映画レビュー「RHEINGOLD ラインゴールド」
本作はドイツ・オランダ・モロッコ・メキシコ合作。
お互いどんな接点があるんだろうと不思議に思ってしまう。
映画の舞台となるドイツ、オランダは理解できるが、
メキシコは一体どんな絡み方か。
どうでもいいことを考えてしまう。
映画が始まり15分ほど経過した時、重厚な社会派ドラマと錯覚した。
イスラム革命により迫害された音楽家家族が痛々しく映し出される。
紛争に巻き込まれた最中に子供を一人で出産するシーンはまさにそう。
観る側も辛くなる。
その後ドイツに亡命し、新たな生活がスタートするがそこから物語は一変する。
国家間の紛争を描く世界から暴力や犯罪を中心としたアウトローを描く世界へと移る。
独特のリズムで展開していくため、いつの間にか社会性は消え、
一人の若者の生き方にフォーカスされる。
その若者が主人公のカターことジワ・ハジャビ。
実在するラッパーで本作は彼の破天荒な半生を描いたもの。
「事実は小説よりも奇なり」とはよく言ったものだ。
描かれる世界がフィクションでないのが恐ろしい。
100%忠実に映画化しているとは思わないが、その行動は一般的な想像力をはるかに超える。
いや、過度な想像力をはるかに超える。
実際にカター本人が本作のセリフ監修をしているのも驚き。
僕は9,000km先の世界を何も知らない。
小さくはあるが世界の広さを改めて知ることになる。
ただそれは知っていればいいこと。
現実問題としてその世界には足を踏み入れたくないし、カターには関わりたくもない。
遠い国の話で留めておきたい。
まあ、それだけ過激でヤバい。
白石和彌監督のヤクザの世界に近い。
ただいえるのは蛙の子は蛙。
音楽家の父親の息子の音楽的才能は高い。
センスや能力は努力だけで身につくものではない。
反発しあう親子でも肝心な面は繋がっているし、影響力も持つ。
そのあたりの構成は絶妙。
ヒップホップのリズムに乗るように流れ、勝手に吸い込まれる。
なんとも不思議な作品。
それでもかなり面白い映画。
まだまだ知らない世界は多いな・・・。
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