、アユやニジマス,イワナ,サケ,ウナギなどでしょうか。ウナギを除けば、小学校や中学校の林間学校で川に入って手掴みして焼いてもらって食べた記憶がある人も多いのではないでしょうか。

「川の魚」と聞いて、多くの方がイメージするものは、おそらくこの程度だと思うのですが、川にはもっともっと多様な魚が棲んでいて、昔の人はもっといろいろな魚を食べていました。今よりも川に近い暮らしをしていました。

近頃、川で漁をしている人を見たり、川魚の料理を出してくれる人や店を見かけることは少なくなりました。川を眺めれば釣りを楽しんでいる人がいるくらいで、川で遊ぶ子供たちもめっきり少なくなりました。ほとんどの子供たちは親から「川に近づくな」と言われているはずです。大人たちにとって、川は危険な場所。子供には近づいてほしくない場所なのです。川が危険だと思うのは川のことを知らないからです。川から離れた暮らしをするようになって、川は未知の場所になってしまったのです。川で遊んだことのない大人は、親になった時、子供に「川に近づくな」と教えます。その繰り返しが川から人をますます遠ざけてしまいます。

人の近づかない川は荒れて、昔から続いてきた文化が消え、環境が変わり、濁った臭い水の流れる川になって行きます。川を生き生きとした状態に保つためには、人が川に近づきやすくする必要があると思います。川を身近に感じるようになるためには、川との安全な付き合い方を学ぶ必要があります。

魚の種類によって適切な飼い方は変わってくるのですが、はじめて川の魚を飼おうとしている人が情報を集める足掛かりにできるようにまとめてみようと思います。

AとBは、どちらが先というものではなく、両方の段取りを立てながら一緒に進めていくような感じです。

A. 川で魚を採る

まず行く川を決めます(初心者なら、浅くて流れの遅い小さな川や水路がいい)。そして実際に川に行って、そこに棲んでいる魚を採ってきます(「実際に川に行く」ことが、あとで飼育環境をつくる時のヒントになる)。川の規模に関わらず、川に近づく時の安全管理はしっかりしましょう。ライフジャケットや帽子を身につけるのが基本です。
小さめの魚であれば、タモ網で採ることができます。水草の密集しているところにタモ網をつっこみ、ガサガサします。川の魚は冬でも採ることができるので季節を問いません。ただ、保護されている場所で採取したり、希少種にリストアップされている魚を採取するのはやめましょう。また、地域によっては遊魚料の支払いを求められることがあります。
採った魚を弱らせずに持ち帰るために、エアポンプやクーラーボックスを使うなど、工夫が必要な場合もあります。

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B. 飼育環境をつくる

必要なもの
・飼育ケース(水槽)
・底砂
・水
・エアレーション(フィルターと一体化しているものも)
・フィルター
・水草
・照明器具
・えさ

魚を採る前の段階で、川の環境を観察し、川底の状態,水温,流速などを調べておき、それを再現できるような資材を調達しておきます。水道水を使う場合は、飼育ケースに入れる数日前に汲み置きしておくか、カルキ抜きを入れて水質を調整しておくことも必要になります。
飼育ケースもフィルター・エアレーションも様々な種類がありますが、対象魚の棲息環境や飼育する目的によって適切な資材を選びます。それぞれの種類にも一長一短あり、どれが良くてどれが悪いというものではありません。詳しく知りたい方は文末に紹介しているGakkenの本をご覧ください。(ちなみに、例として私が使っている資材のリンクを貼っておくので、ご参考まで。)

魚の大きさ,尾数によって、飼育ケースのサイズの目安があります。一般的に、「魚の大きさ1cmに対して水1ℓ」と言われています。私は置く場所の都合でこのサイズの水槽になりましたが、今はカワムツ幼魚(暫定的な同定)約10匹,ドジョウ1匹を飼育しています。18ℓ水槽にして、飼育尾数はやや多めです。
また、私は水道水ではなく井戸水を使っていますが、井戸水は稀に酸素が少ないことがあり、水換えする数日前に、魚を入れない状態でエアポンプを回し、エアレーションしておくようにしています。そのため、スペアの飼育ケースがあるととても便利です。地下水を汲み上げる場所と同じ地域に棲息する魚にとって、水道水よりも地下水の方がより馴染むのではないかと思っています。水温は一年中ほぼ一定ですし、水道料金がかからないのもありがたい点です。

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フィルターやエアレーションは、飼育ケースのサイズによって適正サイズがあり、パッケージに書かれています。

私たち人間が安全に暮らすために居住スペースを必要とするように、魚にとっても身を隠すものが必要です。水草や石、流木などがそれです。採取した魚が棲息していた場所に生えている水草を植え付けることができれば一番確実かと思います。私が魚を採取した川は一級河川であり、流速が早いせいか、水草の種類が多くありませんでした。礫の川底から剥がされたヨシの根っこの塊を拾ってきて水槽に入れています。

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水草は光合成をして生長するので、照明器具が必要です。これは、魚の様子や状態がよく見えるようにもしてくれます。

えさは、採取した魚を図鑑で調べ、その魚に適したエサを与えます。生きているエサ,ペレット状のエサ,フレーク状のエサ、またペレットの中に浮上性もの,沈下性のものがある、などいろいろなタイプがあります。私は沈下性のペレットえさを使っていますが、カワムツの幼魚には大きすぎるようで、乳鉢で細かくして与えています。

つづいて、飼育する時にあるとより便利なもののうち、私が使っているものを紹介します。

飼育していて、あると便利だと感じて使っているもの
・フードタイマー
・照明器具タイマー
・生物濾過バクテリア
・水換えホース

数日間家を開ける時に便利なのがフードタイマーです。いろいろなメーカーから様々な形のものが出ていますが、仕組みはだいたい同じようです。私が購入したものは12時間毎,24時間毎,ボタンを押した時,の3パターンでエサを与えられるようになっています。
外出する時はフードタイマーを使うにしても、在宅時は自分でエサを与え、魚たちの様子や状態を確認するようにしています。

午前8時に点灯し、午後6時に消灯するようにセットして使っています。不規則な点灯・消灯は、魚の生活リズムを狂わせてしまいます。シンプルで使いやすい製品ですが、停電になると電源がOFFになってしまい、手動でONにし、再設定しなければならない点で注意が必要です。

水換えの度にキャップ2杯程度加えています。使い続けることで、生物濾過を担ってくれるバクテリアを底砂の中に定着させることができます。

水換えする際、飼育ケースはそのままに、水だけ取り出すことができます。吸い込み口に網がついているので、細かい砂でなければ吸い込んでしまうことはありません。底砂をかき回しながら、細かいゴミを吸い取ってきれいにすることもできます。

魚を飼育することが暮らしにもたらす効果

魚を飼育することでもたらされる効果がいくつかあります。私は水槽の中で泳いでいる魚の姿を見つめるだけで落ち着きますし、時々思索のために水槽を眺めることがあります。
魚を眺めることでリラックス効果をつくりだすアクアリウムセラピーというものもあるそうです。泳ぐ魚を見つめながら心を落ち着かせると同時に、地域の川にどんな魚が棲息しているのか、川への関心をより多くの方に持っていただけると嬉しいです。

魚を飼育する時のマナーについて

一度飼育下においた魚を再び川に放すのはやめましょう。採取した川と同じであっても、飼育の過程で発生した病気や病原菌を川に撒き散らし、生態系に悪影響を与える危険性があると言われています。

参考図書

川魚飼育の入門書として。入門書と書きながら、幅広い内容が易しくまとめられています。30種以上の種別「川魚の飼育ガイド」付き

川魚の種類を調べるために。写真から引き出し線で魚の特徴がわかりやすくまとめられています。


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