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映画レビュー「碁盤斬り」

いい意味で白石監督らしくない作品。
僕は大好きだが白石作品はハードなイメージが付きまとう。
「日本で一番悪い奴ら」にしても「孤狼の血」にしても、
その続編も「凪待ち」「ひとよ」「死刑にいたる病」もそう。

ほぼ作品は観ているが、大体は登場人物が壊れている。
まともな主役は少ない。
それを得意とする監督と期待していたし、そんな作品が好きだった。
そんな作品に惹かれることは全うじゃない(笑)。

しかし、本作の登場人物は壊れていない。
破綻していない主役は初めて。
部分的に切り取れば全うじゃない面はみられるが、あくまでも感情的な一部。
20年ほど前の山田洋次が描く歴史ものに似ている。

それがいい意味で白石監督らしくない。
これが悪い意味でらしくなかったら、厳しい。
平凡な時代劇になってしまった。
白石監督は次のステージに向かっているのかな。

囲碁を中心に殺陣を描く。
静かに打つ碁がアクション映画。

囲碁を知らないのを後悔した。
何度も誘われたが、やらず仕舞い。
少しでも理解していたら、もっと楽しめた。

戦国時代のドラマでは武将が囲碁を打つシーンをよく目にする。
武士が戦略を描く上で重要。
そんな存在と思っていた。

ところが江戸時代はあちこちに囲碁場があり、武士も商人も娯楽として楽しむ。
娯楽のたまり場とは知らなかった。
映画では大きな意味を持つ。
浪人役の草彅剛が囲碁を通して実直な人格をみせ、
また武士としてのプライドを保つ。

囲碁に向き合う緊張感が心地いい。
白石作品であれば血みどろの格闘を期待するが、そんな場面はない。
いくら許せない人物が登場しても不用意に刀を振り回すことはない。

いい意味で裏切る。
白石ファンの評価は分かれるだろう。
物足りなさを感じるかもしれない。
そんな作品だ。

僕はそれでいいと思う。
派手な血闘シーンがなくても十分に映画を楽しむことができた。
草彅剛のちょんまげ姿は徳川慶喜をイメージさせるが悪くはない。
立ち振舞いはストイックに映る。

「青春18×2 君へと続く道」に続く清原果耶も魅力的。
彼女はこんな役が似合うね。
キョンキョンは年齢を重ねたが、いい味を出す。

恐れることなく映画に向き合ってほしい作品ですね。

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