#12 15歳間近で初めてのてんかん。その原因は?
今日は、我が家の愛犬・山さんの月命日。
お空に旅立っていってから5か月が過ぎました。
今朝は大好物のりんごと骨の形のクッキーをお供えしましたよ。
ペットホテルで他のワンちゃんと遊ぶのが大好きだったので、軽くなった身体でまたはしゃいでいるといいなぁと思います。
健康優良児で10歳を超えても、特に持病もなかった山さん。
あと2か月で15歳になるねーという2020年4月、初めてのてんかん発作を起こしました。
朝6時頃、私たちが寝ているベッドの足元で。
犬の雑誌のライターをしていた時期があったため、犬の病気に関するある程度の知識はあり、「これはおそらく、てんかんだな」とわかりましたが、本当にびっくりした!
初めて見て、動揺しない人はいないと思います。
どうなっちゃうんだろうって。
「てんかん」という病気は知っていても、具体的な対処法までは知らなかったので、大きな声で呼んだり、抱き上げて揺すったり、夫と2人で本来ならしてはいけないようなことを、いろいろしちゃいました…汗。
発作はさほど長くは続かず、意識が戻った後は家中をウロウロ徘徊。
この時点で、かかりつけの動物病院の夜間救急窓口に電話をしました。
当直の先生に様子を伝えると、いまはまだ脳が興奮状態にあるけれど、数分~数十分で徘徊がおさまってくると思うので、その場合は、すぐに病院に連れてくる必要はなく、診療時間内に診せに来てくださいとの指示。
その通り、落ち着いたので、朝、診療が始まって早々に連れていきました。
てんかんには、脳にはっきりとした原因が認められないのに周期的にてんかん発作が起きる「特発性てんかん」というものもあります。
ですが、高齢になって初めててんかんを起こした場合は、脳腫瘍などの病気によって引き起こされることも多く、山さんの年齢を考えるとその可能性もあるとのことでした。
でも、それを確定するためには、全身麻酔でのMRI検査などが必要で、高齢犬にとってはリスクがとても高い‥。
仮に脳腫瘍が見つかったとして、もうすぐ15歳になろうとしている山さんに「手術する」とか「負担の大きい薬物治療をする」といった選択肢はない…というのが、夫との共通した考えだったので、検査はしないでてんかんのみに対処していくという決断に。
てんかんの治療とは、基本的には抗てんかん薬を使うこと。
薬の目的はてんかんを治すのではなく、てんかん発作を抑えること。
あまり頻繁に起こすようだったら、飲ませ続けることが必要になるけれど、まだ1回起こしただけなので、脳の状態を落ち着かせるために3日間だけ服用し、その後は様子をみましょうということになりました。
その後、しばらくは発作を起こすことがなく、「このままなければ…」と思っていたけれど、5か月後の9月に2回目の発作が起きました。
そしてその後、ほぼ月1ペースで起こすようになってしまったので、抗てんかん薬を毎日飲ませることが必要だということになりました。
最初に使ったのはイーケプラ(有効成分:レベチラセタム)という薬。これまでにも発作を起こした時に頓服であげていた薬です。
通常、抗てんかん薬はある程度の期間飲ませて血中濃度が安定することで作用しますが、イーケプラは血中濃度は関係なく効き目が早いというのがメリット。そして副作用も少ないとされています。
デメリットは、数ヶ月で耐性がついて効きが悪くなる可能性があること。
あとは、値段が高いこと。
(アニコムのペット保険に入っていたことが、15歳にして役立ちました!)
なので、イーケプラをしばらく飲ませて、まずはこれ以上発作が頻発しない状態にしたら、その後、他の血中濃度を高めるタイプの薬も併せて飲ませ、血中濃度が安定した頃にイーケプラは少しずつ止めていく…という計画になりました。
2か月後から追加で使い始めたのが、コンセーブ(有効成分:ゾニサミド)という薬。「ゾニサミド」は日本で作られた抗てんかん薬で、最近では、第1選択薬としてよく使用されています。
コンセーブをごく少量から始めたらあまり血中濃度が上がらなかったので、量を増やすために、有効成分は同じ「ゾニサミド」ではあるけれど人間用に発売されているエクセグランという薬を山さんの体重に合わせて割って使用することに。その後、血中濃度が安定したので、エクセグランを使い続けることになりました。
抗てんかん薬を飲むようになって、2か月くらい発作が起きないこともあったけれど、だいたい月1くらいでは起きてしまっていたので、坐薬のダイアップ錠(有効成分:ジアゼバム)を常備しておいて、発作が起きた時に入れていました。
そして、最初に先生から言われていた脳腫瘍の可能性。
もちろん、そうであってほしくないと思っていたし、2か月発作が起こらなかった時には「どうぞこのまま起こらないで」と願ったけれど、発作が止まることはなかったし、脳腫瘍に特徴的だとされる症状が少しずつ現われてきていて、「あぁ、やっぱりそうなのかな…」と。
ボストンテリアなどの短頭種は脳腫瘍の好発犬種でもあるので。
犬の脳腫瘍の主な症状
※発生部位や腫瘍の大きさによりさまざまな症状がみられます。
・元気がない
・物にぶつかる
・眼振(眼球が左右または上下に揺れる)
・ふらつきが多くなるといった運動機能の低下や運動失調
・斜頸(頭や首を傾ける)や旋回運動
・性格が変わる(怖がる、噛みつく、吠えるなど)
・痙攣発作やてんかん発作を繰り返す
・認知症のような症状がみられる
・視覚や聴覚の異常
・麻痺が出ている
うちの山さんは、このうち、眼振、斜頸、麻痺はありませんでしたが、それ以外はほぼ出ていました(視覚・聴覚の異常ははっきりはわからず)。
旋回は特に激しかったかな。
「性格が変わる」ということに関しては、初期の頃にすごく怒りっぽくなって、ずっと吠えていた時期があったけれど、それは短期間で収まり、その後は穏やかになり、だんだんとボーッとすることが増えてきました。
壁などに頭を押し付けてじっとしている「ヘッドプレス」と呼ばれる動作もよくしていました。
先生からは「頭の筋肉が薄くなり、頭のてっぺんの骨が出っ張ったようになるのが特徴」と聞いていたけれど、それもその通りでした。
そういった症状が次々と出てきて、その都度落ち込みはしたものの、不思議と激しく動揺するとか絶望的になるということはありませんでした。
そうであっても、そうでなくても、私がやるべきことは一緒なわけで。
なるべく発作が起こらないように、日々観察しながら管理してあげること。
発作を起こしたら、危険な状態にならないように見守りながら適切な対処をしてあげること。
新たに心配な症状が出てきたら、先生の指示を仰いで、できる限りつらさを抑えてあげること。
そのために、山さんの様子をよく動画に撮って、病院に行くたび見せていました。
口で伝えるだけより、動画が判断の助けになることもあるので、心配な症状はとりあえず撮っておくといいかなと思います。
私は家で仕事をする時間が長いのでそれがやりやすかったけれど、お仕事でお留守番の時間が長い場合は、ペットカメラを活用されるのもいいかもしれません。
さらに、抗てんかん薬に加えて、東洋医学(鍼灸と漢方薬)でも対処をしていました。
鍼灸で、頭だけがのぼせないように、全身に気を巡らせてあげるように。
あと、五苓散という漢方薬を処方してもらっていました。
五苓散は人間の天気痛や気象病と呼ばれる、気圧の変化による頭痛、めまいなどに効果的だとされている漢方薬です。
実は私自身、昔からの天気痛持ちで(そんな名前がなかった頃から)、梅雨や台風の季節にはかかりつけの漢方医院でこの五苓散を処方してもらって常備しています。
天気痛は気圧が低下して、脳が浮腫むことによって頭痛が起こるため、浮腫を改善する作用のある五苓散が効くのだそうです。
てんかんも気圧の変化によって起こりやすく、気圧による脳の影響を和らげて、てんかんが起きるのを予防するということなのかなと思います。
山さんがお世話になっていた東洋医学の先生に五苓散をすすめられた時、私自身がその効果を実感していたので、山さんにもきっといいのではないかと思うことができました。
粉末と錠剤を選べたので、錠剤をドッグフードに混ぜてあげていました。
気圧が急降下する時には、朝晩2回のところを昼にもあげるなど量を増やしていいとのことだったので、「頭痛ーる」のアプリで気圧の変動を毎日チェックして調整していました!
西洋薬との併用なので、漢方薬がどれほど効いていたか検証することはできませんが、てんかん予防に効果を発揮していたと信じたいと思っています。
ハーブにも、てんかんに効果があると言われているものがあります。
スカルキャップ、バレリアンなどがそれにあたり、ペット用のチンキタイプのサプリメントとして販売されています。
2回目のてんかんを起こしてしまった時に私も買ってみましたが、その後、頻発するようになり、抗てんかん薬を使うことになったので、ほんの短期間使用してみただけで効果のほどはわかりません。
発作頻度のあまり多くない「突発性てんかん」のワンちゃんには、役立つことがあるのかもしれません。
てんかん発作が起きるたびに脳が損傷を受け、さらに発作を起こしやすい状態になってしまう可能性があるともいわれています。
そうなると、発作の頻度と重症度が増し、薬が効かず、複数の薬を使わないといけないなど、治療が難しくなってしまうことも。
私もなるべくナチュラルなもので対処できたらと思うタイプですが、てんかん治療に関しては、適切なタイミングでの薬物治療が最小限の量の薬で効果を出すために重要なのだろう。
自分の経験を踏まえ、そう思っています。
始めてのてんかん発作がもう少し若い時、たとえば10歳の時だったら、どうしていたかな?と考えたりします。検査をしていたのかな…。
まぁ、たらればの話なので、考えてもしょうがないけれど。
対処法のすべてが正解だったかはわからないけれど、西洋医学と東洋医学の信頼できる2人の先生に相談しながら発作をコントロールすることで、旅立つ直前までお散歩が楽しめる生活を送ることができました。
家の中ではほぼ旋回状態でくるくる回っているのに、外に出ると、スイッチが入ったようにシャキッとして、まっすぐ前を見つめて歩いていました。
本当に不思議。
足に触れる地面の感触、風、植物のニオイ、音、光…。
いろいろなものが脳にいい影響を与えてくれたのだと思います。
最後に思い出の1枚。
16 歳の誕生日に撮った1枚。
病気のせいで気性が荒くなった訳ではなく、若い頃から私が真正面から写真を撮ろうとするといつも怒って、だいたい機嫌が悪い顔しか撮れず。
それは、16歳になっても変わらず…。
だから、気づかれないように撮った写真のほうが可愛いのです。笑。
「犬との暮らし 16年の記録」
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