第一話:「悪知恵のベンティ」
第一話:「悪知恵のベンティ」
小さな港町ロサリオは、どこか薄暗い空気が漂う場所だった。表向きは穏やかで、釣り人たちが網を編み直し、商人が市場で声を張り上げている。しかし、夜になると、この町は全く別の顔を見せる。港の奥にある酒場「ランタン」に集うのは、裏社会の人間ばかりだった。
その酒場の片隅に、いつも同じ席に座る男がいた。名前はベンティ。年齢は30代半ば、細身で、鼻先が鋭く尖った顔立ちをしている。ベンティはこの町で“悪知恵”と呼ばれるほどの策略家として知られていた。誰もが