拗らせてしまった友
幼稚園から一緒に遊んでいる友がいる。
彼は幼少期「チビ」と言われ続けてきたのだが、高校で成長期を迎えて180センチ以上の身長を手に入れてしまった。
中学の時はバットに振り回されていた野球少年が、今では僕よりも重いバットを振り回している。人間の成長は早いものだと、同級生の僕が思う。
恋愛に関してはからっきしダメだ。
「見合う人がいないんだよ」と彼はいつも見栄を張っている。
“彼女”の理想が高くなりすぎて、妥協することができなくなってしまっているのだ。
何とも不憫なやつだ。
せっかく男性にとってモテの基準値の180を超えているというのに、女の子をエスコートできない。
せっかく大手企業に勤めている身分だというのに、女心が読み取れない。
宝の持ち腐れである。
しかし、そんな彼は友だち思いのいわゆる“良い奴”なのだ。
かまってちゃんを発揮してすぐに連絡をしてくる(この熱意が女性に向けばいいのだが)が、案外僕は彼のそんなところが好きである。
反対に連絡がこないと少し寂しいくらいだ。
もう24年くらいの付き合いになる。良くもまあ飽きずに絡んでいられるよなと感心する一方だ。
かまってちゃんに誘われて、僕は今日も嬉しそうに外出の支度を始めるのだ。
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