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第4話: 「親の不安、先生の思い」

第4話: 「親の不安、先生の思い」


朝の保育園、田中真紀の迷い

いつもは朝の登園に協力的な田中一真だったが、この日は仕事で出張のため、田中真紀が優花を連れて登園していた。保育園の玄関に立つ真紀の顔はどこか不安げだ。


真紀:

「おはようございます、さくら先生。最近、優花が家で友達のことを話さなくて…ちょっと心配なんです。」


さくら:

「おはようございます。優花ちゃん、園ではとても楽しそうに過ごしていますよ。お友達ともよく遊んでいます。ご家庭での様子を教えていただけると、私もアプローチを考えやすいです。」


真紀は少し安心した様子を見せながらも、どこか言葉を選びながら話す。


真紀:

「実は、夫の仕事が忙しくて、最近は私一人で育児をすることが多くて…。そのせいで優花に寂しい思いをさせているんじゃないかって思うんです。」


さくら:

「お母さん、よく頑張っていますよ。お子さんにとって、お母さんの存在はとても大きいです。もし優花ちゃんの気持ちが気になるようでしたら、一緒にお話ししましょうか?」


午前中、子どもたちの観察

その日の午前中、さくらは優花の様子を注意深く見ていた。優花は絵本の時間に隣の席の友達に話しかけたり、外遊びでかけっこを楽しんだりしていたが、時折、遠くを見つめるような表情を見せていた。


さくら:

(真紀さんが言っていた「寂しさ」が、少し現れているのかもしれない。)


さくらは、優花が描いた絵に注目した。優花は家族の絵を描いていたが、お父さんとお母さんの間にぽつんと自分を描いていた。


さくら:

「優花ちゃん、この絵、とっても素敵だね。ここにいる優花ちゃん、何をしているの?」


優花:

「お父さんもお母さんもお仕事してるから、私ひとりで遊んでるの。」


その言葉に、さくらは胸が締め付けられる思いがした。


昼休みの職員室での相談

さくらは昼休みに三浦先輩に相談した。


さくら:

「田中さんのお母さん、最近優花ちゃんのことで悩んでいるみたいなんです。優花ちゃんも少し寂しそうで…。どうサポートすればいいのか、迷っています。」


三浦:

「共働きの家庭ではよくあることよね。でも、その分、保育園が子どもの『居場所』になることが大切なの。お母さんが安心できるように、園での優花ちゃんの様子をもっと伝えてみたら?」


夕方の保護者とのやり取り

お迎えの時間、真紀が来たタイミングで、さくらはその日の優花の様子を丁寧に伝えた。


さくら:

「今日は優花ちゃん、お友達とたくさん遊んでいましたよ。絵本を読んだり、かけっこをしたり、とても元気でした。」


真紀:

「そうなんですね…。ありがとうございます。家ではあまり話してくれないので、園での様子が聞けると安心します。」


さくら:

「お家で話さなくても、優花ちゃんが園でしっかり楽しんでいる様子は、私たちが見ています。お母さんも優花ちゃんに寄り添いながら、少しずつ気持ちを共有していけると思いますよ。」


真紀の顔には少し明るさが戻っていた。


その夜、田中家の変化

真紀は家で優花と一緒に過ごす時間を少し増やすことに決めた。仕事の後に簡単なお絵かきをしたり、寝る前に優花が好きな絵本を読む時間を作った。


真紀:

「優花、今日はどんなことをしたの?」


優花:

「お外でお友達とかけっこしたよ!さくら先生も応援してくれたの!」


真紀はその言葉に少し安心し、「保育園に通わせてよかった」と感じた。


その夜、さくらの日記より

「親子の絆を深めるお手伝いができたら、それは保育士としての喜び。優花ちゃんが安心して保育園を楽しめるよう、これからも見守り続けたい。」


次回予告: 「保育士の壁」


保育園の忙しさが増す中、さくらは多忙な毎日に悩むようになる。一方、田中家では新たな試練が訪れる。親と保育士、それぞれが抱える壁が描かれる回です。

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