#18 看取りの心構えと言ってもなかなか難しいけれど
まだ山さんが生きている時、でもだいぶしんどそうな時、「犬の看取り」について書かれた本が目に入っても手に取って読むのを避けていました。
『愛犬との幸せなさいごのために』
こちらは、6頭の愛犬を看取った著者が、お別れのときに後悔しない知識と心構えを綴った1冊。
この本の作者の俵森朋子さんのレシピ本『7歳からの老犬ごはんの教科書』を愛読していたので、この本の存在も知っていて、でもなんか読めなくて、山さんが旅立った後に買って読みました。
「あの時の対応は正しかったのかな?」と答え合わせをするような感じで。
読んでみて、「生きているうちに読んでおけばよかった」と。
そりゃ、そうだよね。でも読めなかったから…。
こちらは旅立った後に知り、いまもよく読んでいる「獣医師シワ男」さんの文章。
私はInstagramのほうが読みやすいので、そちらを愛読しています。
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獣医師さんですが、具体的な治療のことというより考え方や気持ちのことがたくさん書いてあり、「そうだよね。そうだよね…」と思いながら、読んでいます。
老犬に限らず、犬や猫と暮らしているすべての人に役立つんじゃないかなと思うので、ぜひ。
正解はないし、動物病院に行っても心構えのことまで教えてはくれないし、こういう犬の看取りをたくさん経験した人の文章を事前に読んでおくことは後悔しない最期を過ごすためには、いいんじゃないかなーと。
それでも、100%後悔しないってことはないと思うけれど。
後悔をなるべく少なくするためにはいいんじゃないかなと。
でも、飼い始めの若い時にはたぶん読もうという気にならないし、10歳を超えてくるとリアルに感じ過ぎて読めなくて、なかなか難しいのですけどね。
うちの山さんの場合は、病院ではなく、自宅で夫と2人で看取ることができました。
いまからちょうど1年前。
クリスマスの頃からそれまで自力でもりもり食べていたご飯が食べられなくなり、足も立たなくなって。
最後に動物病院に行ったのは、12月30日。
肝臓の数値がすごく悪くなって黄疸も起こしていて、もっと若かったら「入院して点滴しましょう」とかそういうことになったんだと思うけれど、先生もそれを勧めることはなく、私たちもそれを望むことはなく、多くは語らないけれど、お互いに納得した感じで連れて帰ってきました。
私は見てなくて、夫から聞くところによると、いつも淡々と冷静に診療してくれていた主治医の先生が山さんを見つめて頭をそっと撫でていたって。
先生なりに、最後の挨拶をしてくれていたんだろうなと思います。
リビングに寝ている山さんは動けなくても口は達者で、家事をしようと見えないところに行くと声をあげて訴えるので、それを理由に大掃除も完全にさぼり、とにかくずーっとそばにいました。
いつものお正月以上に食料を買い込み、家から出ないどころかリビングからも出ない生活を。
と言っても、ずっと悲しみに暮れて山さんを見つめて過ごした訳ではなく、寝ている山さんの横でちょいちょい声をかけながら、私も夫もそれぞれ好きなことをして。
見守ることが第一。
あとは、自分たちがしっかり美味しいものを食べつつ平常心で過ごすことを最優先に。
穏やかな気分で、神さまがくれた大切な看取りの時間を過ごしました。
そして、夫がそろそろ本格的に仕事始めだなぁ‥という1月5日、まるで自ら決めたように潔く立派な姿で旅立っていきました。
最期に身体の中のものすべて出し切ってから、ふっと一息吐いて。
まさに「息を引き取る」という言葉を体現するような静かな最期でした。
年末に買い込んでいた食材がさすがになくなってきて、スーパーに行こうと私がコートを羽織ったらクウクウ泣き出したので、「じゃあ、やめるわ」と冷凍庫の中のものでどうにかしようかと考えていた直後のことでした。
買い物に行っていたら、そばにいれなかったね。
教えてくれてありがとね。
獣医師シワ男さんの投稿に「枯れるように旅立つ」という言葉がよく出てきます。
どうにか長く生きていてほしくて何かを与えたくなるけれど、それを受け付けなくなる時がやってきます。
週に2回程度だった自宅での皮下点滴が最期には毎日になっていたけれど、どんどん弱っていくなかでそのやめ時がわからなくて。
でも亡くなる前日に、点滴をした後に山さんのそばにいたら、身体の中でギュルギュル…っていうようないままで聞いたとこのない音がして、それを聞いて「あぁ、点滴の水分を身体がもう受け付けられなくなっているのかな」と。あくまで、私の想像なのだけど。
それと同時に、シリンジで栄養剤や水をあげようとしても飲まなくなって。
何かを無理やり入れようとするのは、もう違うんだろうなと。
てんかんの発作は起こしてほしくなかったので、てんかんの薬だけは、嫌がっても無理やり少量の水と共に口の中に押し込んじゃった。
ごめんね。
でも、発作を繰り返して苦しそうな様子を見てきたので、腎臓や肝臓の機能が弱まってきての老衰とも言えるような形で見送れたのは良かったと、安堵しています。
私の自己満足だったのかもしれないけれど。
皮下点滴をする前に体重を測るように言われていたので、毎日体重を測って記録していましたが、9.5㎏あった体重は、6㎏弱になっていました。
その前は何種類ものお薬をあげていたし、どうにか栄養をとってもらいたくていろいろなものを試したけれど、最期には「枯れるように旅立つ」ということの意味がわかったような気がするし、少しはそれに近い形がとれたのかなぁ‥と思っています。
最後に、思い出の1枚。
昨年の12月12日に撮った、お散歩姿。
その後も何日間かは行ってたので最後のお散歩ではないけれど、写真に残っているのは、これが最後です。
寝たきりだったのは2週間弱で、その数日前まで、外に出るとスイッチが入ったようにシャキッとして目に力が戻ったのは本当にすごいなぁと。
お散歩が大好きだったから。
暑さが苦手な山さんにとっては、冬は暖かい洋服を着こみさえすれば、たくさん歩けるいい季節でした。
また、キーンと身が引き締まる冬空の下を一緒に歩きたいよ‥。
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