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映画レビュー「ぼくは君たちを憎まないことにした」

またまたフランス映画。
正確にはドイツ・フランス・ベルギー合作だが、
舞台がパリなのでフランス映画の立ち位置で問題ないだろう。

原題は「Vous n’aurez pas ma haine」。
フランス語はメルシーしか分からないが、忠実な日本語訳のタイトル。
「愛と青春の旅立ち」とは違うわけね。

本作は2015年のパリ同時多発テロ事件で最愛の妻を失ったジャーナリストの
事件発生から2週間を描いている。
ほぼ実話だという。
僕は知らなかったが、世界的なベストセラー。

この手の事件は世界中で起きているが、本当に胸が苦しくなる。
明らかにフィクションであれば冷静にみられるが、
実話となると自分をダブらせてみてしまう。

僕が同じ立場だったら、どうなるだろう。
幼い子供の残し、予定外に最愛の相手を失ったら、
自分自身が持ち堪えられるだろうか。
感情を抑え、周りと接せることができるだろうか。
何より母親を求める子供にどう向き合えばいいだろうか。
そんなことを考えてしまう。

本作はタイトル通りの内容。
妻を亡くした主役が犯人であるテロリストを憎まない姿が描かれる。
しかし、それは本心であって本心ではない。
あえてその方向に自分を向かせることで、
怒りや悲しみを抑えようしているに過ぎない。

実際に頭で理解できても、感情や気持ちのコントロールはできない。
きっと僕も同じ。
一人きりは耐え切れない。
アルコール依存症になる可能性もある。
多分、ギリギリそこまではならないと思うけど、分からない。

今、世界で起きている事件や紛争には同じような被害者がいる。
僕らは表面的なニュースでしか事実を知ることができない。
一人一人の置かれた状況はほぼ知らない。

その方が気持ちは楽だが、そのままでは一向に事件や紛争は終わらない。
残された子供の顔を想像して爆弾を落とすことができるか。
違う角度の想像力をもっと働かせてほしい。

子役のゾーエ・イオリオはまだ2歳くらい。
どこまでが演技か分からないくらい素晴らしい。
その分、悲しさは倍増する。

そして、主役のピエール・ドゥラドンシャン。
どっかで見たことのある俳優と思い調べたら、
「私はモーリーン・カーニー 正義を殺すのは誰?」に出演していた。
やっぱりフランス映画って出てる俳優は限定的?
そんなことも思ってしまった(笑)。

どんな辛いことが起きても僕らは前を向いて歩かなきゃいけない。
それも教えてくれる作品だった。

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