映画レビュー「流麻溝十五号」
僕らは近隣国の歴史を知らない。
韓国については精力的に制作される映画を通して学ぶ点はあるが、
台湾は知らないことが多い。
蒋介石が中国共産党との争い敗れ、
台湾で政府を樹立したという教科書に載る当たり前のことくらい。
何となく平和なんじゃないの?という短絡的な発想自体、無知すぎる。
やはり映画を通して歴史を学ぶことは重要。
自ら突っ込んで見に行かないと知らないままで終わってしまう。
本作の舞台は政治的弾圧が続く1953年の台湾。
台湾国民政府による恐怖政治下で戒厳令が敷かれていた「白色テロ」時代。
情けないが「白色テロ」なんて言葉も知らなかった。
自由な思想は認められず、罪を課せられた者が思想改造と教育のために強制的に島に送り込まれた。
その島は日本統治時代は火焼島と呼ばれ、戦後に緑島に改名された。
そんな事実も全く知らず・・・。
う~む、困ったものですね。
本作では女性犯罪者ばかりが収監された施設での日常を描く。
1953年の台湾は日本の戦時中をイメージさせる。
政治的弾圧が当然のように行われ、反発する者や認めない者に対しては暴力が横行。
犠牲になるのは高校生の女性。
思想らしい思想があるわけではなく、言われるがまま描いた絵が弾圧の対象になってしまう。
本人の言い分が認められることはない。
とても恐ろしい世界。
蒋介石が目指す世界と異なれば、ことごとく叩かれる。
国のリーダーは一歩間違えれば危うい存在。
それは現在でも同じ。
自分勝手な正論が多くの人を傷つける。
描かれる世界を理解しようとするなら時代背景を予習した方がいい。
字幕はカッコ書きとそうでないものが表示。
最初は何のことか理解できなかったが台湾語と北京語の違い。
そこに日本語が加わる。
主人公の女子高生、正義感の強い看護婦らが状況に応じて言葉を使い分ける。
どの言葉を重きに置くかで立場が分かるわけだが、そこに行きつくには時間を要した。
初めから理解していたら、もっと深く観ることができた。
気軽な気持ちで鑑賞したことをちょっと後悔。
本作は実話をベースに制作された。
タイトルでもある「流麻溝十五号」は収容された場所の住所だという。
台湾人はこれをどこまで知っているのか。
また、国内ではどれだけ話題になった作品なのか。
日本での公開も意味があることなのだろう。
面白い作品とは言い難いが観る価値はあるだろう。